黄瀬と別れ誠凛ベンチに戻ると、リコが選手へ今後の作戦を話しているところだった。
スズも黒子に包帯を巻きながら耳を傾ける。
「…どうする。」
「黒子君はもう出せないわ。残りのメンバーでやれることやるしかないでしょ!」
「「「(やれることって…黒子いなきゃ…キツくね?)」」」
「OFは2年生主体でいこう!まだ第2Qだけど、離されるわけにはいかないわ。早いけど"勝負所"よ、日向君!
黄瀬君に返されるから、火神君はOF禁止!DFに専念して。全神経注いで黄瀬君の得点を少しでも抑えて!」
「そんな…!それで大丈夫なんで…すか!?」
「大丈夫だって、ちっとは信じろ!」
「でも…!」
「大丈夫だっつってんだろ、ダアホ!たまにはちゃんと先輩の言うこと聞けや、殺すぞ!」
「「…!?」」
「行くぞ!」
いつも比較的穏やかな日向の口から発せられた、何とも恐ろしい言葉達。
それに驚いたスズと火神は顔を見合わせ、冷や汗を流しながら、コートへ入っていくキャプテンの方を見つめた。
「ったく今時の1年はどいつもこいつも…今年はマネまで生意気なのが入ったからな。もっと敬え!センパイを!そしてひれふせ!」
「スイッチ入って、本音漏れてるよキャプテン!」
「…!?」「私、あとで殺されるのかな…」
「あー気にすんな。クラッチタイムはあーなんの。」
「「?」」
「とりあえず本音出てる間はシュートそうそう落とさないから。OFは任せて、オマエはDF死に物狂いでいけ。
スズもそんな心配そうな顔しなくても大丈夫だよ。あれでアイツ、スズのこと大好きだから。」
スズの頭をポンポンと叩いた伊月は、そう言って笑顔を向けてからコートへと入っていった。
伊月の言う"日向の大好き"がどういう意味なのか気になりはしたが、とりあえず殺される心配はなさそうだということに、スズも安堵のため息を漏らすのだった。
さぁ!そんなこんなで、ついに試合再開。
黒子の代わりに入った小金井がスクリーンをかけ、日向をフリーにする。
パスを貰った彼がシュートを決めると、リコが不意に言葉を発した…
「あいにくウチは1人残らず…諦め悪いのよ。
優しい時は並の人!スイッチ入るとすごい!けど怖い!!二重人格クラッチシューター、日向順平!!」
「ざまあ〜」
「ひぃーっ!もう逆らいません、日向様ー!」
「冷静沈着慌てません!クールな司令塔!かと思いきやまさかのダジャレ好き!伊月俊!!」
「サロンパスで…ナイスパス。やべえ、きたコレ。」
「いや、きてないです!伊月先輩!」
「仕事キッチリ、縁の下の力持ち!でも声誰も聞いたことない!水戸部凛之助!!」
「…」
「喋らなくても素敵ですよ、水戸部先輩!」
「なんでもできるけど、なんにもできない!Mr.器用貧乏!小金井慎二!!」
「ひでぇ…」
「ど、どんまいです…でも口元可愛いですよ、コガ先輩!」
そんな個性が豊か過ぎる先輩達とのプレイに火神は若干戸惑い気味だが、それに反して試合はすこぶるいい感じである。
クラッチシューター・日向の力を上手く生かしたチームプレイは、十分に海常を苦しめていた。
が、しかし…
「(それでもやっぱシンドイっつの…!黒子抜きでパワーダウンはしてるし…
オレの集中力も切れてきちゃったし…ってか、逆転とかできる気しねー!)」
「第3Q、残り3分ー!踏ん張れ、誠凛ーっ!!」
「カントク…何か手はないんですか?」
「今は何とかスズの声でカバーしてるけど…前半のハイペースで、策とか仕掛けるような体力残ってないのよ。」
"せめて黒子君がいてくれたら…"
リコがそう呟いた瞬間、黒子の近くで応援していたスズは、彼の手が僅かに動くのを見た。
そして黒子は不意にムクっと上体を起こす。
「…わかりました。」
「え?」「ちょ、テツ…!」
「おはようございます。…じゃ、行ってきます。」
to be continued...
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