「それじゃあ突入は深夜!それまで体を休めろ!」

「(突入から戦闘まで、細かい部分の計画詰めとくか…)」

「ルートの確認と諸々の対策を考えよう…」

「蛭沼さん…あんたいてくれなきゃ、今頃俺ストレスでハゲ散らかしてたよ…」

「あの!私もお供させてもらえないでしょうか…!」


場が解散になり、鳥飼と蛭沼が作戦会議を始めようとしたタイミングで声をかけるスズ。

等々力はあのように言ってくれたが、それは作戦の把握をしない理由にはならない。

いつもやっているようにしっかり情報を収集し、自分の身を守る最低限の行動はしたいと2人に訴えた。


「皆さんにかかる負担を少しでも減らしたいんです」

「…スズ、鬼國隊入んない?」

「へ?」

「ふふっ。その気持ち分かります。スズさんと話してると癒されますよね」

「本当に。お供してくれんの大歓迎。おいで」

「ありがとうございます…!」

「何か意見があれば遠慮なく言ってくださいね。あ、でも無理はしないように。疲れてると思うから、眠くなったら寝てください」


それから数時間、スズは2人が考える作戦を聞きながら必死にメモを取る。

規模が大きいだけに作戦や計画も複雑であり、次第に頭がグチャグチャになっていく。

そこへ来て1日の疲れが出てきたスズは、ついに睡魔に負けてしまった。


「ふっ。スズ〜?」

「……ん〜…はっ!失礼しました…!」

「スズさん、寝ましょう。もう大枠は決まりましたから、あとは私たちに任せてください」

「すみません…お二人も早めに休んでくださいね」

「うん、ありがと。おやすみ〜」


そうして2人と別れ、皆が寝ているところに戻って来たが、見渡しても矢颪の姿がない。

短時間の仮眠でスッキリしてしまったのもあり、彼を待ちがてら、スズは改めて作戦内容やメンバーの能力について頭を整理することにした。

月明りの下でノートと向き合い始めて30分ほどが過ぎた時、不意に彼女の背後に2つの人影が…

その人物たちはスズを両側から挟む形で座ると、静かに声をかける。


「まだ起きてたん?」

「ひっ…!」

「あははっ。驚かせたな〜ごめんごめん」

「だから背後からはやめようって言ったじゃん」

「不破さんに、囲さん!もう起きて…あ、もしかして書く音うるさかったですか?」

「ううん、全然。目が覚めた時にスズが何かしてるの見えたから気になって。そんな熱心に何書いてんの?」

「鳥飼さんと蛭沼さんの作戦会議に入れていただいて、その内容をメモしたので整理してました。あと皆さんの能力のことも」

「へ〜すごっ。めっちゃ書いてるやん。でも手元暗ない?」

「それは不破っちが月明り遮ってるからでしょ。どいてどいて」

「どいてって何やねん」

「そのまんまの意味だよ」


自分の頭の上で漫才のようなやり取りをする2人に笑みを見せながら、スズはまたノートに向き合う。

突入までもうあまり時間がない。

早く整理して、少しでも多くの情報を頭に入れておこうと、スズは集中力MAXで手を動かした。


------
----
--


ハッと顔を上げた時、スズの右隣で不破は目を閉じていた。

もしかしたら、何かあった時に守れるようにと、近くに来てくれたのかもしれない。

そんなさりげない優しさに笑みが漏れたスズは、そこでようやく反対側からの視線に気づく。


「あれ、囲さんは寝てなかったんですか?」

「やっと気づいた。ずっと見てたのに」

「ずっと!?な、何でですか…」

「一生懸命書いてる姿が健気だな〜と思って」

「いや、そんないいものじゃないですよ…!ただ心配性なだけです」

「…スズってさ、ほっとけないって言われたことない?」

「い、言われないですよ!そんな胸キュンな…あっ。一度…ある、かも」

「ふ〜ん…その言った人と気が合いそう」

「ん?」

「俺もスズのことほっとけなくなっちゃった」

「えっ…!」

「何か妹みたいで」

「(あ、そういう意味か…!)」

「ふっ。どしたの?もしかして…別の意味だと思った?」

「お、思ってません…!」


暗くても分かるぐらい顔を赤くするスズを、楽しそうに見つめる囲。

そして何を思ったか急に寝転がり、スズの膝に頭を乗せた。


「! あ、あの囲さん…?」

「俺、横にならないと寝れないの。だから膝借りるね」

「えっ、いや、そんな急に…!」

「あとさ…」

「はい…?」

「…俺のこと"岬"でいい。歳近いと思うし本当はタメ口でいいけど、それは無理でしょ?」

「難しい、と思います」

「だったらせめて下の名前で呼んで」

「…"岬お兄ちゃん"でいいですか?」

「何それ、やだよ」

「ふふっ」

「…俺熟女が好きなの」

「また唐突ですね…」

「でも……健気な子も嫌いじゃない、かも」

「!」

「…おやすみ、スズ」

「あ、お、おやすみなさい…岬さん」


向こう側に顔を向けているため表情は分からないが、その耳がほんのり赤く染まっていることにスズは気づかないフリをした。

一番とっつきにくいと感じていた囲との思わぬやり取り。

人間らしい一面を知れてどこか安心したスズは、再び襲って来た睡魔に身を預けることにした。


------
----
--


-side 矢颪-

屋上で等々力と少し話をして下に降りてくると、自分の同期が穏やかに眠っているのを見つけた。

隣には不破がピタッと寄り添って寝てるし、膝には囲が頭を乗せて眠っていた。

自分とは違って、誰とでもすぐに打ち解けられる。

能力が治療に特化し過ぎて、攻撃も防御もできない無防備な鬼。

そんな奴が、自分を追ってこんなところにまでついて来てくれた。

守ってやらなきゃ…って思ってたけど、さっきまでの話し合いを聞いてればそれも不要に思えてくる。

あんだけの力を持った人間が8人もいれば、まず俺の出番はねぇだろ…


あいつらが話す内容は分かんねぇことばっかだった。

何でスズに生け捕り命令が出てんのか。

そもそも何で桃に狙われてんのか。

思えば、スズのこと何も知らねぇ…

そりゃそうか…ロクに会話なんかしてねぇしな。

聞けば、教えてくれんのかな…


「何考えてんだ俺は…」


もう仲間は作らないって決めただろ。

甘い考えを振り払うように、俺はスズから離れた場所に座って目を閉じた。



to be continued...



- 120 -

*前次#


ページ:

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

短編 目次へ

章選択画面へ

home