そして再び試合が始まった。
開始早々、火神の高さを遥かに超えてシュートを決めたお父さんは、よほど監督に絞られたのか気合いは十分で…
「モう本気!負けなイ!!」
「ハッ。そうこなくちゃな。テンション上がるぜ、お父さん!」
お父さんと同じぐらい気合いが入っている様子の火神は、それから怒涛の活躍を見せた。
日向が外したボールに対して、リバウンドとゴール下のシュートで点を取り、お父さんが攻めあぐねるほどのジャンプ力は回を増すごとに高くなっている。
その成果として、両チームの得点差は未だ開いたままだ。
「火神すげえ!!こらえるどころか全然負けてねー!カントク、特訓の成果出てるっスよ!」
「…え…と、てゆーか…ねぇ、スズ。」
「んー…そう、ですね…」
「ん?スズまでどーしたんだよ。」
「あー…と、これは…ねぇ、カントク。」
「うん。…ですぎ、かな?」
「え?」
「(いや、すごいってのは知ってたケド…なんか黄瀬君とやってから一段とパワーアップしたような…)」
エースのあまりの活躍ぶりに少し戸惑いを見せるリコ。
スズもまた、以前黄瀬が言っていた"火神が浮いた存在になる"という言葉を思い出し表情を険しくしていた。
そんな彼女の様子に、黒子が気づかないわけがなく…
穏やかな声で名前を呼ぶと、優しい笑顔をスズに向けた。
「スズ。」
「! ん?何、テツ?」
「ふふっ。そんな怖い顔してちゃ、眉間に皺ができちゃいますよ?」
「えっ…そんなに寄ってた?」
「はい。スズにその皺は似合いません。」
言いながら、黒子はスズの皺を伸ばすように指で眉間を押す。
突然のタッチにドキドキしながらも、自分を和ますような彼の行為にスズは感謝の言葉を贈った。
と、その時…!
不意に沸き上がる歓声に驚きコートに目を移すと、新協チームが3Pを決めたところだった。
60−51…これで差は1ケタだ。まだまだ結果は全然分からない。
「(てかヨユーこいてる時じゃないし!最後まで気は抜けないわ!!)黒子君!ラスト5分行ける!?」
「…むしろけっこう前から行けましたけど…」
「ゴメン!じゃゴー!!スズ、手続きお願い!」
「了解です!」
そしてスズが審判に選手の交代を願い出ると、すぐにそのチャンスは訪れた。
笛の音と共に黒子がコート内へと足を踏み入れる。
「交代です!!」
「では行ってきます。」
「うん!バシッと終わらせてきて!!」
「はい。」
スズの言葉に笑顔を見せた黒子は、能力全開で試合に臨んだ。
少し休んだことで影の薄さが戻り、相手チームはまたも訳の分からないまま点を取られていた。
「ヤダ!負けルのゼッタイ、ヤダッ!…おおお!!」
「キセキの世代にガッカリとか言ってたけど、チョーシこきすぎだね!アイツらの方が…断然強ーわ!!」
叫ぶのと同時に跳び上がり、お父さんのシュートを完全にブロックした火神。
これが、誠凛 対 新協戦のラストプレイになった。
審判の"試合終了!"の声と共に笛が鳴り、両者はセンターラインに寄る。
「誠凛高校の勝ち!!」
「「「ありがとうございました!!」」」
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