"ステーキボンバー"という、ごっつい肉のオブジェを屋根に掲げた店の前に到着したスズ。

静かにドアを開ければ、そこには数時間ぶりに見る誠凛メンバーの顔があった。

しかし彼らの顔はどれも、完全にグロッキー状態。

それもそのはず…テーブルの上には人数分のいかついステーキが乗っているのだ。


「リコ先輩、遅くなってすいません!…あの、これは一体?」

「ん?夕飯よ?」

「あ、夕飯…の割に、皆さん食が進んでませんけど…」


苦笑いで黒子の隣に腰を下ろしたスズは、一同の顔を見渡してそう言った。

いくら何でも試合終わりで4kgのステーキはキツいだろう。

スズも黒子の分を1切れ貰ったが、それだけでお腹がもたれる気配を感じたほどである…

だがそんな中、アメリカンな彼だけはケロリとしていた。


「うめー!つか、おかわりありかな?」

「「「!」」」

「あれ?いんないんだったらもらっていい?ですか?」

「(ほぎゃあっ!リスみたいに食っとる!!)」

「何か大我が食べてると、自分でも食べれそうな気がしてくる…」

「ダメだぞ、スズ!それは錯覚だ!!」

「は、はい…!」

「ん?スズ、オマエいつの間に来てたんだ?」

「今さっき!にしても大我…美味しそうに食べるね!」

「だってうめーもん!…あ、スズ悪ぃんだけど先輩達のステーキ持ってきてくんね?」

「あぁ!了解〜」


火神に頼まれたスズが1つずつステーキを回収して、彼の席まで持っていく。

そして隣に腰を下ろすと、食べやすいよう一口サイズにカットしていった。

スズのそんなナイスな手助けもあり、火神は次々に肉を消化していき…

気づいてみれば、あと1枚というところまで辿り着いた。


「ぷぷっ!」

「何だよ。」

「いや、大我のほっぺが超可愛いくて…!」

「う、うるせっ!」

「あははっ!…おっ。大我、これでラスト!」

「ん。」


最後の一切れをスズがフォークに刺して口元に持っていくと、何の躊躇いもなくそれを頬張る火神。

今2人はいわゆる"あーん"をやったはずなのだが、本人達が全くの無意識のため色気の欠片もない。

でもまぁ何はともあれ…


「無事に完食しましたね…!」

「えぇ!…まぁダメだったら逃げるだけだけど。」

「「「(火神、ありがとぉー!!)」」」



2年生軍が心の中で後輩に対する感謝を述べている頃…

一足先に外に出た黒子は、ある人物と遭遇していた。


「…!黄瀬君…」

「…黒子っち。…ちょうどよかった。ちょっと…話さねぇスか。」


制服に着替えた学校帰りの黄瀬に連れられて、黒子は店を離れる。

スズ達がそれに気づくのは、もうちょっと後のことである…



to be continued...



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