京都姉妹校交流会 1日目 団体戦 "チキチキ呪霊討伐猛レース"
指定された区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利となる。
区画内には三級以下の呪霊も複数放たれており、日没までに決着がつかなかった場合、討伐数の多いチームに軍配が上がる。
それ以外のルール一切なし!
「勿論妨害行為もアリなわけだが、あくまで君達は共に呪いに立ち向かう仲間だ。
交流会は競い合いの中で仲間を知り、己を知るためのもの。相手を殺したり、再起不能の怪我を負わせることのないように。」
晴れ渡る空の下、何かと厄介事を引き起こす五条にコブラツイストをかけながら、東京校学長の夜蛾は生徒達に向けて言葉を発する。
いよいよスズ達1年生にとって、初めての交流会が始まろうとしていた。
第33話 京都姉妹校交流会 ー団体戦⓪ー
ようやく気が済んだのか五条を解放した夜蛾は、細かな部分に関するルール説明を続けた。
と、学長の話を熱心に聞いていたスズの元に、夜蛾から逃げてきた五条がやってくる。
"スズ〜痛かったよ〜"と泣きマネをしながら抱きついてきた彼の姿は、学校関係者からすれば見慣れたものであり、誰しもが無視をしていた。
ただ1人…例の告白以来、五条を意識しまくりのスズだけは今までと違う感情で彼を迎えていた。
「先生…!み、皆が見てますから…!」
「見てねーよ、誰も。俺がオマエにくっついてるのなんて見慣れてんだから。」
「でも…!」
「ほら、学長の話ちゃんと聞かないと。」
ニヤニヤと笑いながら小声でそう言った五条は、スズの背後に回るとリラックスしたように体を預けた。
彼女の立ち位置が場の後方だったこともあり、かなり大胆にスズにくっついている五条。
こういう状態になると、どうしたって想い人をからかいたくなってしまうのが彼の性分のようで…
「…今、ドキドキしてんだろ?」
「な、何ですか急に。」
「体すげー熱い。」
「い、いつも通り…です!」
「え〜?部屋で抱きついた時はこんな感じじゃなかったけど?」
「…」
恥ずかしそうに顔を伏せたスズは、最初に抱きつかれた時からずっとドキドキ状態なのだ。
五条の言う通り、体は当然熱くなっているだろう。
それを指摘されたことで更にドキドキが増すスズの顔を後ろから覗き込みながら、五条は嬉しそうに声をかける。
「なぁ…そんな顔してると周りにバレるぞ?」
「え、何がですか?」
「ん?…スズが俺のこと意識してるって。」
「なっ…!」
「まぁ俺としては、その方が都合いいけどね。」
「?」
「変な奴が寄ってこなくて済む。」
「そ、そういうもの…ですか?」
「うん。だってスズのこと狙ってる奴はさ、俺を相手にしなきゃいけないんだよ?俺…オマエ絡みのことで誰にも負けるつもりねーから。」
「! …そもそも、元からそんなに寄ってこないですよ…!」
「(だといいんだけど…そうはいかねぇよな。)」
周りの男性陣にチラッと目をやりながら、五条はスズを抱きしめる力を強くした。
急に力強くなったハグに反応しスズが振り向こうとしたタイミングで、夜蛾が締めの言葉を発する。
「…以上、開始時刻の正午まで解散。」
「スズ、ミーティング行くぞ…って、悟!いい加減スズから離れろ!」
「はいはい。もう〜真希は短気なんだから〜」
「ふふっ、先生怒られてる。」
「何、笑ってんだよ。解放してやんねーぞ?」
「すみません!」
「ふっ。楽しんどいで。」
「はい!行ってきます!」
五条に頭を撫でられると、スズはくすぐったそうに笑ってから元気よく言葉を返す。
この後のイベントを心から楽しみにしているのが分かるキラキラしたその表情は、五条を更に夢中にさせるものだった。
結果、一度送り出そうとしたにも関わらず、彼は思わずスズの腕を掴んでいた。
「おっと…!先生?」
「…あんまそういう顔すんなよ。離れたくなくなんだろ。」
「!」
「このまま交流会サボってさ、俺の部屋行こ?」
「えっ!?あ、あの、それは、その…!」
「ふっ…冗談だよ。スズが楽しみにしてるの知ってて行かせないわけねーじゃん。ケガだけ気をつけろよ。」
「は、はい!」
"スズ〜早くしろ〜!"
真希からの追加の呼びかけに応えるように、スズはそちらに走って行った。
だから、彼女の背中を切なそうに見つめる五条の姿は誰も知らない。
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