オレには最近、気になる子がいる。
名前は木下スズ。
異世界から来た彼女は、初めてオレ達と会ったとき、普通じゃ考えられないことを次々と話した。
オレ達が漫画の中のキャラクターだとか、その漫画の中に吸い込まれたとか…
もちろん最初は驚いたし、スズのことだって"変わったこと言う子だな〜"みたいな…そんな感じだった。
でもこうやって一緒に過ごすようになって、スズがオレ達の世界の女子と何も変わらないんだって気づいたんだ。
元気で明るくて、いつも笑ってて…
そんな彼女を、オレはいつしか目で追うようになってた。
スズといると楽しいし、落ち着くし、元気になれる。
おまけに、名前を呼ばれる度に心臓がうるさくなんだよな…!
これがどういうことなのか、何となくは分かる。
…いや、もうとっくに気づいてんのかもしんねー。
でも口に出して、ハッキリ自覚すんのは…何か怖い。
周りの奴が、スズが、何より自分自身が……変わっちまう気がして。
標的13 気づいた気持ち
今日は、スズをオレんちに招待してる。
親父にスズの話をしてから、毎日のように連れて来いって言われっからさ。
んで今は、オレ達が最初に会った公園で待ち合わせ中ってわけ!
たぶんもうそろそろ…
「あっ、やまもっちゃーん!」
「スズ!道、大丈夫だったか?」
「うん、もうバッチリよ!昨日のうちに予習しといたしね!」
「あははっ!予習したのか〜偉いじゃん。」
オレがそう言って頭をポンポンと叩けば、"まぁね〜"って言いながらふわっと笑うスズ。
それがオレには心地よくて…
でも、ちょっと悔しくて…
信頼されたい気持ちと、男として意識してもらいたい気持ちがごちゃ混ぜになる。
「やまもっちゃん?ボーっとしてるけど大丈夫?」
「! お、おぅ!平気平気!よし、じゃあ親父も待ってるし行くか。」
「うん!」
頭使うの苦手だし、難しいこと考えんのは後だ!
今はこの時間を目いっぱい楽しんだ方がいいよな。
せっかく2人っきりなんだし!
それから家に着くまでの間、オレ達は他愛のない話で盛り上がった。
ツナんちでの居候生活のこと、学校のこと、はたまたオレの部活のこと…
本当普通過ぎるぐらい普通の話なんだけど、スズと話すとすげー楽しいんだ!
そのお陰で、気づけばいつの間にか"竹寿司"の看板を掲げる店の前に立っていた。
「親父、ただいま〜スズ連れてきたぜ!」
「おぅ、お帰り武!それといらっしゃい、スズちゃん!」
「は、初めまして!木下スズと申します!きょ、今日はお招きありがとうございます!」
「ははっ!んなに硬くなんなって、スズ!」
「そうだぜ、スズちゃん。楽にしてくんな!
スズちゃんのことは武からいろいろ聞いてるから、何か初めて会った気がしねーな。おいちゃんの名前なんかも知ってんのかい?」
「もちろんです、剛パパ!ずっと会いたかったんですよ!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれんじゃねーか!よっしゃ!ちょうど昼時だし、寿司握ってやらぁ!」
こんな感じに、親父と楽しそうに話すスズ。
親父も親父でスズと話すのが相当楽しいみたいで、いつも以上に笑顔な気がする。
きっとスズの柔らかい雰囲気と、礼儀正しさと、人を安心させる笑顔のお陰だろう。
やっぱ奥さんにすんならこんな感じが…って、何考えてんだオレは…!
ふと出てきた自分の考えに驚きながらも、頭を振って一度脳内をリセットする。
オレ、ちょっとスズを意識し過ぎだな…
思わず出た苦笑いを手で隠してると、そんなオレを不思議そうに見つめるスズと目が合った。
「! スズ。ど、どした?」
「いや、それこっちの台詞!さっきからぼーっとしたり、頭振ったり、落ち着かなそうだからさ。」
「あ、悪ぃ悪ぃ!何でもねーんだ!それより、寿司が出来るまで2階行ってようぜ!」
危ねー…何とかごまかせたか?気ぃつけねーと。
一度バレないように深呼吸をして、オレは階段を上りながらスズに話しかけた。
「寿司ができるまでの間に、何かやりたいこととかあるか?」
「あるある!ぜひ、やまもっちゃんのアルバムを見せていただきたいです!」
「オレのアルバム?」
「うん!小さい頃のやまもっちゃんとか見たいな〜って!」
「あ〜見せんのは全然いいけど、野球ばっかだから何も面白くないと思うぜ?」
「何言ってんの!私にとっては最高の胸キュングッズよ?」
「む、胸キュン…?」
「そう、胸キュン!さっ、お姉さんに成長の記録を見せてご覧なさい!」
「あははっ!了解、ねーちゃん。」
それからはアルバムを見ながら、これはどことの練習試合だの、合宿はどうだったのっていろいろ話した。
オレからしたら、ごく普通で特に変わったことを話してるつもりはないんだけど、スズはその1つ1つに満面の笑みで相槌をうってくれて…!
それが何かすげー嬉しかったんだ。
30分後…
昼飯の準備をしていた親父から声がかかり、オレ達は2人揃って下に降りた。
もうちょっとこのままでいたかったけど…まぁ、しょうがねーよな。
親父の寿司はといえば、息子のオレが言うのも何だけどめちゃくちゃ美味くて思わず笑顔になる。
チラッと見たスズの顔もオレと同じように笑ってて、この時間がずっと続けばいいな…とか思ったんだ。
「はぁ〜美味しかった〜!ごちそうさまでした。こんなに美味しいお寿司、私初めてです!」
「ありがとよ!そう言ってもらえると、オレも嬉しいや!」
そう言って親子のように笑いあう親父とスズ。
この数時間で、2人がだいぶ仲良くなったように思うのは、きっと気のせいじゃねーはず。
にしても、楽しい時間はあっという間に過ぎるって言うけど、あれ本当だわ。
気づいてみれば外はすっかり暗くなってて、もうスズを帰さなきゃいけない時間だった。
「おじさん、今日はごちそうさまでした。本当に美味しかったです!」
「どういたしまして。スズちゃんに喜んでもらえて良かったよ!また遊びに来てくれな!」
「はい、もちろんです!」
「じゃあ親父。オレ、スズのこと送ってくるわ。」
「おぅ!最後までしっかり送ってこいよ。」
「分かってるって!じゃあ行くか。」
「うん!お邪魔しました!」
そう言って家を出たオレ達は、来るときと同じようにまた他愛ない話に花を咲かせた。
まだまだ一緒にいて、こうやっていっぱい話したいけど、そういうわけにはいかねんだよな…
「やまもっちゃん!」
「! ん?どうした、スズ。」
「今日は招待してくれてありがとっ!お寿司は美味しかったし、アルバムは見れるし、もう本当楽しかった!」
「どういたしまして。オレの方こそ、来てくれてありがとな!」
そしてツナの家の前まで来ると、スズは相変わらずの笑顔で、また"ありがとう"って言ったんだ。
今日1日スズと2人で過ごして、気持ちに整理がついた。
オレはスズが好きだ。
今ならそう、断言できる。
だって…気づいたこの気持ちは、もう抑えらんねーから。
to be continued...
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