今日は何だか皆に会いたい気分だった。

それが何故だかは、分からないけど…





標的23 事件前 -前編-





今日の私は少し変だ。

いつもは"暇つぶし"とか"買い物"とか、ちゃんと理由があって出かけるのに今日はそれがない。

これといった理由はないのに、何故だか散歩に出かけたくなったんだ。

何だか無性に、皆に会いたくて…


そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら歩くこと数分。

早速見慣れた後ろ姿を発見した私は、その人物に声をかけることにした。

あのスラッとした身長と漆黒の髪、後ろから見ても分かる爽やかオーラを持つのは、もう彼しかいない!


「…やまもっちゃーん!!」

「! おぉ、スズ〜!おはよっ!」

「おっはよ〜!こんなに朝早くから何してんの?」

「これから野球部のミーティングなんだ。スズこそ何してんだ?」

「私は〜何となく皆に会いたくて…散歩しながら探してた!」


そんな私の言葉に一瞬驚いたような表情を見せたやまもっちゃんだったが、"そっか!"と答える彼はいつにも増して笑顔が素敵だったんだ。

これは何かあったのかな…?


「やまもっちゃん…今日は一段と笑顔が輝いてるね!」

「ん?そうか?」

「うん!キラキラしてるもん!」

「あはは!それはきっと…」

「えっ!何か理由があるの?」

「おぅ!…知りたい?」

「知りたい、知りたい!!」

「んじゃあ…耳貸して。」

「はいよ!」

「……スズに会えたから。」

「!」

「へへっ!…じゃっ、オレ行くわ!またな、スズ!」


そう言って駆け足で去っていくやまもっちゃん。

その顔がほんのり赤かったのは、きっと見間違いではないはず…!

もう…!あの子は一体何なの!?マジでカッコ良すぎるだろ!

今、絶対顔真っ赤だよ…!

あれは天然のモテ男だね。うん、間違いない。


そんなこんなで恥ずかしさと嬉しさとがごっちゃになった私は、その場に仰向けに倒れてしまった。

…こっちのがよっぽど恥ずかしいとか言うのはなしだからね!


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タバコを買った帰り、道端に仰向けで寝てる変な奴を見た。

何だよアレ…かなり頭イカれてんな。

関わると面倒くせーし、こういうのは無視するに限る。

そう思ったオレは、その横を素通りしようとした…んだけど。


ガシッ


突然、その寝てる奴に足を掴まれた。


「うおっ!!てめー何しやがる!離せ…って、スズ!?」

「やっほ〜隼人…」

「おまっ…!何してんだこんなとこで!つか早く起きろって!!」


誰かと思えば、まさかスズだったとは…

オレは急いで目の前のアホを抱き起こすと、頭やら肩やらについた砂を払ってやった。

こいつがオレより2つも年上なんて…未だに信じられねー。


「ったく…何やってんだ、おめーは!汚ねーな!!」

「あはは〜ごめん、ごめん!隼人が来てくれて助かったよ!」

「ハァ〜…にしても、何でこんなとこで寝てたんだよ?」

「! それがさ!聞いてよ、隼人ちゃん!!」

「何だよ…つか"ちゃん"はやめろ。」


冷静にそう返すオレにぶんっと首を縦に振って見せると、スズは今あったことを話し出した。

どうやら少し前に山本にドキッとすることを言われたらしい。

それであまりの興奮に倒れこんだと…本当に究極のアホだな、こいつは。


「…で?何て言われたんだよ?」

「ひひっ!耳元で…"スズに会えたから"って!」

「!」

「ヤバイっしょ!?そりゃ倒れるっつの!」


あの野球バカ、スズのこと…

まぁ、オレには関係ねーけど。


でも…本当に関係ねーのか?

だったら何でこんなに…オレはヘコんでんだ?

何だこのムズムズするみたいな気持ち。


「…隼人?」

「! な、何だ?」

「また前みたいになってるよ…?」

「前?」

「ほら!呼び捨てで呼んでいいって言ってくれたとき!」


あぁ…そういえば、前もこんなことあったな。

確かあん時は、呼び方のことでヒバリに対して嫉妬してたっけか。

ん?ちょっと待て…嫉妬?これって嫉妬なのか?

あ〜そうか…オレもスズのこと…


「…好きなんだ。」

「へ?何が?」

「ん?…お前が。」

「ふ〜ん…って、えぇ!?」

「ふっ…アホ面。」


オレはスズにそう言うと、足早にその場を立ち去った。

だっていつまでもあそこにいたら、顔の赤さがバレちまう…



to be continued...



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