「突入する日が命日になる?」
「まぁ順を追って話そか。
華厳の滝跡地に建ってる研究所…10階建てで桃の隊員数は4〜500人。屋上の飛行船が3機で何かの運搬用かな?」
「できれば見取り図とかあれば…」
「ありますよ」
鳥飼の呟きに答えた声。
それが鬼國隊メンバー最後の1人・蛭沼灯だった。
第49話 夜間飛行
不破がもたらす情報を愛用のノートにメモしていたスズが視線を向ければ、そこには怖そうな見た目に反して優しげな男性がいた。
見取り図入手の功績を褒められた彼は、自分ではなく"この子たち"が頑張ったのだと告げ、自分の腕を見せる。
と、何の変哲もない腕が突如膨らみ、中から小さなヒルがウニョニョと出てきた。
珍しいその光景に釘付けになっているスズ・矢颪コンビと軽く挨拶を交わしてから、蛭沼はヒルが得た情報を報告し始めた。
「この子たちが言うには、研究所各階に厳重な扉があるようです。
何の研究かは、その厳重な扉の先に行けばわかるかと。それと死体を運んでる現場を見たそうです…」
「死体?鬼?」
「おそらく…その死体はダストシュートに入れられて下の死体廃棄場に落ち、大きなミキサーにかけられる」
「えっぐ…」
「あの研究所は捕らえた鬼を使って何かを研究しているかと…
だから今彼女の名前が木下スズさんだと聞いて安心しました。無事で本当に良かったです」
「ありがとうございます…!」
「ならば囚われた鬼も解放しないとな!スズのこともそうだが、身勝手に鬼の命を扱うなど言語道断!」
「監禁場所は、先ほど言った厳重な扉のどれかかと…」
これで研究所の概要については把握できた。
続けて不破が、敵側の戦力について予想を立てる。
これだけ大きな建物なら、隊長が3人はいる可能性がある。必然的に副隊長も同数だ。
主戦力6人と隊員が4〜500人、対してこちらは僅か8人…
突入する日が命日になると判断しても仕方ないレベルの予測値だろう。
「(無闇に突っ込んだら、確かにこれは命日になるわ…)」
「行くこと自体死にに行くようなもんじゃねぇか…どうすんだよ?」
「「「関係ない」」」
何の躊躇いもなく声を揃えてそう言う鬼國隊メンバーに、問いかけた矢颪は驚きの表情を見せる。
自分達の目的のためなら、どんな不利な状況でも足踏みするわけにはいかないのだと、声を張り上げる等々力。
その強い眼差しには狂気すら感じられた。
そんな彼とは対照的に、鳥飼は冷静に作戦を話し始める。
「じゃあやることは鬼の解放と桃の殲滅。死体廃棄場のダストシュートから各階にバラけて侵入、そして隠密で進む」
「厳重な扉は?」
「問題ない。不破の能力で何とかなる」
「不破さんの能力ってどんなものなんですか?」
「おっ、興味ある?なら、あとで見せたるわ」
「お願いします!他の皆さんの能力も教えていただけないでしょうか。あと作戦についてももう少し詳しく…!」
「教えんのは全然かまへんけど、えらい熱心やな」
「いろいろ頭に入れておかないと…私、簡単に死んじゃうんです」
「「「!」」」
「基本治療しかできないので、皆さんの動きを把握してないと迷惑かけちゃうし。あ、でも!教えられる範囲で…」
「スズ!!」
「ひっ!は、はい!」
「大丈夫だ!お前は、俺たちが絶対に守る!!」
突然名前を呼ばれ、両手で肩を掴まれたスズに、等々力の真っ直ぐな視線が向けられていた。
込められた力から、彼がどれほど本気かが分かる。
少し視線をズラせば、他のメンバーも先程までとは違う強い眼差しをスズに向けていた。
「だからもうあんなこと言うな」
「…はい…ごめんなさい」
「ふっ。スズは素直で可愛いな!」
「えっ!?いや、全然、そんなことは…!」
「大将!スズ口説くのはあとにしろ。まだ話し合いの途中だから」
「分かった!あとにする!すまん!」
鳥飼の呆れたような声に反応した等々力は、謝る気持ちが微塵も感じられない満開の笑顔でそう言った。
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