一ノ瀬と屏風ヶ浦が落ちていった崖下を、呆然と見つめる皇后崎たち。
自分たちも下に行って合流するか、それともこのままゴールを目指すか…
司令塔である皇后崎は、最適解を見出すため必死に頭を回す。
だがそれを邪魔するように、印南が再び彼らの前に現れた。
第42話 予定外 / 強さへの道すじ
目の前でトラブルが起きていようが、そんなことはお構いなしに攻撃を仕掛けてくる印南。
容赦のない相手を前に、皇后崎は1つの決断を下した。
「逃げるぞ!」
「え?でも…!」
「下の2人が負傷してたらアウトだ!負傷者をかばいながら先公を相手にすれば、それこそ時間を削られる!
バカ四季なら意地でも山頂へ向かうはず…それを信じるしかない!先公が下へ行かないように引きつけるぞ…!」
「なるほど…!」
皇后崎の的確な指示を受け、遊摺部・手術岾・漣は走り出す。
チラリと印南の方へ視線を向けてから、殿を務める皇后崎もまた走り出すのだった。
そんな同期たちの様子を見つめるスズの表情は不安でいっぱいになる。
印南に追われるメンバーの状況、落下した一ノ瀬と屏風ヶ浦の安否、矢颪と猫咲の戦況…
気にかけることが山積みで、何からしたら良いか分からずテンパるスズに、無陀野は静かに話しかけた。
「スズ」
「は、はい!」
「まずは落ち着け。お前が取り乱せば、状況はもっと悪くなるぞ?」
「そう、ですよね…すみません」
「スズの目から見て、一番危ないと思うのはどこのグループだ?」
「…先頭グループには迅がいるから、何とかしてくれると思います」
「ん」
「帆稀のことは、四季が絶対守ってくれるはず」
「…となると、気にしてるのは矢颪だな」
「はい…出発前から少し荒れてたし、皆とも上手くやれてなかったので。あの状態で波久礼先輩に挑んでも、勝ち目はないと思います」
「…分かった。お前は矢颪のところへ向かえ」
「えっ、いいんですか?」
「あぁ。先頭グループの動きは想定内だから印南に任せる。四季と屏風ヶ浦は、俺と京夜でフォローするから心配するな」
「はい。ありがとうございます…!」
そう言って笑顔を見せるスズだったが、その手と体は少し震えていた。
他の誰でもない秘書のこととあれば、些細な変化も見逃さない無陀野。
"行ってきます!"と言って出発しようとしたスズの腕を素早く掴むと、自分の方へと引き寄せた。
「先生…?」
「少し震えてる。寒さか不安か…どっちだ?」
「…不安、かな。皆が無事にゴールできるって信じてるけど、やっぱりいろいろ心配です」
「…3つのグループを全て完璧に見守るのは俺でも難しい。目が行き届かなければ、それだけトラブルも起こるだろう。…でも俺にはお前がいる」
「!」
「スズに矢颪を任せれば、俺は残りの2グループを完全に把握できる。結果として、全員が無事にこの修行を終えられることになる」
「私に…先生の代わりが務まるでしょうか」
「務まるに決まってるだろ。誰が鍛えてきたと思ってる」
「ふふっ。そうですね!」
「抱えてる不安は俺が預かるから、何も考えず行ってこい。頼んだぞ」
「はい!」
体も心も温まったスズはいつもの明るい笑顔を無陀野へ向けてから、来た道を戻って行った。
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