無陀野が電話をしている頃…

教室に頭から突っ込んだ一ノ瀬と、外れたドアを直そうとしていたスズは揃って室内の同期を見渡す。

一ノ瀬を入れて男は5人、女子はスズを入れて3人…計8人が今年の新入生だった。

それぞれ離れて座っており、一切の会話がない教室は和気藹々な雰囲気とは程遠い。


「(随分ピリピリしてるな〜やっぱり四季みたいなタイプがレアなんだろうな)あれ?四季、何か手に血ついてない?」

「え?うわ!鼻血出てんじゃん!ダサッ!天…じゃなくて、スズ〜ティッシュ持ってる?」

「ごめん、持ってないや…」

「いいよ!誰かティッシュ持ってねぇ?なぁお前!お前ティッシュ持ってんだろ?マスクしてるし、花粉症とかだろ?ティッシュちょうだい!」

「話しかけるな」


黒マスクをつけた金髪の少年…名を皇后崎迅。

彼に笑顔で話しかけた一ノ瀬は、その一言で一気にイライラモードに入る。

鼻血はそのままに、一ノ瀬は再び皇后崎に声をかけた。


「てめぇ随分な口きくじゃんか…」

「はぁ…」

「ん?ププー!お前ツノねぇじゃん!まだ覚醒してない赤ちゃんか?知ってっか?訓練で消したり出したりできんだぜ!」

「(あちゃ〜これは言い返されるぞ…)」

「こんなもん出してる奴は、ルーキー丸出しの馬鹿だろ」

「(おやまぁ…)」

「おい。その"馬鹿"ってのは、俺も含まれてんのか?」

「(え〜…ちょっと1人追加されたんだけど…先生、早く来て…!)」

「逆になんで含まれてないと思えるんだ?」

「男ならその喧嘩"買う"一択だろ」

「はは!やれやれ!」

「胃が痛い…胃がん?死ぬのか…」


一ノ瀬達の会話に追加で入ってきたのは、左眉にピアスをあけている目つきの鋭い少年…名を矢颪碇。

皇后崎の一言がさらに火に油を注ぎ、場は徐々にヒートアップしていく。

そこへ来て優等生っぽいメガネの少年…名を遊摺部従児、場を収めようと彼まで会話の中に入ってくる。

ようやくドアをはめ込んだスズは、もう限界だとばかりに4人の方へと歩き出す。

が、それは不意に腰に回された手によって阻まれた。


「! 無人先生…!」

「ドアありがとな。お前は席着いてろ。俺が行く」

「はい…!」


スズと小声で会話をし、無陀野は音もなく一ノ瀬と皇后崎の方へ向かって行く。

その様子を横目で見ながら、スズはピンク髪の大人しそうな女子の後ろの席へと着席した。


「俺の鼻血はもういいんだよ。お前の見下し感ムカつくんだよ」

「実際見下してんだよ、鼻血君」

「あぁ?」

「おい。ここに遊びに来た訳じゃないよな?」

「(あれ…?俺、机に座ってたよな…?)」

「(いつの間に後ろに…?)」

「どうした?そんな顔して。何か驚くことでもあったか?」


一切の気配なく皇后崎の背後を取り、一ノ瀬をイスに座らせた無陀野は、驚く2人を冷たく見下ろした。

無駄のないその言動に、スズは心の中で盛大な拍手を送っていた。

と、場の空気を読まずにまた一ノ瀬が言葉を発する。


「席替わる!コイツ嫌い!(スズの隣行こーっと)」

「そうか、仕方ない。本来今日は学校説明と案内だが…別のことをやるか」

「何すんだ?」

「お前ら鬼だろ?じゃあ"鬼ごっこ"に決まってるだろ」

「え?遊ぶの?」


緊張感が高まる教室内で、一ノ瀬だけが未だ呑気な表情のままだった。

これから始まる"鬼ごっこ"がどんなものか想像しながら、スズは無陀野を見つめていた。



to be continued...



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