早朝…
広場内にあるバスケコートから、激しくボールをつく音が聞こえてくる。
音の発生源は、誠凛高校バスケ部の大型新人・火神大我である。
登校前とは思えないほどの汗をかきながら、火神は昨日の帰り道での会話を思い出していた。
一緒に帰っていたのは、超影が薄い少年・黒子テツヤと、不思議ボイスのマネ・木下スズ。
2人との会話が、彼の頭をグルグルと回っていた。
"スズの声聞いた瞬間…何か熱くなって、でも身体は軽くて、すげーいい状態で試合に入れたんだよ。
だからそのお礼…っつーか、これからもよろしく…ってことで。"
"ふふっ。ありがとっ!こちらこそよろしくね。"
"ただでさえ天才の5人が、今年それぞれ違う強豪校に進学しました。まず間違いなく、その中のどこかが頂点に立ちます。"
"決めた!そいつら全員ぶっ倒して、日本一になってやる!!"
"1人ではムリです。ボクもキミを日本一にする。"
"じゃあ私も決めた!2人が日本一になれるように、私もマネージャーとして全力で支えるよ!"
「(ハハッ、ヤベー…ウズウズしてジッとしてらんねー。公式戦じゃなくてもなんでもいいから、早く戦りてー!!)」
そんなことを思いながら火神は最後に1本シュートを決め、学校へと向かうのだった…
第2Q「月曜朝8:40の屋上ね!」
「おっはよー!」
「あ、スズおはよう!」
「ん?何か今日、いつにも増して機嫌良くない?」
「分かる〜?」
「分かる分かる!」
「だって気持ち悪いぐらいニヤけてるもん。」
「ふふ〜ちょっといいことあってさ〜!…てか、気持ち悪いって何?」
私が教室に入ると、可愛らしい友人2人が笑顔で迎えてくれた。
そんな彼女たちに"気持ち悪い"と言われるほど私がニヤけていたのは…
昨日の帰り道、テツ&大我と大きな目標を誓い合ったから!
やっぱり目指すべきものがあると、モチベーションが違う。
早く部活行きたくてしょうがないんだけど…!
それから登校してきたテツや大我と少し会話をして、眠気と戦いながら午前の授業を終えた私達は、お楽しみの昼食タイムへ。
いつも通り友人2人とワイワイ話しながらお昼を食べ終え、授業が始まるまで窓の方を見ながら私はボーっとしていた。
"今日もいい天気だな〜"なんて思いながら微睡んでいると、ガラッと教室のドアが開く音が聞こえ、続いて私の名前を呼ぶ声がした。
「スズ。」
「おー大我おかえり〜!…ん?テツも何か紙持ってたけど、それ何?」
「本入部届。オマエのも貰ってきてやったぞ。」
「本入部届?…え、うちらまだ仮入部だったの!?」
「らしい。オレも朝、キャプテンに聞いて知った。」
で、今カントクのところに行って、自分と私の分の入部届を貰ってきてくれたと。
いや〜危なかった。まさかまだ自分が正式な部員じゃなかったなんて…
でも入学式の日にもう部活のブース入ってたんだけどな、私。
「助かったわ〜ありがとね、大我。」
「おぅ。あ、でも受け取んのは月曜の朝8:40の屋上でだってよ。」
「何それ。すごい細かく決まってんだね…うん、とりあえず了解!」
サラサラと記入した本入部届を、私は失くさないようバッグの中にしまう。
そしてそれを待っていたかのように、斜め前に座る大我が話しかけてきた。
「なぁ、スズ。」
「ん?」
「オマエさ、黒子が何で強豪校に行かなかったのかって聞いたことあるか?」
「いや、ないけど…そういえばそうだよね。他のキセキの世代は、強いとこ行ったって言ってたし。」
「そうなんだよ。さっき聞こうとしたら、アイツ急にいなくなりやがってよ…」
「あははっ!テツらしい。じゃあ今度一緒に聞きに行こっ!」
「あぁ。スズがいれば、黒子も逃げねーだろうし。」
「逃げるって…」
こうして、この日は何事もなく過ぎていったんだ。
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