"ちょっと…話さねぇスか…黒子っち。"
黄瀬にそう言われ、黒子が店を離れてから数十分後…
無事に特大ステーキを完食した誠凛メンバーが、会計を済ませ店から出てきた。
ほぼ全員分の肉を食した火神の胃袋は、思わず笑ってしまうほどに膨らんでいる。
「うん…さすがに食いすぎた…」
「そりゃそうでしょ〜あんだけ食・べ・れ・ば!」
「うおっ!スズ、てめっ!腹押すんじゃねー!!出てくんだろが!」
「あははっ!……って、隙ありー!」
「ぐっ…!オマエなぁ…やってもいいけど、オレが吐いたら面倒見ろよ!?」
「嫌です〜…って、いたたたっ!」
自分の風船のような腹をポンポンと叩きながら話しかけてくるスズに、火神は苦しそうな表情のまま抵抗する。
それを見てスズはまた楽しくなり、彼の隙をついては腹叩きを続け…
最終的には頬を思いきり抓られるという結末を迎えたのだった。
「ほらーそこの2人、いつまでじゃれてんのー!行くわよ!」
「「はーい!」」
「ごちそうさまでしたー!!…じゃ帰ろっか!全員いる?」
「…あれ?黒子は?」
「いつものことだろーどうせまた最後尾とかに…」
「いや…マジでいねぇ…ですよ。なっ?」
「うん、いない…ですね。」
「「「…え?」」」
集団の1番後ろを歩いていたスズと火神がそう言えば、先輩陣は途端に冷や汗を流す。
体育館という狭い空間でも影が薄く見つけにくいのに、範囲が町全体となるとこれは一大事である。
当然このまま置いていくわけにもいかず、誠凛メンバーは黒子捜索をすることに…
スズも火神とペアを組んで捜索しながら、彼のスマホを鳴らし続けていた。
第11Q「おまえのバスケ」
「…どうだ?」
「んー繋がんない。」
「黒子ーアイツ、ケータイ持ってねーのかよ?」
「あ、今スズがかけてんスけど…ダメっぽいス。」
「そうか…てか、すぐフラフラどっか消えるって…子犬か!」
「それより早く見つけましょ!スズは引き続き、ケータイの方よろしく!」
「了解です!」
「逆エビの刑はそれからかな!」
「…ったく。」
そう呟いて呆れたように溜息を吐いた火神は、ふとあるものを視界に捉え歩みを止めた。
初めは、日本では久しぶりに見るストリートバスケに視線を奪われたのだが、そのまま奥にある公園の方に目を向けたとき、そこにお目当ての人物を見つけたのだ。
「スズ!」
「ん〜?って、あれ?どうしたの、そんなとこで止まって。」
「いた、黒子。」
「えっ!どこに!?」
驚いた表情で駆け寄ってきたスズに、火神は公園の方を指さす。
しかしよくよく目を凝らせば、公園にはどうやら黒子以外にも人がいるようで…
おまけにそれは、スズ達のよく知る人物だった。
「良かった〜見つかって!…てゆーか、あれ…涼太じゃない?」
「涼太…って、黄瀬のことか?」
「うん!」
「…オマエ、いつからそんなにアイツと仲良くなったんだよ。」
「今さっき!海常から帰ってくる前に、少し話したんだ。」
「ふーん…」
「えっ…何、その不機嫌フェイス!」
「え?べ、別に不機嫌じゃねーよ!」
「不機嫌だったよ!怒ってるかと思ったわ!」
「そ、そんなに…か?」
「うん。…あ、私何か気に障ること言った?」
「んー…言ってねー…はず。」
「"はず"って何よ。気になるじゃん!」
「いや、その…何でそんな顔になったのか自分でも分かんねーからさ。でもまぁ今スズに対して怒りの気持ちはねーから安心しろ!」
「う、うん、分かった…!」
スズが勘違いするのも無理はない。
本人的には無意識なのかもしれないが、黄瀬の名前が出た途端、火神の顔は明らかに怒りの表情を示していたのだ。
そうなったのは、スズが黄瀬のことを呼び捨てで呼んだことが原因なのだが、そのことに対して何故自分が不機嫌になったのか、火神自身が分かっていない様子…
この理由に気がつくには、まだもう少し時間がかかりそうである…!
それから2人は、黒子と黄瀬がいる公園へと向かった。
しばらく歩き彼らとの距離が近づくにつれ、徐々に話し声が聞こえてくる。
その内容に耳を澄ませていると、不意に自分達の名前が登場し、スズと火神は互いに顔を見合わせた。
そしてその場で立ち止まり、2人の会話に改めて耳を傾けたのだった…
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