in マジバ

部活後の恒例になりつつある、マジバでの夕飯会。

帰るとき、気づいたらテツがいなかったから大我と2人で席に座る。

彼のトレイにのる大量のバーガーにも、ようやく慣れてきた。


「ちょっと大声出したぐらいで、あんな怒るかよ。なっ?」

「本当。心が狭いってゆーか、何てゆーか…別にいいじゃんね〜」

「未遂だったのにボクも怒られました…」

「ぶっ!また!?(…店変えよーかなー。カブりすぎだろ…)」

「おわっ、テツ!ビックリした…(これからは、行く時は3人で一緒に行くことにしよ…心臓に悪い!)」

「…あと困ったことになりました。」

「ホントだよ…ああ!?何!?」

「困ったことって…?」

「いきなり約束を果たせそうにないです。」

「は?」「え?」

「2人はやったからいいんですが、なんかあれから屋上、厳戒態勢しかれたらしくて。入部できなかったらどうしましょう。」

「それはねーだろ。」「大丈夫だよ!」


何とも重い空気をまといながら話すテツに、私と大我はついつい励ましの言葉を送ってしまった。

あんな素敵な能力を持ってるテツを、宣言してないからって理由だけで入れないわけない!

それよりも私達には、もっと気になることがある。この前も話題になった、テツの進学先のことだ。

大我に視線を送ると、彼もまた話そうとしていたらしく、軽く頷き疑問を口にした。


「…それより1つ、気になってたんだけど。そもそもオマエも幻の6人目シックスマンなんて言われるぐらいだろ。

 なんで他の5人みてーに、名の知れた強豪校に行かねーんだ。オマエがバスケやるのには…なんか理由ワケがあんじゃねーの?」


大我の問いかけに少し沈黙したテツは、それからゆっくりと話し始めた。

テツの通っていた帝光中には、"勝つことが全て"という唯一無二の基本理念があったらしい。

そのために必要なものはチームワークではなく、キセキの世代が行使する圧倒的な個人技だけ。

それが最強だった。でも、そこに"チーム"はなかったのだと…


「5人は肯定してたけど、ボクには…何か大切なものが欠落してる気がしたんです。」

「…で、なんだよ?そうじゃない…オマエのバスケで"キセキの世代"倒しでもすんのか?」

「そう思ってたんですけど…」

「マジかよ!?」「おおっ!」

「それよりこの学校でボクは…キミとスズと先輩の言葉にシビれた。

 今ボクがバスケをやる1番の理由は…スズの支えを受けて、キミとこのチームを日本一にしたいからです。」

「テツ…」

「相変わらずよくそんな恥ずかしいセリフばっか言えんな!残りやる!」

「コラコラ!常人にはこの量は消費できないから持ち帰りなさい。」

「うっ…てか、どっちにしろ"キセキの世代"は全員ぶっ倒すしな。"したい"じゃねーよ、日本一にすんだよ!」

「ふふっ。本当支えがいあるわ〜テツも大我も!」


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翌朝、教室に入るとクラスの子全員が窓側に寄っていた。

何事かと友人に尋ねれば、校庭に突然文字が現れたとのこと…

バッグを置き、急いで窓から下を見れば、そこには何とも素晴らしいメッセージがあった。


「なんだ騒がしいな。」

「あ、大我ー!ちょっとこっち来て!」

「ん?何かあったのか?」

「いいから早く早く!」


教室に入ってこようとしていた大我を発見した私は、急いで彼を窓側に呼び寄せる。

そして窓の外を指させば、彼の顔にも笑みが浮かんだ。


私達の視線の先には、"日本一にします"という白い文字。

他の人は誰が書いたか分かってないみたいだけど、バスケ部員には分かる。

名前がなかったため、後に誠凛高校七不思議の1つとして語り継がれるこの校庭の文字は、紛れもなく黒子テツヤの熱くて強い意志だったんだ…!



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