さて。スズの機嫌が直ったところで、問題のキセキイエローの方へと視線を移してみる。
黄瀬の突然の訪問に誰もが驚きを隠せず、まずは当然の問いかけをする。
「…なっ、なんでここに!?」
「いやー次の相手誠凛って聞いて、黒子っちが入ったの思い出したんで、挨拶に来たんスよ。中学の時、1番仲良かったしね!」
「フツーでしたけど。」
「ヒドッ!!」
「すげーガッツリ特集されてる。」
部室から持ってきた月バスを開きながら、部員の1人が黄瀬のページを読み上げる。
スズも話に耳を傾けながら、そっと本の中身を覗いていた。
記事によると…
"中学2年からバスケを始めるも、恵まれた体格とセンスで瞬く間に強豪・帝光でレギュラー入り。"
"他の4人と比べると経験の浅さはあるが、急成長を続けるオールラウンダー。"
ということらしい。
この文章の中で注目すべきは1つ…バスケを始めた時期だ。
「中2から!?」
「(キーっ!!また1つ気に食わない部分が増えた…!バスケはそんな単純なもんじゃないんだから!)」
「いやあの…大ゲサなんスよその記事、ホント。
"キセキの世代"なんて呼ばれるのは嬉しいけど、つまりその中でオレは1番下っぱってだけスわ〜
だから黒子っちとオレは、よくイビられたよ。な〜」
「ボクは別になかったです。てゆーか、ちょいちょいテキトーなコト言わないでください。」
「あれ!?オレだけ!?」
「(ぷぷっ…テツ、いいぞ!)」
黄瀬が黒子に軽くあしらわれてるのを見てニヤニヤしていたスズだったが、不意に近くに感じた人の気配にギョッとし横を向く。
と、そこには野獣のような目で黄瀬を見つめる火神の姿があった。
しかも手には何故かボールを抱えている。
そしてスズがボールについて尋ねるより先に、野獣・火神は黄瀬に向かってそれを投げつけた。
バチィ!!
「った〜ちょ…何!?」
「せっかくの再会中ワリーな。けどせっかく来てアイサツだけもねーだろ!
うちのマネージャーもアンタのこと気にくわねーみたいだし?ちょっと相手してくれよ、イケメン君!」
「火神!?」「火神君!!」
「え〜そんな急に言われても……あーでもキミさっき…ん〜…よしやろっか!いいもん見せてくれたお礼。」
そう言いながらブレザーを脱ぎ捨て、ネクタイを取る黄瀬。
着々と準備を進める彼を横目に見ながら、スズは火神に詰め寄っていた。
「ちょっと、大我君?今言った"うちのマネージャーが…"のところって必要だったかな?」
「んだよスズ、気にすんなって!オレがアイツの鼻っ柱、折ってきてやっから。」
「いやいやいや!そういう問題ではなく…!」
「てか、やる前に1つ聞きたいんスけど…オレ、誠凛のマネージャーさんに嫌われてるんスか!?」
「あ、いや…えーと「そうだよ!そう言ってんだろ?」
「うわ〜ショックなんスけど…オレ、初対面で女の子に嫌われたことないんスよ〜?」
この発言にまたもキセキイエローへの印象が悪くなったスズは、思わず隣にいた火神の背中にグーパンをする。
"いてっ!"と声を上げる火神だったが、スズの表情を見て気持ちを読み取ったのか、彼女の頭をポンと1つ叩いてから、楽しそうにコートの中へと入っていった。
それを受け、黄瀬もコート内へと向かう。
「…っもう!」
「マズイかもしれません。」
「え?」「テツ?」
この後スズ達は、驚くべき光景を目の当たりにすることとなる…
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