開始早々、猫咲に足止めを喰らう若人たち。
そんな中で皇后崎は自身の能力を発動し、猫咲の方へ攻撃を仕掛ける。
「お」
「どこ狙ってんだ!当たってねぇぞ!」
「当てる気でやってねぇよ!目くらましだ!今のうちに逃げるぞ!」
「なるほど!矢颪!何してんだ!逃げるぞ!」
「山頂ゴールなんてどーでもいい!こいつとやり合った方が強くなれんだろ!邪魔すんな!」
「何考えてんだ、バカ!」
「(あのバカ…!)」
またしても自分勝手な行動を取ろうとする矢颪に、皇后崎は怒りと呆れの感情でいっぱいになる。
矢颪のことなんかどうでもいい…
そちらに傾く感情をギリギリのところで繋ぎ止めているのは、出発前にスズから貰った言葉だった。
"1人じゃ絶対ゴールできないから…気にかけてあげて欲しい"
"迅が一番冷静で、周りがよく見えてると思うから。むしろ迅にしか頼めない"
皇后崎は惚れた相手に頼まれたことを途中で投げ出すような、そんな半端な男ではない。
気持ちを落ち着かせるように1つ大きく深呼吸をすると、彼は頭をフル回転させる。
「(スズ、大丈夫だ…お前との約束は必ず守る)ほっとけ!行くぞ!」
「は!?ほっとけねぇだろ!」
「手はある!ここにいたら全員終わりだ!」
「本当に手ぇあんだろうな…!」
皇后崎の指示で、一行は矢颪をその場に残して先に進む。
24時間以内のゴールが目標故、全員で猫咲を相手にして時間をロスするのが一番避けたいことだ。
おまけに相手はもう1人いる。
非常勤コンビが揃ってしまえば、さらなるタイムロスは避けられないだろう。
「遊摺部!」
「は…はい!」
「お前の能力であのバカを見失わない様にしろ!それと先公2人の位置も確認しろ!場所さえ分かればどうにかなる!」
「そーゆうことか!」
「先公どもは俺らを倒すんじゃなく、あくまでゴールの邪魔が目的!
重要なのはいかにかいくぐるか!相手したらあっという間に時間切れだ!じゃなきゃ最初の時に倒してるだろ!」
「た…確かに!」
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「迅の判断はどうですか?先生」
「…悪くない。以前より冷静に状況判断できるようになってるな」
「はい!練馬の一件から、すごく良い方に変わりましたから」
「お前のお陰かもな」
「いえ、そんなことないです…!元々持ってた優しい性格が表に出てきただけですよ」
「そうか。…だが状況は常に変化していく。いつまで冷静でいられるかな」
と、このタイミングでもう1人の先輩から連絡が入る。
一ノ瀬たちの相手をしながら、しっかりスズの実験にも付き合ってくれる彼らはやはり相当なやり手だ。
『スズ、聞こえてるかな?』
「幽先輩!大丈夫です!私の声も届いてますか?」
『うん、バッチリさ!ゴブッ!』
「先輩は今どの辺りですか?」
『んースタートしたところから5kmぐらいかな…ゲホッ!』
「5km…もうそろそろ皆が来る頃かもしれないです」
『うん、素晴らしい見立てだ!ゴホッ!今目の前に来た』
「(頑張れ、皆…!)じゃあ一旦切ります。よろしくお願いします!」
『任せなさい!ガハッ!』
そうして会話を終えると、スズは無陀野と共に現場の方へ視線を向ける。
一ノ瀬たちと向かい合った印南は、自身の能力・双又ノ綻を発動した。
血で出来た2人の人間が現れたかと思えば、その片方が大きな障子を造り出し、持っていた剣を間に突き刺す。
それを引き金にして中から巨大な手が出現し、親指・中指・薬指をデコピンのように弾いた。
使い手の見た目と反した、もの凄い威力で辺りの森を抉る大技に皆が度肝を抜かれた。
「当たらなきゃなんてことねぇ!大丈夫大丈夫!とにかく1回撤退しとこうぜ!
あいつ足遅そうだし、逃げれんだろ!屏風ヶ浦立てるか?」
「は…はい…」
先程の猫咲と同様、相手にすればそれだけ時間を取られる。
辺りが暗くなる前に少しでも距離を稼いだ方がいい。
そう全員の意見が一致し、彼らは再び走り始めた。
が、走り出してすぐに事件が起こる。
雪と吹雪で周りが見えづらい中で走っていた影響で、崖に気づかなかった屏風ヶ浦が宙に放り出された。
いち早く事態に気づいた一ノ瀬が服を掴むものの、勢いそのまま2人は崖下へと落ちて行ってしまう。
「無人先生、四季と帆稀が…!助けに行かないと!」
「待て、少し様子を見る。これも修行の一環だ」
「……はい」
無陀野の言うことも分かる。
それでもやはり同期のことが心配なスズは、両手をギュっと握り締めながら言葉を返すのだった。
to be continued...
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