七海が帰ってきたことで、ようやく場は落ち着きを取り戻す。

問題の五条はといえば、相変わらずの0距離でスズの隣に陣取っていた。

と、そこへ皆が待ち望んだ元気な声が聞こえてきた。


「あっ、先生ー!!スズー!!はやく皆のとこ行こうぜ!あ、ナナミンもいる。」

「ふふっ。目キラキラしてる!」

「だって皆と感動の再会だし、2年の先輩と京都校の人達にも会えるんだろ?ワクワクが止まんねぇよ!」

「悠仁…もしかしてここまで引っぱって普通に登場するつもり?」

「え、違うの!?」

「死んでた仲間が二月後実は生きてましたなんて、術師やっててもそうないよ。…やるでしょ、サプライズ!!」

「サプライズ…」

「ま、僕に任せてよ。」

「七海先生、私すごく嫌な予感がします…」

「私もです。スズのフォローにかかってますから頼みますよ。」

「はい…」


テンションが爆上がりしている五条と虎杖を見ながら、残りの2人は揃って不安そうな顔になる。

この後に起こるかもしれない出来事を想像して肩を落とすスズを見て、七海は彼女の頭にポンと手を置いた。


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サプライズのため虎杖を箱の中に入れると、五条はそれを楽しそうに台車の上に乗せる。

普通に登場しても相当な驚きと戸惑いを与えるのに、こんな悪ノリの塊みたいなやり方をしたらどうなるか…

そんな不安を抱えたまま、スズは静かに師匠を見守っていた。


「悟先生…本当にやるの?野薔薇とか絶対嫌がるよ?」

「平気平気〜!はい、スズはこのお土産持ってて?」

「え、あ、はい。持ってどうすれば…って、うわっ!」

「ちゃんとどっかに掴まっててね。」


変な人形が入った袋をスズに持たせると、五条は彼女をひょいと持ち上げ虎杖が入っている箱の上に乗せた。

スズが箱のヘリを掴んだのを確認した五条はもの凄い勢いで走り出す。

そして…


「おまたー!!」

「五条悟!!」「(五条悟!!)」

「ギャッ!!いったー…ちょっと先生!もう少しゆっくり止まってよ!」

「アハハっ!ごめんごめん!」

「これから交流会なのにケガしたら「スズー!!!」


急ブレーキをかけたせいで箱の上から転がり落ちたスズが五条に文句を言っていると、それを遮るように飛び込んでくる影。

それは他でもない、長らく会えていなかった同期の釘崎だった。

復活したことを2年生達に聞いてからというもの、この日を心待ちにしていた彼女。

ようやく実物に会えたことで、その嬉しさが爆発したのだった。

釘崎との再会を喜びながら周りを見渡すと、2年生チームにも笑顔が溢れていた。

残るあと1人はといえば…


「おかえり、スズ。」

「恵!ただいま。」


釘崎を抱きしめたまま伏黒の顔を見上げれば、彼は少し微笑みながらスズの頭を優しく撫でた。

言葉は少ないが、その表情や仕草から彼女の復活を心から喜んでいるのが伝わってくる。

そんな教え子達の様子を満足気に見ていた五条は、スズの手から落っこちたお土産袋を拾い上げながらいつもの調子で話し始めた。


「やぁやぁ皆さんおそろいで。わたくし出張で海外に行ってましてね。」

「急に語り始めたぞ。」

「はい、お土産。京都の皆には、とある部族のお守りを。歌姫のはないよ。」

「いらねぇよ!!」

「そして東京都の皆にはコチラ!!」

「ハイテンションな大人って不気味ね。スズ、よくあの人とずっと一緒にいられるわね。」

「あー見えてしっかりしてるところもあるんだよ?…あ、野薔薇。この後少し覚悟しててね…」

「?」

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」

「はい!!おっぱっぴー!!」


五条の声を合図に箱から飛び出した虎杖だったが、周りの反応は彼が思っていたのとはだいぶ違っていた。

釘崎・伏黒の同期コンビはもちろんのこと、パンダ達2年生も戸惑い過ぎて顔が固まっている。

では京都校の面々はどうかといえば…

こちらは五条が渡したお土産に夢中で、そもそも虎杖の存在を気にしてすらいなかった。

事前の予想通り、何ともいたたまれない状態になっている虎杖を気にかけるスズ。

そんな2人の姿を、一番驚きの目で見ていたのは京都校の学長であった。


「宿儺の器!?それに陰陽師もどきまで…!どういうことだ…」

「楽巌寺学長ー!いやー良かった良かった。びっくりして死んじゃったらどうしようかと心配しましたよ。」

「糞餓鬼が。」


いつも何かと言えば絡んでくる相手に一泡吹かせられたことに、五条はいたく満足気だ。

一方、憎々しげに五条を睨む楽巌寺は、目を血走らせながら言葉を絞り出すのだった…


さて、もう一度視点を若者達の方へ戻そう。

少し目に涙を浮かべた釘崎は、虎杖が突っ立ったまま入っている箱を蹴りながら静かに文句の言葉を並べる。

スズは伏黒の隣で、その様子を苦笑いで眺めていた。


「おい。」

「あ、はい。」

「何か言うことあんだろ。」

「え。」

「…」

「黙っててすんませんでした…生きてること…」

「…だから言ったのに。」

「スズは知ってたのか?」

「うん。ずっと一緒に修行してたからね。」

「! …そっか。」

「無理やりでも悟先生止めれば良かった…女子はこういうノリ嫌いなんだから。」


虎杖生存のサプライズを悪ノリで伝えられ、涙目でムスッとしてる釘崎。

スズの復活を喜びつつも、虎杖との修行話を聞いて複雑な心境の伏黒。

それぞれに思うところはあるが、ようやく1年生チームが全員顔を揃えたのだった。



to be continued...



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