試合開始5分前。
スタメン組は体のアップを終え、ジャージも脱ぎ準備万端。
リコとスズも選手を送り出そうと待機していると、不意に黒子がそんな2人の元へと近づいた。
そして…
「へ?黒子君、先発?黒子君には時間制限があるでしょ?控え選手として戦況見て出してくって言ったじゃない。」
「お願いします。」
「なんでそんな血走ってんのよ?」
「(お父さんのせいだな…ふふっ。)」
「…ま、初っパナからカマすのも嫌いじゃないし…いーわよ!
…ただし、いきなり切り札見せつけるんだから、中途ハンパじゃ逆効果よ。第1Qで最低10点差はつけなさいよ!」
「確かにそうですね!やるからには「トラウマ植え付けるぐらい圧倒的に、ですよね。」
言おうとしていることを言われ驚きの表情を見せるスズだったが、自信あり気に微笑む黒子を見ると、彼女もまた明るい笑顔を見せるのだった。
さあ、いよいよ…
「それではこれより、誠凛高校 対 新協学園高校の試合を始めます!」
「「「しゃす!!」」」
「行けー!誠凛ー!!」
試合開始!!
第14Q「2つ言っておくぜ」
例の如く、相手チームが黒子の存在感の薄さに驚いた後、ジャンプボールのため火神とお父さんがセンターラインに寄る。
ホイッスルと共に跳び上がった2人の内、ボールに手が触れたのはお父さんの方だった。
「うおっ!?」
「(マジかよ!?信じらんねー。火神が高さで負けた!?)」
「(っのヤロ…!)」
「大我が負けるとか、有り得ないんだけど…!」
誠凛メンバーが驚きを隠せない中、試合は新協学園ボールで進む。
ボールを持ち、フェイクなしでそのままジャンプシュートの体勢に入るお父さん。
そして"余裕で止められる"とブロックに跳んだ火神を嘲笑うように、ボールはキレイな弧を描いてネットを揺らした。
先取点は、新協学園だ。
そして続いてシュートを放った日向も、お父さんの高さに捕まってしまう。
事前に分かっていたとはいえ、やはり彼の高さには相当苦しめられそうだ。
「デタラメだろ、あんなの…やっぱりズリーよ、外国人選手なんて。」
「んー…でも、別にルール違反なことしてるわけじゃないからね〜」
「まぁそうなんだけどさ…」
スズを含めたベンチメンバーのそんな話が聞こえたのか、新協チームのキャプテンが不意に日向に話しかける。
突然の声かけに怪訝そうな表情を向ける日向に構わず、相手は会話を進めた。
「誠凛さんってアレ?スポ根系?」
「は?」
「いるんだよね、よくさ〜…"助っ人外国人ズルイ!"みたいな?さっきおたくのマネも言ってたけど、別にルール違反とかしてねーし。
強い奴呼んで何が悪いの?楽だぜーアイツにボール回しゃ、勝手に点入ってくし。楽に勝つのがそんなにイヤかね?どう?」
「楽かどうかは知んねーけど、そのポリシーなら逆に文句言うなよ?とんでもねー奴らなら誠凛にもいるし。呼んでないけど。」
「は?」
「あと…アンタのその考え方、ウチのマネージャーは一番嫌いだよ。」
「へ?」
「アイツの前で同じこと言ってみ?ボロクソに言われっから。」
そう言って少し笑った日向は、誠凛自慢のマネをチラッと見てから試合へと戻っていった。
それから試合は進み、得点は8−3と新協がリードしている状態。
しかし先程から、新協のエース・お父さんの調子がどうにも悪い。
シュートをことごとく外しているのだ。
その原因は…
「大我のプレイ、だいぶ効いてますね。」
「ええ!そう簡単には入らないわよ。なんたって…火神君がお父さんに自分のプレイをさせてないからね!」
「自分のプレイを…?」
「届かなくてもやり方はあるのよ!水戸部君直伝のね!」
「あれは素晴らしいです…!」
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