6時間目が始まるのと同時に、廊下はまたさっきと同じようにシンと静まりかえった。

あの忙しくしてた委員長も、そろそろ落ち着いたかな…?

そう思いながら、私は足早に応接室へ向けて歩き出した。





標的17 からかい相手





ノックしてから静かにドアを開けて中を覗くと、恭弥は相変わらず机に向かっていた。

最初来たときよりは落ち着いたように見えるけど、それでも相変わらずバタバタしてて…

こりゃもう少し待たなきゃいけないかもな〜


「ただいま〜」

「おかえり。どうだった?」

「すごい楽しかった!皆頑張って勉強してるし、校舎もキレイだし、いい学校だね!」

「! 当たり前でしょ。」


涼しい顔をしながらも、その顔はどことなく嬉しそうで…!

"可愛いとこあるじゃん!"

なんて、こっちまで思わず笑顔になってしまう。


それからしばらく恭弥の働きっぷりを見てたんだけど、この子本当にキレイ。

真剣な顔で書類とにらめっこしてる表情なんて色気たっぷりだもん。

流れるように動く手はちょっと骨ばってて男らしいし、でもそうかと思えば指1本1本は細くて長くてセクシーで…!

世の中にはこんなに完璧な子もいるんだ。

とか勝手に感動していると、ふと私の目に彼が身につけている"あるもの"が目に入った。

その"あるもの"とは、全国にいる女性陣の誰もが認めるであろう定番の萌えアイテムです。

皆様お分かりになりました?

答えは…


「恭弥ってさ…」

「ん?」

「いつもネクタイしてるの?」

「別にいつもってわけじゃないよ。その日によって違うけど…何で?」

「いやさ、ちょっとネクタイ取ってみて欲しいな〜と思って!」

「は?何でそんなことしなきゃいけないの。」

「何でって…だって恭弥、呼びだしたくせに全然構ってくれないんだもん!」

「……じゃあもう少しで仕事終わるから、ちょっと待ってて。」

「らじゃ!」


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そしてお菓子とお茶を楽しみながら待つこと数十分…

先程言っていた通り仕事を終えた恭弥が、自席を立ち私の方へと歩いてきた。

よし、ここでちょっと胸キュン仕草をやってもらいましょうかね!


「恭弥、ちょっとストップ!」

「?」

「あのさ、そこから歩きながらネクタイ取ってみて!」

「何それ。スズはそれだけで満足するの?」

「うん、大満足です!」


そう言う私に呆れたような顔を向けた恭弥は、口では"変なの"と呟きながらも言うことを聞いてくれた。

彼が今現在進行系でやってくれている行為は、顔を少し下向き加減にして、ネクタイの結び目部分に指をかけ、左右に動かしながら取るあの行為なんです!

この最強の胸キュン仕草を、あの雲雀恭弥がやってるんだよ!?

もうね、本当ビックリするぐらいカッコイイから…!

ぜひとも雲雀ファンの皆様にお見せしたいですよ!

と、1人大満足な感じで妄想に浸っていると、不意に隣に人の気配を感じて…


「おわっ!きょ、恭弥!?」

「何でそんなに驚くの?」

「いや、だって…(向かいの席に座ると思ってた…!)」

「それより…ネクタイ取ったけどこれで良かったの?」

「うん!もうね、今の仕草見てるだけでご飯5杯はいける!」

「…スズって本当変だね。」

「…もうそれ褒め言葉として受け取るから。」


不貞腐れたようにそう言いながらお茶を取ろうとすると、突然その手を掴む恭弥さん。

いや、危なっ!お茶こぼしちゃうじゃん!


「ちょ、恭弥!いきなり危ないでしょ!」


咄嗟にもう片方の手で湯のみを支えたから事なきを得たけど、危うく火傷するところだったよ!!

そんな焦りと驚きが入り混じった感情のまま恭弥の方に顔を向けると、そこには至って真面目な顔でこちらを見つめる彼の姿が。

あれ、何この空気。

私的には、例の人を小バカにしたような不敵な笑みを浮かべた恭弥を想像してたんだけど…


「な、何かしら…?」

「ねぇ、僕はそれだけじゃ満足できないんだけど。」

「…はっ!?お、お、仰ってる意味が分かりかねますが…!」

「本当は分かってるくせに。」

「ひっ…!」


世の中の全ての女性陣を骨抜きにするような妖艶な微笑みでそう言われれば、私のような一般人は全くもって対抗できない。

何とか頑張って空気を変えようと思ってるんだけど、それを知ってか知らずか恭弥はどんどんと距離を縮めてくるんです…!

皆さんお分かりですか?あのキレイなお顔がもう目の前まで迫ってるのよ!?

これはヤバイって…

とてもじゃないけど耐え切れる自信がない!

あーダメだ。何か頭クラクラしてきた。

そしてついにその時は訪れた…


「スズ。」

「!」

「…僕を満足させてよ。」


私にとっては刺激的過ぎる言葉と不意に合わされた視線により、私は呆気なく意識を手放してしまった。

我ながら、全く情けない…


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呼び出しに応じて来てくれた当初から散々"構って構って"って言うから、お望み通り構ってあげたのに…


「何でこの子気絶してるわけ?」


耳元でちょっと囁いただけなのに、次の瞬間スズはふっと意識を飛ばしてしまった。

嘘みたい。

今どきこのぐらいで気絶する子なんている?


思ってた以上にたくさんあった仕事のせいで、スズを呼び出したのになかなか手が空かなくて…

それでも急ピッチで作業して何とか仕事終わらせて、やっとスズをからかって遊べると思ったら、今度はその本人が気絶しちゃうなんて信じられない。

…でもまぁいいか。またいつでも呼び出せるし。



それから僕は、ソファの肘掛部分を枕に寝息を立てるスズの頭を何の迷いもなく膝の上に乗せて…

自分でも驚くぐらい優しく彼女の髪を撫でて…

そしてたぶんすごくナチュラルに微笑んでいた…と思う。


この僕に膝枕させたんだ。

お礼はあとでたっぷり貰うから、覚悟しといてね…スズ?



to be continued...



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