東京タワーに臨む場所に、それはそれは立派な桃太郎機関のビルが建っている。

練馬での激闘から数週間が経ち、ビル内もようやく落ち着きを取り戻していた。

その最上階にある大広間に、月詠・桜介・神門・蓬の姿がある。

彼らの前には、包帯でグルグル巻きになった気味の悪い人形のようなものが5体並んでいた。

どれも口が大きく開いており、そこに内蔵されたスピーカーからここにはいない人物たちの声が聞こえてくる。





第46話 新たな血





並んで座る5体の人形から発せられる話題は、最近現れた"鬼神の子"…一ノ瀬四季について。

自分たちにとって脅威となる前に、長く続く戦争に終止符をうつために、彼の存在をどうにかしなければならない。

そこで一ノ瀬と相対した月詠たちを呼び出し、話を聞こうというわけだ。

それに対し神門が、無陀野との会話をベースにした自分の考えを披露する。

それを一通り聞き終えた"大皇帝"と呼ばれる人物は、納得したように話を区切った。


『若い者の意見は大事だ…一度議題に取り上げよう』

『大皇帝様…!』

「ありがとうございます」

『さて、次だが…生け捕り対象になっている"木下スズ"は、今どういう状況かな?』


スズの名が出た瞬間、分かりやすく反応した神門と桜介。

どちらも彼女に対して、少しだけ特別な感情を抱いている。

シンと静まった場で最初に口を開いたのは、意外にも桜介であった。


「……もうあいつに関わんな」

「桜介」

『どういうことかな?』

「スズを生け捕りにしてどうすんだよ。自分たちの体を治療させんのか?させねぇよな?

 テメェらみたいな考え方の奴が、鬼に体を触らせるわけねぇ。捕まえたところで、どうせロクな扱い方しねぇだろ。だから手引けって言ってんだよ」

『貴様!さっきから何だその物言いは!』

『今の君の発言は、木下スズを守ろうとしているように感じるが…そうなのかい?』

「…スズは俺らがもらう。そんだけの話だ」

『意図が分からないな。詳しく説明してくれないか』

「度重なる非礼、大変申し訳ありません。私の方からお話させていただきます。

 木下スズの持つ力は、治癒能力のない私たち桃太郎にとってとても魅力的です。常に戦いに身を置く者として是が非でも欲しい存在。

 しかし一方でそう思わない者達もいます。鬼ごときに治療される筋合いはない…と。

 そういう者達が彼女を生け捕りにした場合、当然扱いは雑になる。最悪言いつけを破って、そのまま殺してしまう可能性もあります。私たちはそれを避けたいんです。

 ご存知か分かりませんが、私たちの部隊は桃太郎機関の中でも戦いの機会が多い。彼女の力が必要なんです」

『ふむ…それが我々が手を引くということとどう関係する?』

「生け捕り命令は上からの指示。ですから現在、桃太郎機関全体がその指示を守って彼女を探し捕らえようとしています。

 しかし生け捕りの中止を宣言していただければ、先程申し上げたような彼女と関わりたくない人間が間引かれる。

 結果、本当に必要としている人間だけが彼女を追いかけることになります。その状況を作っていただきたいんです」


月詠の話を咀嚼するように、しばし無言の時間が流れる。

その後、大皇帝は"分かった"と一言呟いた。


『今の件についても一度持ち帰る。…今日の所は以上にしよう。遥々すまない。

 蓬君、神門君…隊長を失った君たちの配属先はもうじき掲示される』


大皇帝のその言葉で、場は解散の運びとなった。



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