「「「お疲れっしたー!!」」」


その声と共に、体育館から続々と汗だくの選手達が飛び出してくる。

いろいろとビックリする出来事はあったが、何とか部活動初日が終了した。

スズもマネとして備品の片付けや明日の準備等をこなし、それから更衣室でジャージから制服に着替え、小走りで校門へと向かう。

到着すると、そこには既に制服姿の火神が立っていた。


「ごめん!片付け長引いちゃって…!」

「いや。むしろ悪ぃーな、付き合ってもらって。」

「いえいえ!じゃあ早速お話していきますか!」

「おう、頼む。」


スクールバックを持ち直し、スズはゆっくりと話し始めた。

帝光中という、アホみたいに強い学校があったこと。

そこに"キセキの世代"という、5人の天才がいたこと。

そして黒子が、その"キセキの世代"でレギュラーとして活躍していたらしいことを。


スズの説明に適度に相槌を打ちながら、火神は真剣に耳を傾けた。

そんな彼の表情が時折緩むのは、強い者を求める野心故なのであろう…


「…とまぁこんな感じかな。5人がどのぐらい強いかは分かんないけど、相当ヤバいって噂だよ。」

「いいねーそういうの!ワクワクするわ。」

「ふふっ。この世代に生まれてきて良かったね!」

「あぁ!ありがとな、木下。」

「どういたしまして。たぶん黒子君の方が詳しく知ってるだろうから、そっちにも聞いてみたら?」

「そうする。…つか、腹減らね?」

「あー言われてみると…」

「オマエの時間が平気なら、そこで食ってこーぜ。」

「いいねー!食べてこ、食べてこ!」


こうして2人は目の前にあった"MAJI burger"へと入っていった。

それぞれ食べたい物を注文し、待つこと数分。

先に会計を済ませたのは火神の方だった。

彼のトレイには、10は軽く超える量のバーガーが乗っている。


「ぶふっ!ちょ、火神くん、それギャグ!?」

「ギャグじゃねーよ!ギャグにこんなに金使うかっつーの。」

「確かに…でもそれ全部食べれるの?私、手伝えないよ?」

「手伝わんでいい!オマエとオレじゃ胃袋のでかさが違げーんだよ。先行ってるぜ。」


そう言ってスタスタと店内の奥へ歩いて行く彼を、スズは呆然と見つめていた。

"いくら胃袋の大きさが違うとはいえ、あんなに食べるのか〜男子高校生ってすごい。"

スズは心の中でそう呟きながら、自身のバーガーが来るのを待っていた。



それからさらに数分後。

ようやく注文したバーガーが出来上がり、会計を済ませてから店内へ向かうスズ。

キョロキョロと友人の大きな姿を探していると、窓側に並ぶ席の1つから自分の名前を呼ぶ声が…

そちらに目を向ければ、軽く手を上げて彼女を待つ火神がいた。

スズが小走りで席に向かう間、彼はスッと視線を窓の方に向けようとしたのだが、その瞬間!


「ぐおっっ!?」

「どうも…育ち盛りですね。」

「火神君、どうしたの?急に大声出して…って、えっ!?黒子…君?」

「こんばんは、木下さん。」

「あ、こんばんは!」

「どっから…つか何やってんだよ!?」

「いや、ボクが先に座ってたんですけど。人間観察してました。」

「(火神君、今まで気づかなかったの?)」

「(お、おぅ。)」


黒子の隣に座りながら、スズが小声でそう問いかければ、彼は怪訝そうな顔で返事をした。

その影の薄さに改めて驚く2人だったが、不意に火神が黒子へ話しかける。


「それより、ちょっとツラ貸せよ。これ食ってから。」

「何、ケンカでもするの?」

「しねーよ。ちょっと…な。木下も来るか?」

「…気になるから行く!」


スズの返事に満足そうに頷いた火神は、黙々とバーガーを腹に入れ始めた。

それに負けずに、彼女もまたバーガーを口いっぱいに頬張ったのだった。



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