生徒たちが出発してから3分後、いよいよ非常勤コンビが動き出す。
軽く手足を回して準備運動をする2人に、スズは声をかけた。
「波久礼先輩、幽先輩!吹雪強くなってきてるので、十分気をつけてくださいね…!」
「ありがとうございます。皆のために、全力で行ってきます」
「スズも風邪引かないようにあったかくしてるんだよ…ゲホッ!これ、時々話しかけるね…ガハッ!」
そう言いながら、首につけたスズの血を指さす印南。
隣で頷いている猫咲も含めて、今一度お礼を伝えてから、スズは彼らを送り出した。
第41話 印南
「よし、俺たちも行くぞ」
「はい!」
「まだ寒そうだな」
「寒いですよ〜先生は筋肉があるから寒くないんですかね?」
「かもな。スズはもっと筋トレに時間を使え」
「うへぇ〜苦手なんですよね…でも頑張ります!…さぶっ」
「……こうしたら少しはマシか?」
「え?」
問いかけた無陀野は、スズの体をふわっと包み込む。
筋肉質の男性という最も体温が高いであろう相手に抱き締められれば、当然の如く温かい。
だがそれ以上に、屋外でしかもまだ数百m先には非常勤コンビや同期がいる状況でのハグであることが、何よりスズの体温を上げていた。
顔が火照るのを感じながら"あったまりました…!"と伝えれば、無陀野は何事もなかったようにスズを解放した。
「確かに顔に赤みが戻ったな」
「は、はい!」
「また冷えたら言ってこい」
「(先生は純粋に私の体をあっためようとしただけなんだよね…心臓に悪いって!)」
「スズ?聞いてるか?」
「き、聞いてます!ありがとうございます!」
例の如く勝手にワタワタしてるスズを、無陀野は不思議そうに見つめる。
躊躇なくスキンシップをするようにはなったが、それによるスズの感情の起伏にはまだまだ鈍感な彼。
これが花魁坂のように鋭くなったら…と思うと、スズの体温はまた少し上がるのだった。
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同期たちや非常勤コンビが出発してから5分程経っただろうか。
無陀野と共に遠く離れた木の上から彼らを見守っているスズの元に、彼女の血を使った手段で連絡が入る。
相手は猫咲。無陀野の耳に入らないからと、話し方は裏モードだ。
「波久礼先輩!」
『聞こえてるか?』
「はい、バッチリです!私の声はどうですか?」
『クリアに聞こえてる』
「良かった〜!」
「スズ、波久礼がいる位置を聞いておけ。どのぐらいの距離まで通話できるのか確認しておいた方がいい」
「そっか!先輩、今どの辺りにいますか?」
『今は…スタート地点から2〜3kmってとこだな。前にあいつらが見えてっから、これから仕掛ける』
「分かりました。お手柔らかに…!」
『それはあいつら次第だ。…そうだ。俺の能力、ちゃんとメモっとけよ』
「了解です!お気をつけて!」
『おぅ。じゃあな、一旦切る』
会話を終えた直後、同期たちに動きが…!
輪を乱す矢颪とそれに応戦する皇后崎、そして目の前の口喧嘩を止めようとする一ノ瀬…が2人。
「四季が2人いる!!」
「あれが波久礼の能力、ライアーライアーだ。声も変えられて、人以外にも変身できる」
「すごい…!そっくりっていうか、もう同じですよ!」
「ただ身長は変えられないから、誰に変身するかは頭の使いどころだな」
「なるほど。でも使い方によっては騙し討ちもできるし、潜入捜査とかもいけますよね!」
「あぁ」
「波久礼先輩の能力があれば、いろんな作戦が立てられそうです!」
「…今スズがやってるように、あらゆる鬼の能力を把握してる奴は少ない。そういう点でも頼りにされるだろうから、しっかり記録しといてくれ」
「はい!」
2人がそんな会話をしている間に、猫咲は流れるような動きで一ノ瀬・皇后崎・矢颪を倒していた。
能力的に援護系だと決めつけていた3人は、猫咲の動きに翻弄され手も足も出ない。
「これが本物のナイフなら死んでますね。よかったですねーおもちゃで。最初なんで遊びました。次からは本物でいきますね」
「戦闘部隊じゃねぇのにこんな強いのかよ…」
「僕がいつ戦闘部隊じゃないって言いました?僕の能力が変身だから?心外だなー能力で判断するなんて。
こちとらバチバチの戦闘部隊だ、馬鹿野郎ぉ。ったく無陀野の野郎こんなことで呼び出しやがって。暇じゃねぇんだよ。
あんまり俺を舐めてっとよぉ…ニャン殺しちまうぞ、この野郎ぉ」
「ハードモードすぎだろ…」
一ノ瀬たちの修行は、まだ始まったばかりだ。
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