野獣とモデルの勝負は、黄瀬ボールでスタート。
腰を落とし、睨み合った状態から、黄瀬が一気に抜きにかかる。
と、次の瞬間…!
スズやリコ達は、とても見覚えのあるプレイを目にする。
それはさっき火神が先輩の伊月相手にやった、フルスピードから切り返してそのままダンクという技そのものだった。
目の前の光景に驚きすぎて声が出ないスズ達に対し、黒子は静かに言う…
「彼は見たプレイを、一瞬で自分のものにする。」
「…なっ!?(しかもこれって…模倣とかそんなレベルじゃない!完全に自分のものにしてるなんて!)」
「一瞬って…さっき見て、1回も練習してないのにできちゃうわけ…?」
自分がやったのと同じ技で抜かれ動揺を隠せない火神だったが、それでも何とか黄瀬に食らいつく。
そして彼に追いつきボールを奪おうとしたが、力及ばずそのままダンクを許してしまった。
その力強いダンクに負けコートに倒れる火神を、ゴールにぶら下がりながら黄瀬は冷たい目で見下ろしていた。
「これが"キセキの世代"…黒子、オマエの友達スゴすぎねぇ!?」
「…あんな人知りません。」
「へ?」
「正直さっきまで、ボクも甘いことを考えてました。でも…数か月会ってないだけなのに…彼は…
(予想を遥かに超える速さで、"キセキの世代"の才能は進化してる!)」
あまりに衝撃的な光景を目撃し、誠凛メンバーはみな異様なほど静かだった。
あのお元気娘のスズでさえ、口をポカンと開け、大人しく2人を見つめている。
そんな観衆の目に気づいているのかいないのか、黄瀬はのんびりとした口調で話し始める…
「ん〜…これは…ちょっとな〜」
「?」
「こんな拍子抜けじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないスわ。
やっぱ黒子っちください。海常おいでよ。また一緒にバスケやろう。」
「「「なっっ!?」」」
「(おいおいおい…何言っちゃってんの、このキセキイエローは!!)」
「マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよ!こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって!ね、どうスか!」
「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。丁重にお断りさせて頂きます。」
「文脈おかしくねぇ!?そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん!なんでもっと強いトコ行かないの?」
「あの時から考えが変わったんです。何より火神君と約束しました。スズの支えを受けて、キミ達を…"キセキの世代"を倒すと。」
「テツ…!」
「…やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて。」
少し顔を引き攣らせながらそう言う黄瀬を見つめていたスズは、ふと近くで人の動く気配を感じた。
視線をやれば、黄瀬に倒され座ったままになっていた火神が動き出そうとしているところで…
静かにスズが手を差し出すと、その手を力強く握って立ち上がる虎少年。
その顔にはとても楽しそうな、それでいて挑戦的な笑みが浮かんでいた。
「…ハハッ!(これが"キセキの世代"…スゲーわマジ…)」
「!」
「(ニヤけちまう…しかももっと強えーのがまだ4人もいんのかよ!?)
ったくなんだよ…オレのセリフとんな、黒子。」
「冗談苦手なのは変わってません。本気です。」
そう言って黄瀬を睨みつける2人を見守るスズの顔はとても晴れやかで…!
早くキセキイエロー退治をしたいと強く思った、お元気娘なのであった。
to be continued...
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