結局あの後、私は写真の真ん中にいる男性の名前を言うことができなかった。

言ったら未来を変えることになるかもしれないし、物事を知るタイミングも私が操作しちゃいけないと思ったから。

だから気持ちをムズムズさせながら、私は静かに皆のやり取りを見守っていたんだ。





標的32 ビアンキ vs. MM





と、そんな中で1人元気のない少年の姿が…

そっと近づけば、その少年は何とも浮かない表情をしていた。


「…ツナ?」

「! あ、スズ。」

「元気ないけど…大丈夫?」

「……オレ、また全然動けなくて…山本にもケガさせちゃったし…こーゆーシチュエーション、本当むいてないなって…思ってさ。」

「……いいんだよ、それで。」

「え?」

「こんな状況になんて、向いてなくていい。ツナ達はまだ中学生なんだから…!」

「スズ…」

「ツナは…それでいいの。」

「うん…!ありがとう、スズ。」

「いえいえ…!」

「ふふっ。何かスズが笑ってると、いろいろ大丈夫な気がしてきたよ。」


そう言ったツナの顔には、いつも通りの笑顔が戻ってて…!

これからまだまだ続くツラい戦いの中で、自分が笑顔でいることの大切さを、この時私は改めて感じたんだ。

そんな感じで私達が穏やかな空気を作り出していると…

不意に、さっき武が落ちた穴の下から声が聞こえてきた。


「ププッ!めでてー連中だぜ!!」

「「「!」」」

「アニマルヤローだ。」

「さっき完璧に気を失ってたのにー!」

「ひっかかったなー!おまえ達に口割らねーために、オポッサムチャンネル使ったんだよん!!

 でもよーく考えてみたら、おまえ達に何言っても問題ないじゃん!ぜってー骸さんは倒せねーからな!!全員顔見る前におっ死ぬびょーん!!」

「んだと!砂まくぞコラ!!」

「砂って、可愛いな〜隼人。」

「う、うるせっ!」

「そうよ、甘いわハヤト。」


言うが早いか次の瞬間、手に持っていた大きめの石を穴の中へと落とすビアンキ。

そしてゴッという痛々しい音と共に、犬ちゃんの頭へ石が激突した。

…うん、やっぱり女って強いよね。


石が直撃した犬ちゃんがどうなってるか見るために、私が穴の中を覗いていると、

周りのメンバーが移動のために準備している気配がした。

そろそろこの場所を離れなきゃいけない。

それはつまり、ケガをした犬ちゃんをここに放っておくということ…


今穴の下にいる彼は明らかに気を失っていて、こめかみからは結構な出血をしている。

もちろんこのまま放っておいても死にはしないし、縛っておけばツナ達の邪魔をすることもない。

それに彼が武を傷つけたことは事実としてある。

でも…


「スズ。」

「あ、武。」

「そろそろ行くぞ?」

「…うん。」


犬ちゃん達の過去を知っている身としては、彼らを100%悪者とは思えないんだ。

だから武の後ろについて歩くこと数分…

私は皆の目を盗んで、犬ちゃんがいる場所へと戻っていた。



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