突如自分の前に現れた1人の男子生徒・黒子テツヤに、リコはとびきりの叫び声を上げた。

それにつられるようにして他の選手も次々に驚きの声を上げる。

その様子を見るにつけ、誰1人として黒子という少年に気づいたものはいなかったようだ。


「黒子君!教室にいなかったから、先に来てるとは思ってたけど…ビックリしたよ。」

「スミマセン、木下さん。なかなか話しかけるキッカケがなくて。」

「(何かスズは普通に喋ってるけど…私、目の前にいて気づかなかった…!?てゆーか…カゲ薄っすっっ!!)」

「…え?じゃあつまりコイツが!?"キセキの世代"の!?」

「まさかレギュラーじゃ…!」

「それはねーだろ。ねえ、黒子君。」


そう言って笑顔で彼の方を振り返る日向だったが、黒子の"試合には出てましたけど…"発言に、一瞬にしてその笑顔が消え去る。

このどう見たってひ弱なそうな少年が、あの"キセキの世代"だとは到底信じられないらしい。


その後改めて黒子はシャツを脱ぎ、リコによるチェックを受けたのだった。

そしてチェックを終えたカントクは選手にいくつか指示を出すと、すっかり疲れ果てた様子で、ドリンクの準備をするスズの元に歩いていった。


「スズ〜私にも何か飲み物ちょうだい。」

「あははっ!リコ先輩、疲れ切ってるじゃないですか!…はい、どうぞ。」

「ありがとっ!そりゃ疲れるわよ〜あんな体験初めてだもん…って、スズ。」

「はい?」

「あんた、何か声に特徴あるとか言われたことない?」


受け取ったドリンクを一口飲みながら、リコはスズの喉元に目を向ける。

彼女の今までの経験上、喉元に数値が視えた人は1人もいなかった。

しかし今自分の前にいる少女のその部分には、視える場所は違えど火神と同レベルの数値が表示されているのだ。


「声…ですか?んー応援してるときの声がバカみたいに大きいとは言われたことありますけど…」

「そっか…まぁ確かにそれだけの数値が出てれば、声は大きいでしょうね。」

「あとは…あ、そういえば!」

「ん?」

「中学のとき選手の人達に、"お前の声聞くと、いつもよりシュートが入る気がする"って言われたことがありました!」

「シュートが入る?元気が出るとかじゃなくて?」

「はい。あとモチベーションが上がるとか、いつもよりちょっと高く飛べるとか…」

「(興味深い話ね…この子のことも、ちょっと気をつけて視ときますか!)

 分かったわ。ありがと!その大きな声で、練習中も声出し頼むわよー!」

「らじゃ!」


飲み干したドリンクのコップを返しながら、リコが頭をポンポンと叩けば、スズは満面の笑みで敬礼をする。

その元気溢れる姿に、リコも思わず笑みをこぼすのだった。


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それから部活動は順調に進み、とある休憩時間のこと。

選手にドリンクを配り終わり、自分自身もちょっと休憩ということで座っていたスズの元にある人物が近づいてきた。


「木下。」

「ん?おー火神君じゃないの。どうした?ドリンク足りなかった?」

「いや、そうじゃなくて。オマエ…今日、部活の後空いてねーか?」

「部活後?空いてるけど…何?」

「さっき話に出てた"帝光中"とか"キセキの世代"とかについて教えて欲しーんだけど。」

「あ、そっか!火神君、中学アメリカだったんだもんね。私もそんなに詳しくないけど…いいよ!」

「よし。じゃあ着替えたら校門集合な。」

「はいはーい!」


ひょんなことから一緒に帰ることになったスズと火神。

出会って2日目とは思えない自然な会話をする2人に、周りの1年達は"あの2人付き合ってんじゃね!?"と噂をする程だ。

まぁ本人達は、単純に話しやすいからという理由で会話をしているだけなのだが…



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