こうしてスズと2年生達の顔合わせが終わった頃、パラパラと集まってきていた1年が全員集合した。

それを見計らって、小金井が声をかける。

…が、辺りは未だ騒がしいままだ。


「よーし、全員揃ったなー。1年はそっちな。」

「おい、さっき向こうで先輩達と挨拶してたマネ見た?」

「見た見た!顔は普通だけど、すげー元気だったよな。」

「なっ!やっぱマネはあんぐらい明るくて元気な方がいいよなー!」

「あとさ、あのもう1人の先輩マネージャー可愛くねー?」

「2年だろ?…けど確かに!もうちょい色気があれば…」

「だアホー違うよ!」

「「あいて!」」


待ち時間を利用してマネ評価を楽しんでいた1年達に日向の鉄拳がお見舞いされたのを見届け、リコが自己紹介を始めた。

その声は凛とした、よく通る素敵なものだった。


「男子バスケ部 カントク、相田リコです。よろしく!!」

「「「ええ〜!?カントク!?」」」

「(マジかよ!?)」

「(てかアリなの!?)」


スズが昨日そうだったように、他の1年達もリコの役職に驚きを隠せない。

1つ上の、しかも女の先輩がカントクなんて、すぐには信じがたいだろう。

しかしそんなワタワタしている後輩達にお構いなく、リコはまたも衝撃的なことを言い放つ。


「じゃあまずは…シャツを脱げ!!」

「「「え"え"え"〜!?なんで!?」」」


突然の、そしてあまりにぶっ飛んだカントク命令に、1年生達はタジタジ。

しかし言うことを聞かないわけにもいかず、彼らは1人また1人とシャツを脱いでいく。

そして全員が上半身裸の状態になると、リコはゆっくりと彼らの前を歩きながら分析を始めた。


「キミ、ちょっと瞬発力弱いね。反復横とび50回/20secぐらいでしょ?バスケやるならもうチョイ欲しいな。キミは体カタイ。フロ上がりに柔軟して!キミは…」

「マジ…!?合ってる…」

「どゆこと!?」

「てか体見ただけで…?」


チラッと選手の体を見ただけで、次々にその人物の身体的特徴を挙げていく。

指摘された本人達はもちろんのこと、興味本位でリコの横を一緒に歩いていたスズも驚きを隠せない。

そんな唖然としている彼女達に、日向が答えを教える。


「彼女の父親はスポーツトレーナーなんだよ。」

「スポーツトレーナー…」

「そっ。データをとってトレーニングメニューを作る。毎日その仕事場で肉体とデータを見続けてる内についた特技。

 体格を見れば、彼女の眼には身体能力が全て数値で見える。」

「何と…さすがリコ先輩…!」


日向の説明を聞いたスズは、キラキラと尊敬の眼差しでリコを見つめる。

と、その尊敬されているカントクが、1人の人物の前で動きを止めていた。

スズは再びリコの元へ駆け寄り、隣に立つ。

2人の前にいるのは…火神大我だ。


「…なんだよ。つか、寒みーんだけど。」

「(なっ、何コレ!?すべての数値がズバ抜けてる…こんなの高一男子の数値じゃない!!)」

「てか、何で木下まで一緒んなって見てんだよ。」

「いや、私にも何か視えないかな〜と思って。」

「は?」

「(しかものびしろが視えないなんて…うっわ生で初めて見る…天賦の才能!!)」

「カントク!いつまでボーッとしてんだよ!」

「はっ。ごめんっっ!」

「あと、スズ!どんなに頑張ってもお前には視えないから、早く帰って来ーい!」

「うっ…はーい。」

「で、えっと…」

「全員視たっしょ。火神でラスト。」

「あっそう?スズー、これで本当に全員?」


リコにそう尋ねられ、スズは持っていた名簿を確認する。

端から順に名簿と照らし合わせていくと、1人確認していない人物を発見した。

それはスズと同じクラスの…


「あ、黒子君がまだです。」

「あ!そうだ、帝光中の…!」

「え!?帝光ってあの帝光!?黒子!黒子いるー!?」

「(あれー?あんな強豪にいたんなら、視りゃすぐわかると思ったんだけど…)

 今日は休みみたいね。いーよ、じゃあ練習始めよう!スズ、名簿に書いといて!」

「はーい!」


名簿の一番下にある"黒子テツヤ"という名前の隣に"欠席"と書こうとしたスズだったが、その行為は不意に耳元で聞こえた男子生徒の声で遮られる。

驚きながら声の方を向けば、そこには穏やかな顔でこちらを見つめる1人の少年の姿があった。


「木下さん、ちょっと待ってください。」

「え…?」

「あの…スミマセン。黒子はボクです。」


そして唖然とするスズの横を通って、男子生徒は素早くリコの前に行き、そう告げたのだった。



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