不破・囲コンビと別れたスズは、乙原との通話をオンにする。

移動の準備が整った旨を伝えれば、すぐに案内が始まった。


『じゃあまずは今いる廊下を真っ直ぐ進んで、2つ目の角を曲がって!』

『了解です!…鳥飼さんの様子はどうですか?』

『さっきよりも酷くなってる。かなりボロボロな状態だと思う…』

『大丈夫です。命さえあれば、私が絶対助けます!』

『うん…!ありがとう!』


スズからの頼もしい言葉に、乙原の表情は和らいだ。





第52話 華厳の滝跡地研究所A





走り始めてから少しして、等々力と鳥飼の会話が聞こえてくる。

どうやら戦いは鳥飼勝利で決着がついたようだった。


『鳥飼!大丈夫か!?』

『おー大将、余裕だよ…隊長は倒した…』

『本当か!お前は無事か!?』

『当たり前だっつーの…けど…しばらく戦えそうにねーな…少し身を隠して休む…』

『そうか…!』

『心配かけたかよ…?』

『…いや!信じていたさ!追えるようになったら来い!』

『了解…』

『響太郎!スズは来れそうか!?』

『今誘導してるとこ!』

『鳥飼さん!すぐ行きますから、安静にしててくださいね…!』

『スズ…ありがとう。待ってる…』


聞こえてきた声があまりに弱々しく、スズは一気に不安に襲われた。

しかしそこは援護部隊のNo.2…すぐに冷静さを取り戻す。

そして乙原の指示に集中しながら、足を速めるのだった。


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第一隊長・桃林慎義の部屋で激闘を繰り広げていた鳥飼。

そこへ到着したスズは、室内の荒れように驚きを隠せない。

部屋のあちこちが破壊されており、床は穴やひび割ればかりで歩きづらかった。

そんな廃墟のようになった部屋の壁に背中を預け、想定以上に酷い状態の鳥飼が座っていた。


「鳥飼さん!!」

「…スズ。わりぃな…途中大丈夫だったか?」

「私は全然…!こんな時ぐらい、ご自身の心配して下さい…!」

「自分の心配は…しなくて、いいだろ…スズがいんだから」

「! 鳥飼さん…大丈夫、任せて下さい!」

「うん、頼りにしてます」

「早速治療始めますけど、どういう体勢が楽ですか?」

「寝てる方が、楽…かな」

「分かりました!床ゴツゴツして痛いと思うので、私の膝に頭乗せて下さい」


そう言うと、スズは鳥飼の体を支えながら横に倒し、彼に膝枕をした。

時折体の一部を押したりしながら、骨折箇所や内臓の損傷具合を診ていくスズ。

その目は、先程までの穏やかな雰囲気とはかけ離れたものだった。


「(すげー真剣な顔…本職って感じだな…)」

「鳥飼さん、ここ痛いですか?」

「いでっ…!痛い痛い…」

「んー…骨折を含めた外傷も酷いですけど、それよりも内臓の方が「スズ」

「はい!どうしました?吐き気とかあります?」

「いや、そうじゃなくて…ちょっとだけ…俺に顔、向けててくんない?」

「へ?」

「スズの顔見てると…安心すんだよね」

「えっ…!」

「膝枕してもらうのも…女の子の顔見てこんなに安心すんのも、初めてでさ…もうちょっと味わいたいな…って」

「こ、光栄なお言葉ですけど…顔をマジマジと見つめられるのは、恥ずかし過ぎます…!大した顔してないですし…」

「そうか?俺には…天使みたいに、見えてっけど…」

「それは、今鳥飼さんが弱ってるからです…!じゃ、じゃあ…顔と頭のケガを先に治しますから、その間に…チラッと見てて下さい」

「(ふっ。チラッとしかダメなんだ…)りょーかい」


それから照れ臭そうに、顔の血を拭ったり、頭の傷を治したりと本職を全うするスズ。

時折目が合いそうになると、反射的にギュッと目を閉じる彼女を、鳥飼は面白そうに眺めていた。


「…よしっ。顔と頭はもう大丈夫ですよ。これから内臓の方治していきますから、鳥飼さんはそのまま休んでて下さいね」

「……なぁ、その"鳥飼さん"ってのやめね?」

「やめる?」

「何か遠い感じがすっから…"羽李"でいい」

「ふふっ。分かりました!羽李さん」

「ん。じゃあ…わりぃけど、ちょっと寝るわ」


鳥飼の言葉にスズが笑みを向ければ、彼はスッと目を閉じて寝息を立てる。

敵地にいるとは思えないような穏やかな寝顔を見せる鳥飼の頭を、スズは優しく撫でるのだった。



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