桜介や神門が上層部と話し合いをしていた頃、一方のスズ達はといえば…


「この間まで雪がっつり積もってたのに…」

「すっかり溶けちゃったね〜」

「あと63周だ」


鮮やかな緑が広がる学園のグラウンドで、学生らしく体育の授業中。

無陀野が見守る中、体力づくりのためひたすら走り込んでいた。

隣でぼやく一ノ瀬に返事をしながら、スズは少し前方を走る矢颪に視線を向けた。

慈愛に満ちたそのまなざしには、強い決意が宿っていた。





第47話 あばよ





「(もう碇君を1人にしない!まずはたくさん話をしなきゃ!)」


無陀野から自分にはない力を持っていると言われ、スズは気持ちを新たに矢颪と向き合おうとしていた。

命と未来は無陀野が守ってくれる。それなら矢颪の精神面は自分が守ろうと。

"頑張ります!"という思いで担任の方へ視線を移すと、彼はすぐに気がついてくれる。

"どうした?"と声が聞こえてきそうな表情で首をわずかに傾げる無陀野。

そんな彼に明るい笑顔を向ければ、それに応えるように無陀野も少し口角を上げた。

と、その時…

無陀野のスマホに1本の電話がかかってくる。


「何ですか、校長」

『面白いお客がこっちに接近してるから入れるねー』


そう言って切られたスマホを見つめた後、無陀野は気配を感じて空を見上げる。

まだ遠くて姿形はハッキリしないが、確かに何かが近づいて来ていた。

遅れて生徒たちも気配に気づき、走る足を止めて視線を上に向けた。

それから1分も経たないうちに、近づいてきた"何か"はグラウンドへと降り立つ。

スズたちの目の前に、血で構成された大きな鳥と、その上に乗っていた軍服姿の2人の男性が現れた。

固唾を吞んで不審な訪問者の言葉を待つ生徒たちだったが、発せられた言葉は意味を成していなかった。


「んんんーんんん!」

「え?なんて?」

「口パンパン…」

「あぶねー!ギリセーフ!俺の黒鳥の上で吐いてたら蹴り落としてたぞ!」

「ん!」

「あっちで吐け!…すんませんねーあいつ乗り物酔いひどくて」

「なんだ…?こいつら…」

「出会って即吐いた…」

「大丈夫かな…」


突然の出来事に全くついていけないスズたちを他所に、軍服を着た2人はまた何やらやり取りを始める。

どうやら片方が相当な方向音痴らしく、吐いた場所から戻って来れないようで…

相棒が捜しに向かい、場は一旦静けさを取り戻した。


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数分後、ようやく落ち着いた軍服コンビが改めて羅刹メンバーの前に姿を見せた。

口火を切ったのは、先程口をパンパンにしていた男だった。


「失礼した!お邪魔しますも言わずにお邪魔してしまったこと、お詫びしよう!」

「お詫びする所そこじゃねぇ」

「(ふふっ。面白い人たちだな〜)」

「その軍服…鬼國隊か」

「鬼國隊?」

「そうだ!鬼國隊大将・等々力颯!」

「鳥飼羽李っていいます」

「なんなんだ鬼國隊って」

「私も初めて聞きました」

「最近各地の桃の部隊を潰している鬼機関にも所属しない集団だ」

「そう!我々の目的は桃の完全抹消!1人残らずこの世から桃を根絶する!」

「(全然面白い人たちじゃないじゃん!思想が過激すぎる…)」

「そんな奴らが何の用だ?」


無陀野からの問いかけに、大将・等々力は一ノ瀬の名前を挙げる。

自分と同じ鬼神の力を継ぐ彼に興味があり、仲間として勧誘しようと遥々やって来たのだった。



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