海月の手を借りながら、複雑な隊服を何とか身につけたスズ。

自分の見慣れない姿にソワソワしていると、新たに2人の人物が拠点へと戻って来た。


「お!帰ってきたな」

「戻ったでー。ん?何か知らん顔が2つある。男の方は一ノ瀬か?」

「新しい仲間…じゃなくて同盟の矢颪だ!もう1人は付き添いのスズ!」

「"同盟"に"付き添い"?なんやそれ」

「待って。スズってさ…あのスズ?」

「そうだ!無事に保護できた!」

「あー!生け捕り対象の!無事やったか〜良かったな〜!」

「本当に。今まで怖い思いしなかった?」

「は、はい…!大丈夫です!」


顔に痣のある関西弁の不破真一と、小柄でクールな印象の囲岬。

笑みを浮かべた両名に顔を覗き込まれ、スズは緊張したように言葉を返した。

"あんま緊張せんと、リラックスしてな"とスズの頭を撫でようとした不破だったが、それを遮るように矢颪が間に入ってくる。

そしてキッと睨みつけると、またも喧嘩腰で話しかけた。


「お前誰だよ?」

「碇君!その感じで話しかけるのダメだって言ったでしょ!」

「彼は不破真一!彼が囲岬!」

「こっわぁ。んな睨まんといてぇや。…頭撃ち抜かれんで?」

「ひっ!弓矢!?」

「男で生意気とか最悪じゃん。生意気な人妻熟女なら最高なのに。あ、大丈夫だよ。スズには当てないから」

「(いや、碇君にも当てないで欲しいんですが…!)」

「何急にババアの話してんだよ?」

「あ…アカン」

「ババア…?」


ババア発言が逆鱗に触れたようで、囲は何の躊躇いもなく構えていた弓を引いた。

矢颪の頬を掠った矢は2回軌道を変え、再び彼に向かって来る。

意志を持ったように勢いを増して飛んでくる矢を、不破は左手1本で簡単に止めて見せた。


「あかんわ新人君、ババアとか言うたら」

「(あっさり止めた…!?)」

「ほんで岬も、人妻に手ぇ出したらあかんやろ。あとスズをあんま怖がらせんように」

「ごめんごめん。でも40歳以下は射程範囲外だよ」

「年齢より横幅やろ。体重3桁から恋は始まんねん」

「(こいつら…強い…!)」

「デブ専の言うことは理解できないよ。ね、スズ?」

「あ、私は、何とも…」

「お互い様や。なぁ?新人君」

「はは!触った感じ、矢颪は童貞だぞ!」

「え?自分、童貞なん?」

「スズー!ダッシュでこっちおいで?」


突然鳥飼に名を呼ばれたかと思えば、彼は焦ったように手招きをしている。

スズが小走りで駆け寄ると、"ちょっとごめんね"と言いながら耳を両手で塞がれた。

5分程そうされていただろうか。

耳を解放された時、何故か矢颪は百目鬼・不破・囲が作る輪の中心にいた。

戸惑う矢颪を他所に、3人はすこぶる楽しそうだ。


「活気づいてるな!」

「やかましいのが増えたんだよ…」

「あの、何で急に耳…」

「ん〜…ちょっと男子校みたいなノリの話だったから聞かせたくなくてさ。ビックリさせてごめんね」

「いえ…!碇君が少し打ち解けたみたいで良かったです」

「悪い大人に捕まった感じだけどね。…んで?研究所はあったの?」

「うん。立派な研究所が、華厳の滝があった場所に建ってたよ」

「偵察結果はどう?」

「あー…あの研究所なぁ…あっこに突入する日が、俺らの命日になるんかもしれんなぁ」


不破から発せられた不穏な言葉に、スズの心臓は一瞬だけキュッと苦しくなった。



to be continued...



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