スズに代わり、猫咲の方へ向かって行く皇后崎。
だが次の瞬間、彼の左足が何者かに撃ち抜かれた。
視線を向ければ、そこには相変わらず口元から血を流している印南がいた。
「幽先輩…!」
「少年よ、困難の時間だ…ゲホッ!大丈夫!必ず乗り越えるという魂がある限り!君たちの心は死なない!ゲホッゴハッ!」
「テンションたけーな。印南!スズも俺らの相手になったらしい」
「そうか!体術はなかなかのレベルだと聞いてる!手合わせ願いたい!ガハッ!」
「(マズい…最悪だ…!2人いっぺんにカチ合っちまった…!俺と矢颪は足を負傷。スズの治療…を受ける隙はねぇよな。どーする…!?)」
ゴール目前になって、ついに非常勤コンビが揃った状態で相対してしまった3人。
次の行動を迷っている皇后崎に構うことなく、印南は自身の巨大な手で彼らをスタート地点まで吹き飛ばそうとしていた。
このタイミングでスタートまで戻されれば、体力的に厳しいのはもちろんのこと、時間内のゴールも危うい。
だが巨大な手の溜めが終わり、今にも指が弾けようとしたその時…!
突如その手が撃ち抜かれ、爆発したように飛散した。
「(方向的には…いやいやありえねぇ…この強風吹きすさぶ吹雪の中、5キロはあるこの距離…
吹雪で視界も悪い…あそこからなわけねぇ…そんな所から撃ち抜くなんて芸当…できるわけねぇ…できたら異次元だ…!)」
「(今の四季がやってくれた!?すごい!もうこんなレベルまで来てるなんて…!)」
「(あの位置から攻撃したのか?たぶん四季だよな…)くそ…腹立つ奴だぜ全く…」
3人を助けたのは、ゴール地点にいる一ノ瀬だった。
以前よりも格段に精度の高くなった銃を造り出した彼は、持ち前の射撃術を使って印南の手を撃ち抜いたのだ。
その場の全員が唖然として立ち尽くす中、スズは小さな声で隣に立つ皇后崎に話しかける。
「…迅、前向いたまま聞いて」
「! …あぁ」
「2人を治す時間はないから、先輩たちの気が逸れてる隙に、とりあえず迅の足だけを治す。そしたら一緒に碇君を抱えてゴールに向かおう」
「そんなに早く治療できんのか?」
「当然!これが本職ですから。任せて!」
ニッと笑顔を見せたスズは静かに体勢を低くすると、血を解放して皇后崎の足に自身の手をかざした。
視線は前にいる非常勤コンビに向けたまま、1分もかからずにスズは治療を終えた。
その圧倒的なスピードに、皇后崎は周りの状況も忘れ、思わず隣の同期を見つめる。
自分で本職と言っていただけあって、治療に関しては本当にスペシャリストなのだと思い知らされた。
「すごいな…」
「ふふっ。ありがとう!普通に動く?」
「うん、元通りだ。ありがとな」
「いえいえ」
「…1つ聞きたいことがある」
「ん?」
「何で俺の治療を優先した?」
「それは…ゴールを目指すってなった時に、碇君が素直に付いてきてくれるか分からなかったから。
先輩たちがいる中で、さっきみたいな仲間割れをしてたら絶対に勝ち目はない。
ゴールへの最短ルートは、迅を動ける状態にして、碇君を抱えるスタイルだと思った」
「(それをあの短時間で判断したのか…)なるほどな。俺もそれが最短だと思う。でもアイツを抱えるのは俺だけでいい」
「え?」
"俺に考えがある"
意味が分からずキョトンとするスズに、皇后崎はそう言って靴を脱ぎ始める。
そして足裏に丸ノコの刃を造り出すと、それで雪を削りながら走り出した。
途中で矢颪のフードを掴めば、案の定相手は噛みついてくる。
「放せ、テメェ!」
「放すか、バカ!スズ、ついて来れるよな!?」
「もちろん!」
「(皇后崎の足が治ってる…スズのやつ、いつの間に治療した?あいつらから目離したのなんて数分だ。んな早さで治せんのかよ!)
印南!とにかく狙撃に注意しつつ、お前の能力であいつら止めろ!俺が捕獲する!このままゴールさせてたまるか!」
暴れる矢颪を皇后崎が引っ張り、スズが背後の状況を伝えながら追いかける。
さらにその3人を守るように、ゴール地点から一ノ瀬が射撃で援護。
即席のフォーメーションだが、彼らは見事に猫咲・印南を圧倒していた。
ゴールまで、あと3キロ…!
to be continued...
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