さぁ一方、売店へと向かったチーム1年の面々は…?


「やっぱいつもより人多いみてーだな。」

「よしっ!私も頑張るよー!」

「え、スズも参加するんですか?」

「もちろん!私人混みの中歩くの得意だし。」

「確かに女の子の方がバーゲンとかで慣れてるかもね。」


そんな会話をしながら売店の入口に到着した一行だったが、中に入った途端表情が一変する。

売店には、ほぼ全員といっていいほどの生徒が集まっていたのだ。

求めるものはただ1つ。


「おばちゃん、イベリコ豚カツサ…!」

「いてっ!」

「すいません!イベ…ってーな!」

「何すんだ…いって!」

「ちょっとおさないでよ!!」

「カ…カオスだ…」

「とにかく行くしかねー。筋トレ、フットワーク3倍は…死ぬ!!…あとスズ!オマエはやっぱり参加すんな。」

「え?何でよ?」

「何でって…危ねーだろ!?こんな状態の中に突っ込ませるわけにいくか!」

「いや、でも…みんなにだけ大変な思いさせるのは…」

「大丈夫だよ。オレらに任せとけって!」

「そうですよ、スズ。心配しないで、ここで待ってて下さい。」

「テツ…」

「それに、珍しくカッコイイことを言った火神君のメンツを立ててあげないと。」

「珍しくって何だよ!!」

「ふふっ。ありがとう…!」


そう言って笑顔を見せるスズからお金を受け取ると、男性陣はいよいよ戦場へと向かった。

しかしいざ挑んでみると、レジの前まで行くどころか、人混みの中にさえ入れない火神達…

何度突入しても、誰が突入しても、結果は変わらず弾き飛ばされるばかりだ。

と、そんな中、待機中のスズの周りで休んでいた火神達の元へ黒子が戻ってきた。

手には例の伝説のパンを携えて…


「あの…買えましたけど…」

「「「…」」」

「嘘…テツ、いつの間に!?」

「なっ…オマ…!どうやって!?」

「人ごみに流されてたら先頭に出ちゃったんで、パンとってお金置いてきました。」


自分達がこんなにボロボロになっても買えなかったパンを、黒子は何の苦もなくサラッと買ってきた。

その事実に、皆心身ともにドッと疲れが出たようだ。

そして伝説のパンと先輩達のお昼を抱え、フラフラになりながらチーム1年は集合場所である屋上へと向かったのだった。



in 屋上

1年生達がボロボロの状態で到着すると、ジュースと共に笑顔で彼らを迎える先輩の姿が…

買ってきた伝説のパンはと言えば、頑張ったご褒美に1年だけで食べていいということになった。


「え?いいんですか!?」

「いいって。遠慮するなよ。」

「スズも良かったわね、フットワークやらずに済んで!」

「本当、みんなに感謝です…!」


スズとリコがそんなやり取りをしている間に、1年生達は早速パンにかじりつく。

もちろん1番に口をつけるのは、今回の功労者である黒子だ。

先程まで"高すぎて逆に品がない"と言われていた伝説のパンだったが、一口食べた途端、黒子の顔はとても幸せそうな表情になったとか…!

それから他のメンバーも次々に食べていき、誰もがその美味しさにテンションを上げるのだった。

そして"自分は参加してないから"と食べるのを拒んでいたスズに、黒子や火神が無理やり食べさせたところ…?


「うわっ…!何これ。こんな美味しいパン食べたことない!!」

「スズがそれだけ喜んでくれると、ボクも頑張った甲斐があります。」

「テツ…本当にありがとね…!」

「どういたしまして。」


お互いにふわっとした笑顔を向け合うと、2人はもう一口ずつパンをかじったのだった。

その残りを、まだ食べていない火神にあげようと辺りを見回したスズは、隅の方でとてつもなく長いBLTサンドを食べている彼の元へと向かった。


「大我!」

「ん?おースズ。」

「はい、これ。大我の分。」

「オレは別にいいよ、これあるし。むしろオマエが食えって。」

「私はもう十分食べたから。すごく美味しかったよ!」


ニコニコしながら自分にパンを差し出しているスズを見て思わずフッと笑みをこぼした火神。

そしていい笑顔の同級生に対し、"じゃあ一口貰う"と大きな口でかじりついたのだった。


「…うん、うめーな。」

「ねっ!こんなの売ってるなんて、うちの高校もなかなかやるよね〜」

「まぁな〜でもオレはやっぱ、こっちのがいいわ。」

「はいはい。大我は質より量だもんね!」

「わりーのかよ。」

「全然!私、いっぱい食べる男の子好きですから!」

「なっ…!スズ、オマエ…な、何言ってんだ…!」


スズがポロっと漏らした言葉に、ビックリするほどの反応を示す火神。

その顔はトマトやリンゴも顔負けの赤さになっている。

これでまだ自覚がないのだから、この火神大我という男も困ったものである。

友人のそんな突然の変化にボー然とするスズだったが、次の瞬間には真っ赤な顔の彼をからかい始める大物っぷり。

あの反応から何も感じ取れないところを見ると、こちらもこちらで問題ありと言ったところか。


ともあれ!

こうして、誠凛バスケ部の賑やかな昼休みはチャイムと共に終わりを迎えた。

部活開始まで、授業はあと1コマ!



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