校舎を出た無陀野と生徒達は、学校から約12キロ離れた場所にある"神羅の森"へとやって来た。

森を囲むように立っている金網状の柵には、侵入禁止と書かれた板やKEEP OUTのテープが貼られ、ご丁寧に鎖まで巻きつけてある。

そんないかにも入ってはいけなそうな森で、鬼による鬼ごっこが始まろとしていた。





第5話 成し遂げたいなら、勝ち続けろ





「ここは島の南にある"神羅の森"。学校まで直線で12キロ弱だ。鬼ごっこのルール説明をする前に、お前らに伝えておくことがある。…スズ」

「! はい」


突然名前を呼ばれ手招きされたスズは、驚きながらも小走りで無陀野の傍へ駆け寄る。

そうして隣に来たスズの肩に手を置き、彼は彼女について話し始めた。


「こいつは血の特性上、救護専門である援護部隊への配属が決まっている。他の部隊に比べて、ここは戦闘能力が格段に低い。

 桃太郎はもちろんだが、戦闘向きの血を持った鬼の相手も危険を伴う場合がある。よって今回の鬼ごっこを含め、一部の訓練には参加できない。

 代わりに、いざという時のお前らの治療および俺のアシスタントとして動くことになる。そこを頭に入れておけ。スズも、いいな?」

「はい、分かりました…!」

「やっぱ天使は治療班なんだな!」

「四季…!」

「ん?…あ、ヤベ」


またもスズのことを天使と呼び、本人に注意を受ける一ノ瀬。

他の生徒達が少しザワザワするのを、スズは気まずそうに聞いていた。

そんな空気を察し、無陀野は"戻っていいぞ"とスズに告げると、続けて鬼ごっこの説明に入るのだった。


「1時間以内に、俺に捕まらず学校へ戻れ。今から俺は敵だ」

「普通だな」

「1つルールがある。ゴールするには、これが必要だ」


そう言って無陀野はポケットからボールを2つ取り出すと、森の中へ勢いよく投げ入れた。

遥か遠くへ飛んでいくそれを見ながら、"ボールを持ってないとゴールしても無効だ"と最後に付け加えた。

そんなに難しいルールではないのだが、一ノ瀬は途端に頭を抱え始める。


「(ヤバい…ルール覚えられるか不安だ…)」

「つまり先生から逃げつつ、同級生とも競うってことですね!」

「そう。ちなみに言っとくが…ゴールできなかった奴は"即退学"だ…1」

「は!?退学!?」

「最低3人は退学になる…2」

「んなすぐ退学ってわけわかんねぇよ!」

「わかれ。ここが普通の学校と思ってるなら1回死ぬか?

 この鬼ごっこは突発的なメンバーでも連携をとるための訓練だ。判断力・統率力・決断力を養う。

 こうやって戦いを学び、卒業後お前らはそれぞれの部隊に入り、最前線で桃太郎機関と戦うことになる。

 無論、命懸けだ。こんな所で躓く奴は消えてもらう」


今日入学した生徒達に対しても、無陀野は容赦なく厳しい言葉を使う。

それほど鬼と桃太郎の戦争は激しく厳しいものであり、一度戦場に出れば常に死を覚悟しなければいけないのだ。

援護部隊であるスズですら、それは例外ではない。

即時治療のため、戦闘部隊と共に前線に出ることもあると聞いている。

首に下げているネックレスをギュっと握り締め、スズもまた決意を新たにするのだった。



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