広間を出て、廊下を歩く4人。
堅苦しい状況から解放され、桜介からは欠伸が漏れる。
「大皇帝、意外と柔軟だな」
「ありがたいことです」
「そうかい?僕には暖簾に腕押しに感じたけど。それより桜介」
「ん?」
「スズのことは慎重に進めようって言ったじゃないか。反感を買って、彼女に対してもっと強い指示が出たらどうするつもりだい?」
「…悪かったよ。あいつらからスズの名前が出たら、何かカッとなっちまった」
「いくら好きだからって、誰彼構わず噛みついてたら疲れるよ?」
「そういうんじゃねぇって言ってんだろ」
「木下スズって無陀野の秘書っすよね?好きなんすか?」
「だから違ぇって!!」
桜介と蓬がワーワーと言い合っていると、不意に月詠のスマホが音を立てる。
桃太郎機関から支給されているもので、緊急性や機密性の高い指示などが隊長宛に送られてくるのだ。
メールを見た月詠は、フッと口角を上げる。
「上手くいったみたいだよ」
「何が?」
「スズのこと。生け捕り命令が中止された」
「マジか!よっしゃ!これでバカ共に手出される心配はなくなったな」
「(良かった…スズに知らせてあげたいな。あ、四季君経由なら…!)」
神門の顔にも少し笑みが浮かび、4人の間に和やかな空気が生まれる。
だがそれも束の間…
掲示板の前に来た一行は、その内容に目を奪われた。
「はは!降格な上、鹿児島行きか!」
「やっぱりね。蓬君は東京、神門君は鹿児島と降格。露骨な嫌がらせだね。大皇帝様は君の話を聞く気はないみたいだ」
「ドンマイ、元エリート。言っとくが俺はテメェの意見にゃ反対だ、馬鹿野郎。戦う相手がいなくなるなんてつまんねぇだろ」
「鹿児島か…九州には強い鬼がいるって聞く。毎年多くの隊員が亡くなってるらしいよ。
君なら平気だと思うけど、生きてまた会えることを願うよ。占ってほしかったらいつでも言いなよ」
「ご愁傷っす」
一番後輩の彼に口々に言葉をかけながら、年上3人はその場を後にした。
残された神門は、他の隊員からの陰口をサラッと受け流して廊下を歩いて行く。
「別に僕は出世も地位も興味ない。やることはどこでも同じさ」
その目から光は失われていなかった。
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一方自分たちの持ち場に戻るべく、練馬へと向かっていた月詠と桜介。
部下の運転する車の中で、ふと桜介が言葉を漏らす。
「俺ってスズのこと好きなんか?」
「…何、急に。今さっき散々違うって自分で叫んでたよね?」
「そうなんだけどよぉ…何かよく分かんなくなってきた」
「はぁ〜…じゃあスズに会ってみれば?」
「会ったら解決すんのか?」
「するかもしれないし、しないかもしれない。会った時の自分の気持ちに従ってみればいいんじゃない?」
「自分の気持ちね〜」
「顔見た時に抱き締めたいとか、キスしたいとか、そういう風に想うのかどうか確かめてみなよ」
「お〜分かった〜。んで、そういう風に想ったら抱き締めていいわけ?」
「ダメに決まってるよね?いきなりそんなことしたら、そこら辺の変態と同じだから。
桜介はまず少女漫画とか読んで、女心を理解するところから始めた方がいいよ」
「めんどくせー」
女子高生みたいな会話をする上司2人に、運転席の部下は苦笑するのだった。
to be continued...
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