一番乗りでゴールした一ノ瀬と屏風ヶ浦。

手早く2人の状態を確認した花魁坂はスズへ一報を入れると、早速治療を開始した。

屏風ヶ浦の骨折をサクッと治すと、続けて高熱で倒れている一ノ瀬の治療に入る。

症状は悪そうに見えたが、花魁坂の想定通り、鬼神の力も相まって彼はあっという間に復活した。





第44話 袋小路 / 連携





「復活!ありがとう!チャラ先!」

「相変わらず回復早いね」

「屏風ヶ浦!マジでありがとう!」

「え?」

「いでぇ!」

「お姉ちゃん!?」

「お姉ちゃん、そんなヴェ●ムみたいな感じでいんの!?」

「(どうりで親指回復しないと思った…)」

「姉ちゃんもありがとな!」

「(面白いな。血が単体で感情を持つなんて…)そうだ、スズが2人に"お疲れ様"って言ってたよ」

「スズが!?」

「ありがとうございます…!スズちゃんはまだ来てないんですね」

「うん。最後の子がゴールするまでは来れないと思う」

「そっかぁ…早く来ねぇかな〜」


眼下に広がる雪原を見つめながら、一ノ瀬はポツリと言葉を漏らす。

その顔は、見る者が見れば一発で恋をしていると分かるような、そんな優しい表情だった。


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では、彼が待ち焦がれているスズはと言えば…

吹雪の中、皇后崎と共に矢颪に肩を貸しながら足を進めていた。

支える人数は増えたが、2人よりも背が高く、かつ意識がない状態の矢颪はなかなかの重量がある。

雪に沈み込む足は、最早感覚がなかった。


「スズ、平気か?」

「私は全然…!迅の方こそ大丈夫?私の負担、軽くしてくれようとしてるでしょ?」

「そんなことない。重さは半分ずつだ」

「(絶対嘘だ。碇君の体重がこんなに軽いわけないもん)…ありがとう。優しいね」

「…普通だろ」


そう言った皇后崎の顔がほんのり赤く見えたのは、スズの見間違いではないだろう。

そんな2人の会話が聞こえたのか、不意に真ん中の彼が目を覚ました。

すぐに自分が抱えられていると分かり、険しい表情で手を振りほどく矢颪。

突然の動きに驚いたスズは、足場の悪さもあってその場に尻もちをついた。


「うわっ!」

「! スズ…」

「大丈夫か?…おい、スズ突き飛ばしといて何もなしかよ」

「…」

「違う違う!私がちょっとバランス崩しただけだから!大丈夫!」


スタート前のような一触即発の空気を感じ取り、スズは慌てて言葉を発する。

手を貸してくれた皇后崎にお礼を言いながら立ち上がる彼女を見て、矢颪はまた気まずそうに顔を伏せた。

だが1つ大きく息を吐くと、キッと皇后崎を睨みつける。


「あの野郎はどこだ!?」

「猫野郎か?撒いたよ」

「テメェ!なんで邪魔しやがった!」

「邪魔?そりゃテメェだろ。何焦ってんのか知らねぇけどな、勝手に突っ走っていい迷惑だ」

「碇君も迅も、一旦落ち着いて…!」

「誰が焦ってるだ、コラ!」

「どう見ても焦ってんだろ」

「俺からしたら焦らねぇ方がどうかしてんだよ!こんなぬるいことやってて、強くなれると思ってんのか!?

 別にあいつらが困ろうとどうでも…いってぇ…にしてもお前も丸くなったな。

 前はあんな尖ってたのに、今は仲間ができて角が削れたってか?ダセェんだよ」

「そんな言い方…」

「別に俺だってあいつらを鬱陶しいと思ってるよ。…けど、悪くねぇとも思ってる。守りたい相手もできたしな」


落ち着いた表情の皇后崎は、静かに視線をスズへと向ける。

入学初日の彼からは想像もできないような優しい眼差しに、スズは自分の顔が熱くなっていくのを感じた。


「それを丸くなったって受け取るかは好きにしろ」

「…ふん。なんだよそれ…」

「(あれは…波久礼先輩!?)碇君!!」

「! 後ろ!」


スズと皇后崎の必死の叫びは間に合わず、岩に変身していた猫咲によって矢颪は足に続き右腕も負傷してしまう。

よろける矢颪の元に駆け寄ったスズは、すぐさま猫咲と距離を取った。

変身をとき姿を現すと、彼は相変わらずの余裕っぷりで後輩たちに話しかける。


「ははは。調子はどうよ?これで右の手足は負傷」

「(くそ…怒鬼怒氣の1日の限度数3回使っちまってんだよこっちは…)」

「碇君、大丈夫!?待って、すぐ治療するから!」

「スズ〜そいつらに手貸してるってことは、お前も修行に参加してるってことでいいのか?」

「はい。それでお願いします!」

「じゃあ無陀野の秘書のお手並み拝見といきますか」

「させねぇよ。お前の相手は…俺だ!」


スズの前に手を出した皇后崎は、そう言って走り出した。



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