猫咲・印南コンビと共に、一ノ瀬達より少し早めに雪山の麓へ到着したスズ。

午後になって気温がグッと下がり、天候は悪化の一途を辿っている。

思っていた以上に吹雪の度合いが強く、スズはカタカタと震える体を必死にさすっていた。

そこへ少し遅れて、無陀野・花魁坂コンビが到着する。

体を温めるため足踏みをしながら笑顔を見せるスズに、花魁坂はタタッと駆け寄った。


「あははっ!スズ、寒いの?」

「寒いです〜こんなに吹雪くって言ってましたっけ…」

「何かちょっと予報変わったみたいだよ。上着ちゃんと閉めときな?」


そう言いながらチャックを上げてくれる花魁坂に、スズは真っ赤な鼻でお礼を伝えた。





第40話 GO!GO!雪山 ー後ー





集まった5人は、生徒たちが来る前に最後の打ち合わせをササッと済ませる。

山頂待機の花魁坂が移動のため動き出そうとしたタイミングで、スズが4人に声をかけた。


「あの、すみません!1つ報告が」

「何だ?」

「自分の血の新しい使い方を見つけたんです!」


無陀野からの問いかけに明るくそう答えたスズは、練馬から戻って以来ずっと考えていた血の使い方を話し始めた。

彼女の血は、体の部位・臓器・血管…あらゆるものを生成することができる。

故に援護部隊として、負傷した鬼たちの治療を任されてきた。

その力が通信手段としても機能することに気がついたのだ。


「通信手段?」

「はい!見ていただいた方が早いと思うので、ちょっとやってみますね。無人先生、私の血を少し首元につけてもいいですか?」

「あぁ」


言いながら無陀野は少し屈んで上着の襟元を下げると、スズの方へ首元をさらした。

人間の急所の1つと言われる場所を何の躊躇いもなく差し出す彼の姿に、その場にいた3人は静かに驚きの表情を見せる。

敵に対してはもちろんだが、味方であってもそう簡単には見せない場所だろう。

彼のスズに対する信頼の高さが分かる光景に見入っているうちに、準備が整ったようだった。


「よしっ。じゃあ少し離れるので、先生はここにいてください」

「分かった」


無陀野から数m離れたスズは、そこで何やら口をモゴモゴと動かす。

と、次の瞬間…

無陀野は微かに目を見開いて、小さく右手を上げた。

周りの3人はその謎の動きに顔を見合わせる。


「ダノッチ?何してんの?」

「スズの指示だ。自分の声が聞こえたら、右手を上げてくれと言われた」

「へ?猫咲ニャンコたち、何か聞こえた?」

「いえ」「僕もです」

「俺にしか聞こえてない…そうか、ここに自分の発声器官を作ったのか」


その後戻って来たスズから、今の現象について説明が付け加えられる。

無陀野が言っていた通り、スズは自分の血をつけた場所に発声器官を作った。

だが口そのものを作ったのではなく、発声するという"機能"を作ったのだと。


「患者さんの腕を治してる時、無意識に腕を動かすっていう"機能"も作ってるなと思って…

 それなら、その機能"だけ"を作ることもできるんじゃないかと思って試してたんです」

「なるほど。機能は目に見えない…だから見た目はただ血がついてるだけということか」

「はい!」

「あっ!じゃあ耳の機能を作れば、ダノッチの声も聞こえるってこと?」

「そうなんです!まだ特訓中で、そんなに遠い距離はできないんですけど…いずれはスマホみたいに使えるようになるのが目標です」

「これなら桃に傍受される心配もないし、スマホのように手も塞がらない。複数人にいけるのか?」

「たぶんいけると思います」

「てことは、スズが中継役になれば皆で情報を共有したりもできるわけだ!」

「そういうことだな。俺の方から話しかけることは?」

「できます!血のところを叩かれるとその振動が私に伝わるので、それを合図に機能を生成します」

「…かなり使える。よく見つけたな。どの部隊にとっても、大いに役に立つ。ありがとう」

「いえ!少しでもお役に立てて良かったです!」


照れ臭そうに笑うスズに、大人組の表情も穏やかになるのだった。



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