隼人の頭を庇いながら、ツナと一緒に柿ピーと向かい合う私。
「早く済まそう。」
そう言ってヨーヨーを動かす彼は、相変わらず冷たい目でこちらを見ていて…
まるで金縛りにあったみたいに恐怖で体が動かない私達は、彼に対して何の抵抗もできないでいた。
そしてついに柿ピーが目にも止まらぬ早さでヨーヨーを放った瞬間!
ツナの叫び声の後に聞こえてきたのは、この場に不釣り合いな明るい声だった。
そこで私は気づく。
あぁ、そうだ…やまもっちゃんが来てくれるんだったね。
標的29 脱獄囚
「すべりこみセーフってとこだな!」
「山本ぉ!」
「結局、学校半日で終わってさ。通りかかったら並中生がケンカしてるっつーだろ?獄寺かと思ってよ。」
「(た、助かった…)そーだ!獄寺君が!!」
「ああ、わかってる…スズも平気か?怖かったよな。」
「やまもっちゃん…!」
「もう大丈夫だからな!にしても、こいつぁ…穏やかじゃねーな。」
青ざめた表情であろう私に優しい笑顔を向けてくれた後、一転して表情を変えるやまもっちゃん。
それはいつもの爽やかなものではなく、漫画で見た以上に怒った顔だった。
そんな彼の見慣れない姿に驚いていた私とツナを他所に、柿ピーは…
「邪魔だ。」
ボソっと呟きながらこっちに向かって投げられたヨーヨーを、やまもっちゃんは愛用の刀でいとも簡単にぶった斬る。
その行動を見て彼が自分の獲物ではないと分かったのか、突如柿ピーは重い体を引きずりながらどこかへと去って行ったんだ…
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場所は変わり、今私達は並中の保健室にいる。
柿ピーがいなくなった後、一刻も早く治療を受ける必要があった隼人をここに運んだのだ。
本当は病院に行こうと思ってたんだけど、タイミング良く登場したリボーンに"病院は危ない"って言われて…
事情が事情だし距離的にも近いってことで、並中が選ばれたってわけ。
そんな保健室でDr.シャマルに初めて会ったり、ポイズンクッキングを生で見たりして本当なら嬉しいはずなんだけど…
ベッドに寝ている隼人を見ると、そんな気持ちもなくなってしまう。
漫画で見て先を知ってるから、すぐに目が覚めるって分かってる。
でも…やっぱりツラいんだ。
何故かビアンキとやまもっちゃんがケンカしてたり、Dr.シャマルが殴られてたりで周りは騒がしいんだけど…
ベッド脇に座る私の周りは気持ち悪いぐらいに静かだった。
まるで自分以外の人や物の動きが止まっちゃったような、そんな感覚。
それからしばらくして、ツナ達が部屋から出て行く音が聞こえた。
その音で意識を戻し周りを見渡せば、保健室にいるのはビアンキと私の2人だけになっていた。
「…ビアンキ。」
「ん?どうしたの?」
「…ごめんね。隼人にこんなケガさせちゃって。」
「何で謝るの?スズのせいじゃないわ。」
「でも…ケガした時、私近くにいたし。」
まともに顔を見れず下を向きながらそう言う私を、ビアンキは優しく抱きしめてくれた。
私は1人っ子だから本当のところはどうか分かんないけど、お姉ちゃんがいたらきっとこんな感じなのかもしれない。
「大丈夫よ、スズ。隼人はすぐに目を覚ますわ。だから…笑って?」
「え?」
「スズがそんな顔してちゃ、みんな元気なくなっちゃうわ。それに私、スズの笑顔大好きなの!だから…ね?」
「ビアンキ……うん、そうだね。辛気臭い顔してたら、治るもんも治らないよね…!」
「ふふっ…やっぱりスズはそうでなくちゃ。」
「ありがとっ!ビアンキ!」
「いいえ。じゃあ…隼人のことお願いね。これこの子の着替えだから、起きたら渡して?」
「あ、うん。でも…ビアンキ行っちゃうの?」
「ええ。スズが傍にいてくれれば、私も安心だもの。」
そう言ってふわっと笑ったビアンキは、着替えが入ってる紙袋を渡して保健室を出て行ってしまった。
残った私はといえば、またベッド脇に腰を下ろして、隼人の目が覚めるのを待つことにしたんだ。
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