さて、一方の誠凛ベンチはというと…?

ドリンクやタオル、スコアブックの準備をするスズが慌ただしく動き回っていた。

そして準備を終えると、スズはリコの横にスッと腰を下ろす。

彼女はその時初めて、リコが何やら焦ったような表情をしていることに気づいたのだった。

しかもベンチのメンバーが声をかけても、一向に反応を示さないのだ。


「どしたんスか、カントク…?」

「…カントク?」

「(…あららら〜!?ちょいと…ヤバくね!?

 服の上からじゃ全部は視えないけど…てか、軒並み数値高っけぇ〜…フィジカルは完全負けてるかも…)」

「…もしかして相手の数値、相当ヤバいんですか?」

「えぇ。さすが全国クラスってカンジよ。

(コッチも黒子君と火神君がいるとはいえ…あの2人の力がどこまで通用するか…!?)」


リコやスズが不安そうな表情で見守る中、いよいよ試合開始!

ジャンプボールは誠凛が勝ったものの、ボールを取ったのは海常高校4番・キャプテンの笠松だった。

"まず1本!キッチリいくぞ!"

そう言って1回ドリブルをした次の瞬間、ボールは笠松の手から弾き飛ばされていた。

やったのはもちろん、影の薄い例の彼である。


「いいぞー!テツー!」

「なっ…(どっから湧きやがったコイツ!?)にぃ〜!?」


突如目の前に現れた黒子にボールを奪われ、驚きと戸惑いを隠せない笠松だったが、追いかけてみればあっという間にその距離は縮まった。

しかし黒子のドリブルが遅いことに安心し、マークについた瞬間!

彼は横を走っていた火神へボールをパスした。


「やっちゃえ、大我ー!!」


スズの声援を背に受けて、火神はぶわっと跳び上がる。

そしてそのまま、バキャという音と共にダンクを決めたのだった。


それはそれは力強いダンクを決めた火神だったが、コートへ着地した彼の手の中には、ゴールのリングという何とも珍しいものが握られていた。

スズやリコ、そして海常の武内でさえも、この状況には唖然とするばかりだ。


「おおおぇぇ〜!?ゴールぶっこわしやがったぁ!?」

「あっぶね。ボルト1本サビてるよ…」

「それでもフツーねぇよ!!」


次々に驚きや焦りの声が聞こえてくる中、当の本人達はいたって普通のテンションで…


「どーする黒子、コレ。」

「どーするって…まずは謝って、それから……

 すみません。ゴール壊れてしまったんで、全面側のコート使わせてもらえませんか。」


淡々と話す黒子と、得意気な顔で自分が壊したリングを指で回す火神。

その姿とセリフは、まるで宣戦布告のようで…!

黄瀬もそれを受け、不敵な笑顔を向けるのであった。



to be continued...



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