場所は変わり、並盛中央病院では…


「だ、大丈夫なのか!?レオン、いろんなものに変わりっぱなしだぞ!」

「尻尾が切れて、形状記憶の制御ができなくなってるんだ。」

「なんじゃそりゃ〜!?」

「(そういえばレオンって、そんな設定あったっけか…!)」


私とツナがレオンの様子に戸惑っていると、看護師さんの大きな声と共にストレッチャーが勢いよく入ってきた。

乗っているのは、歯を4本抜かれ酷いケガを負っている草壁さん。

ついに彼までもやられてしまった。

恭弥が敵を倒しに行ったにも関わらず、まだこうして犠牲者が出るということは…


「(恭弥が骸さんに捕まったんだ…)」


きっと今頃、桜クラ病のせいで体に異変が起きてるはず。

リボーンに"未来は変えるな"って言われたけど…

恭弥にも"絶対に来ちゃダメ"って言われたけど…

でも!

私は行く。今、そう決めた。

だって今この状況で"雲雀恭弥がケガしてる"ってことを知ってるのは私だけだし、今少しでも治療をしとけば、この先恭弥が楽になるかもしれない。

それにケガの治療ぐらいだったら、物語に大きな影響は与えないはず!

よし、そうと決まれば…!


「ツナ!リボーン!」

「ん?」「何だ?」

「私、ちょっと行ってくる!!」

「…えっ!ど、どこ行くの!?1人で動いちゃ危ないって!」

「大丈夫!絶対大丈夫だから!」

「いや、でも…!」

「本当に大丈夫なんだな?」

「うん、大丈夫。いろんな意味でね!」


"いろんな意味"っていうのは、ケガをしないっていう"大丈夫"と、未来を変えないっていう"大丈夫"のこと。

その言葉を聞いてツナは頭に?を浮かべてるけど、リボーンは納得してくれたようだ。


「分かった。気をつけて行けよ。」

「ありがとっ!」

「ちょ、リボーン!!」

「ツナ、また後で合流しよう!」

「…分かった。本当に気をつけるんだよ…!」


私の目を真っ直ぐ見つめて、心配そうな表情でそう言ってくれるツナに笑顔を向け、私は救急箱を取りに一度沢田家へと戻ったんだ。


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救急箱を片手に再び家を飛び出してから約1時間後…

私は何とか目的地へ辿り着くことができた。


この中に、恭弥と骸さんがいるんだ…

そう思いながら改めて黒曜センターを仰ぎ見ると、外観は漫画と同じなのに恐怖感や不気味さは全く違う。

ここから発せられるそのヤバイ雰囲気は、純粋な一般人である私でも分かるぐらいだからね。


"私なんかが来る場所じゃなかったのかも…"


ふとそんな考えが頭をよぎったけど……でも、恭弥を助けないと!

この前彼が変態から私を助けてくれたように、今度は私が!!

救急箱の取っ手を強く握り締め、今まで以上に固くなった決意と共に、私は黒曜センターへと入っていった。



中に入ってみれば、そこは薄暗くて血の匂いが充満していた。

確か恭弥は骸さんに桜を見せられた後ボコボコにされて、どこかの部屋に寝かされてるはず…

何とかその部屋に行ければ…!


「…恭弥〜?…どこ〜?」


気づかれない最大音量の声を恭弥に向けたが、一向に反応は返ってこない。

でも漫画通りに進んでる以上、思い描く最悪な状態にはなってないはず!

私はその希望を胸に前進を続け、不意に現れた1つの部屋のドアを開けた…


「恭弥…?いる〜?」

「! スズ…?」

「恭弥!大丈夫!?」


部屋の片隅で体を横たえていた恭弥は、思ってた以上にボロボロで…

それでも私の姿を見つけた彼は、痛みを堪えながら壁に寄りかかるように体を起こした。

私が急いで駆け寄って目線を合わせるようにしゃがむと、そこには冷たい目でこっちを見る恭弥がいた。


「…恭弥?」

「伝言…聞かなかったの?」

「…聞きました。」

「聞いて、その上でこうして来たってこと?」

「…はい。」

「来たら僕が怒るって思わなかった?」

「…思いました。」

「じゃあ何で来たの?」


その声は今までにないぐらい低くて、言い方だって突き放したような感じで…

今の恭弥は普段からは想像もできないほど…怖かった。

でも、私にだって言い分はある!

こうやって怒られるなってのはある程度覚悟してきたし、怒られるの嫌だなって思ったけど、それでもやっぱりケガを治してあげたいって思ったから!

その気持ちを何とか伝えようと、私はいつの間にか下を向いていた顔をグッと上げた。


「確かに1人で来るの危ないなって思ったし、恭弥に怒られるだろうなとも思ったよ!でも…!」

「でも、何?」

「でも……それでも恭弥のケガ、治療したかったから…」

「それでスズが危険な目に遭ったらどうするの?」

「うっ…それは…」

「今回はたまたま無事にここまで来れたけど、いつもそうなるとは限らない。

 こんな風に、スズが自分の身を危険に晒してまで助けに来てくれても…僕は全然嬉しくない。」


さっきまでの意気込みが嘘みたいに、私はまた下を向いていた。

恭弥の言うことはもっともだ。

漫画で見てるから先のことを知ってるって安心してたけど、もし私が来た時点でこの世界の未来が少し変わってたとしたら…

そうだとしたら、予期せぬ出来事や思わぬ展開が起こったかもしれない。

それで捕まりでもしたら、恭弥を助けるどころかツナや皆にまで迷惑をかける。

自分の行動の浅はかさに、こんなに呆れたことはない。

これは完全に私が悪い。謝ろう…!

そう思って、私は謝罪の言葉を口にしようとしたんだけど…


「…ごめんなさ「嘘。」

「へ?」


謝ろうとした途端、恭弥に遮られて。

おまけに今…彼に抱きしめられている。

何?一体何が起こったの!?


「あ、あの…恭弥、嘘…って?」

「今の"嬉しくない"ってやつ。本当は今……すごく嬉しい。」

「う、嬉しい…?」

「うん。僕が止めても、スズが必死になってここまで来てくれたこと。

 救急箱持って、僕を治そうとしてくれたこと。それと…今こうして、僕の腕の中にいてくれることが…すごく嬉しいんだ。」


恭弥はそう言って、抱きしめる力を少しだけ強くした。

てか"嬉しい"って本当…?

さっきまでメッチャ怒ってたじゃん…!


「んー別に怒ってるつもりはなかったんだけど。スズのこと心配してただけで。」

「じゃあ…すごく心配してくれてたから、ちょっと言い方がキツくなっちゃった、って感じ?」

「うん。」


恭弥は抱きしめていた力を緩め、私と目線を合わせながら穏やかな顔でそう言った。

そこには、さっきまでの冷たい感じの彼はいなくて…

あれがこの子なりの心配の仕方なんだって、信じることができた。

でも何にしても…


「良かった〜…」

「ん?何が?」

「…いや、今回のことで私嫌われたなって…思ったから。」

「!」

「もう今までみたいに話せないんだな〜って、すごく怖くなったわけです。」

「…僕がスズのこと嫌いになるわけないでしょ?」

「え…?」

「スズのそういう危なっかしいところ…僕、嫌いじゃないし。」


涼しげに微笑む恭弥は、相変わらずキレイで…!

こんな状況だけど、思わず見惚れてしまった。

…って、そうだ!!私、治療しに来たんじゃん!

見惚れてる場合じゃないっつの。


「ごめん、恭弥!治療しないとだよね…!」

「いい。」

「え?」

「僕の治療はいいから、早くここから逃げて。」

「何でよ!さっき治療しに来てくれたこと嬉しいって言ってくれたじゃん!」

「でも治療していいとは言ってない。」

「きーっ!!」

「唸ってもダメ。…さっきからこの部屋の外で人の気配がするんだ。

 だからいつ敵が入ってくるか分からないところに、スズをこれ以上置いておくわけにはいかない。」


"それにスズがケガしたら、誰が僕の治療してくれるの?"

さっきまで真剣な眼差しで私を説得していた恭弥は、そう言った後で少し表情を緩めた。

その顔を見たら、何も言えなくなっちゃって…

恭弥が私のことを思って言ってくれてるって分かるし、私だって彼の足手まといにはなりたくない。

だから何もできない自分に落ち込みながらも、私は彼の言葉に従うことにしたんだ。


「…分かった。」

「ん、いい子。」

「でも!…必ずまたここに来るから!!だから…それまで絶対無事でいること!分かった?」

「! ふっ…はい。」


その時。

じゃり…と、誰かが石を踏む音が聞こえた。

このタイミング、この場面で現れるとしたら…間違いなく骸さんだ。


音を聞いた途端、恭弥の顔が一気に険しくなって、私にすぐここを出るように言った。

自分の心臓のバクバク加減に驚きながらも、私は荷物をまとめ静かに部屋の出口へ…


「スズ。」

「ん?」

「…来てくれてありがと。」

「! …次来る時まで、絶対無理しちゃダメだからね!…私の治療が大変になるんだから。」

「ふふっ…分かってる。スズも気をつけるんだよ。」


そして頭を撫でてくれた恭弥に送り出されて、私は黒曜センターを後にした。

"必ずまた助けに来る…!"

そう心に誓って、私はツナと合流すべく並盛へ走った…



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