「テメー!何フラフラ消えてんだよっ!」
「おわっ、ちょ、大我!テツ、ケガしてるんだから叩いちゃダメでしょ!!」
「! スズっち…!」
「涼太、さっき振り!」
「何だよ、"さっき振り"って。てか、へーきだってこんぐらい。」
「ダメだっつの!大丈夫、テツ?」
「何とか…」
スタスタと黒子の元へ向かったかと思えば、到着するなり彼の肩辺りを叩く火神。
その力の強さときたら、スズが本気で慌ててしまうほどである。
そして彼女がテツの心配をしている間に、火神は黄瀬の方へと視線を向けた。
「…よう。」
「…聞いてたんスか?」
「聞いてたかじゃねーよ!オマエ、何いきなり黒子ラチってんの!?」
「は?ちょっとぐらいいいじゃないっスか!」
「帰れねんだよ!!」
ギャーギャーと言い合う2人を他所に、スズと黒子は至って穏やかなまま会話をしていた。
もっぱら話題は黒子の頭のケガのこと…
「そういえば、検査結果どうだった?大丈夫…なんだよね?」
「はい、問題ないそうです。心配かけてしまってすみません。」
「んーん、無事で何より!」
"でも無理しちゃダメよ?"
そう言われながらスズに頭を撫でられた黒子は、気持ち良さそうに目を細めた後、笑顔でコクンと頷く。
と、その時…
敷地内にあるバスケコートから、何やら穏やかならざる大声が聞こえてきた。
スズと黒子がコートの方を見やれば、そこにはガラの悪い、恐らく自分達よりも年上と思われる高校生達がいた。
どうやら彼らはバスケをしに来たらしいのだが、コートに先客がいたために遊べず、その先客である高校生達に絡んでいるようなのだ。
「何、あの人達…嫌な感じ。」
「本当ですね。」
それからしばらくコートを見ていると、何やらコート使用権をかけて試合を始めた2組。
しかし相手の高校生の方が実力は上のようで、ガラ悪チームは押され気味。
"いい気味だ"と、スズがニヤニヤ笑いながら見ていた、次の瞬間…!
シュートしようとしていた高校生に、ガラ悪チームの1人がわざと体当たりを食らわせたのだ。
そしてそれだけに留まらず、抗議してきた相手チームの高校生を蹴りつける最低っぷり。
「ちょ、何あれ!!最低…!テツ、見た!?」
怒りを抑えきれないまま、隣にいる黒子を振り返れば、そこには人っ子1人いなかった。
さっきまで確かにいたはずなのに…
キョロキョロしながら姿を探しても、いるのは睨み合っている火神と黄瀬だけ。
「大我、涼太!」
「「ん?」」
「あの…1人足りなくない?」
「…!?」
「そういえば、黒子っちは!?」
黄瀬の言葉を受け、スズは恐る恐るバスケコートの方を見る。
辺りに黒子の姿がなかった時点で、彼女は気づいていたのかもしれない。
あのガラの悪い高校生のことを、黒子が許せるわけがない…と。
結果は、スズの思っていた通り…黒子は例の高校生達に立ち向かっていた。
「どう見ても卑怯です。」
「アッツ…!?ってかなんだテメ…!どっからわいた!?」
「そんなバスケはないと思います。何より暴力はダメです。」
「(あーやっぱり。ったく、無理しちゃダメって言ったのに…!)」
「(なぁああにをやっとんじゃー!!)」
「(黒子っち〜!?)」
「は〜…ったく。行くぞ、スズ!」
「あ、はい!」
友人の向こう見ずな行動に呆れながらも、火神・黄瀬・スズは足早にコートへと向かった。
だが、最後尾を歩いていたスズはあることに気がつく。
バスケ馬鹿3人の荷物が、その場に置きっぱなしになっているのだ。
「あ、ちょっと2人とも、荷物持って…って、聞いてないし!…あーもう!!」
大したものは入ってないのかもしれないが、少なくとも財布ぐらいは入っているだろう。
黄瀬に至っては、モデルをやってる関係上、もしかしたらファンの子が私物を奪いにくるかもしれない。
ということは当然…
「私が持っていけばいいんでしょ、持っていけば!」
ブツブツ文句を言いながら、スズは火神と黄瀬のバッグをそれぞれ両肩から斜めがけにし、黒子と自分の荷物を空いている両手で抱えた。
男性陣の荷物の重量が比較的軽めだったのが、せめてもの救いである。
こうして、ごっついスポーツバッグ3つと自分の荷物を抱えたまま、スズはよたよたとコートへと向かうのだった…
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