引き続き、作戦会議中の鬼國隊メンバー。
と言っても計画の細部を話し合っているわけではなく、話題の中心は"スズをどうするか?"であった。
本人としては、ついて来た以上作戦には参加するのだろうと覚悟を決めていたのだが、先程の自分の発言で鬼國隊メンバーに迷いが出たようだ。
口火を切ったのはまとめ役の鳥飼だ。
「やっぱりスズは待機の方がいいか…」
「そうですね…生け捕り命令が出てる中で、敵地…しかも研究施設に連れて行くのは気が引けます」
「でも治療班がいるってのはでかいよなー!俺、そんなチーム編成で戦ったことねぇよ!」
「俺もや。めっちゃ心強いよな〜」
「サポートメンバーが増えるのは俺も助かるな」
「(自分の話ばっかりで気まずそうにしてるのもギャンかわ…!)」
「ていうか、これってそんな難しい問題?一緒に連れて行って、俺らが守ればいいだけの話じゃないの?」
「それはダメです!!」
今まで静かに会話を聞いていたスズの突然の大声に、直前に言葉を発した囲だけでなく全員が驚きの表情を彼女に向けた。
一斉に集まる視線にアタフタしながらも、スズは理由を話し出す。
自分が所属する予定の援護部隊は、傷ついた鬼を助けるためにいる。
他の部隊が、自分たちを守るために行動を決めたり、ましてやケガを負うことは許されないのだと。
「だから私は作戦の細かい部分まで把握してないといけないし、皆さんの能力も知っておきたいんです。
…私のことを気にかけて下さってとてもありがたいです。でも作戦を立てる時、私の存在は無視してください。
皆さんの邪魔にならないように、迷惑がかからないように、自分で考えて動きます!そういうことができるように、鍛えてもらってますから!」
「……スズさ、今自分がめちゃくちゃカッコいいこと言ってるっていう自覚ある?」
「へ?」
「ほんまそれな」
「そんな覚悟持った治療班とか最強だろ!」
「危険は承知の上で作戦に入れたくなるな…どうする?大将」
スズの男前発言で、一気に連れて行く流れに傾く鬼國隊メンバー。
だが最終決定はあくまで大将である等々力。
仲間が視線を送る中、彼は目を閉じて考えを巡らせる。
と、そこへ蛭沼の子供の1人が戻り、主へある報告をもたらした。
「……えっ」
「蛭沼さん?どうかしました?」
「大将の判断材料になるかもしれない情報が入ってきました」
「「「?」」」
「スズさんの生け捕り命令が中止されたそうです」
桃太郎機関全体へ通達されていた命令が取り下げられ、晴れてスズは自由の身となったのだ。
これには鬼國隊メンバーよりも、当の本人の方が驚きが大きかった。
どういう経緯かは不明だが、常に狙われる危険から解放されたことは、スズにとって何よりも嬉しいことだった。
「命令が中止されたってことは、桃に見つかっても手出されへん可能性が高いわけや」
「でも逆に言えば、近づいてくる奴は本気でスズの能力を欲しがってるってことになるんじゃないかな〜」
「量は減ったけど、質は上がった感じか。…大将、決まった?」
不破・乙原・鳥飼の発言を静かに聞いていた等々力は、ようやく目を開ける。
さっきまでの興奮状態が嘘のように、彼は冷静な口調で話し始めた。
「命令の有無は関係ない。響太郎の言うように、どんな状況でも狙って来る奴は一定数いるだろう。
だが戦力的に、俺たちが無傷で終われないことは分かり切っている。だからスズにはぜひ力になってもらいたい」
「はい」
「ただ…スズを無視した作戦の遂行はしない」
「!」
「矢颪と違って、今お前は一時的に鬼國隊がその身を預かっている状態だ。いずれ元の場所へ帰す時、無傷で引き渡すのが道理だと思っている。
スズの信念は素晴らしいと思うし、尊重もしたい。でもスズが傷ついて喜ぶ人間は、もう鬼國隊にすらいない」
「颯さん…」
「もう一度言う。スズのことは俺たち鬼國隊が必ず守る。それが、危険な場所に同行してくれる治療班に対する誠意だ」
「…」
「…嫌か?」
「嫌なんて、そんな…!すごく嬉しいです。でもやっぱり、自分のせいで皆さんが危険な目に遭うのは…」
「そんな不安そうにせんでも大丈夫やって。俺ら結構強いねんで?」
「まだ不破っちの能力見せてないから説得力ないけどね」
「岬く〜ん?」
「でも大丈夫なのは本当。伊達にここまで生き残ってないから」
「不破さん、囲さん…」
他のメンバーがスズに向ける視線も、思想とは逆の穏やかな感情で溢れていた。
桃太郎の根絶を謳う鬼國隊の考え方は受け入れられないが、鬼を守るという強い意志はスズにも通ずるものがある。
こうして出会ったのも何かの縁…
知り合いは多い方がいいと昔から言われ続けていたこともあり、スズは目の前の鬼たちを信じてみることにした。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
笑顔と共に丁寧に頭を下げるスズに、等々力たちもまた表情を和らげた。
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