囲が岼と戦っていた頃、3階では皇后崎が次なる行動を起こしていた。
自身の戦いを終え、同じフロアにある研究室へと向かう。
そこには同期である遊摺部の姿があった。
第56話 華厳の滝跡地研究所�E
互いの無事に安堵し、情報を共有しながら部屋を出る。
と、そのタイミングで通路の向こうからもう1人見知った顔が現れた。
「おーい!お前らぁ!」
「あ!四季君!」
「やっとみつけたぁぁ!」
「後ろぉ!」
「大変なんだよ!一大事だ!」
「今まさにな!何連れて来てんだよバカが!」
皇后崎が怒るのも無理はない。
一ノ瀬が何の考えもなしに、大量の桃太郎を引き連れてきたのだから。
だが彼は言う…そんなことよりももっと大変な状況になっているのだと。
桃太郎をサクッと倒すと、同期3人は静かになった通路で会話を続けた。
「研究所の爆破ってのはマジなのか?」
「マジだっつーの」
「大変じゃないか!」
「そう!だから俺、皆に伝えてくっからよ!」
「走ってか?」
「たりめぇだろ!」
「放送で伝えればいいだろ」
「え…?」
「この大きさの研究所なら放送室くらいあるだろ」
「…あ」
「ふっ…」
「テメェ今バカにしたろぉ…?こっち見ろや、貴様おいコラ…」
「嫌だよ。バカを見るとバカになっちまう」
「そんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「…何にしてもスズの力が必要だな」
そう呟いた皇后崎は、早速彼女から言われた通信手段で連絡を入れる。
放送室の場所にしろ、研究所を探し回るにしろ、地図が頭に入っている人間が今の彼らには必要だった。
自分の知らない手段で、自分の大好きな女子と会話をしている皇后崎を、一ノ瀬は何とも言えない表情で見つめていた。
「スズ?」
『迅!どうしたの?ケガした!?』
「ふっ、してねぇよ。大丈夫だ」
『良かった…!』
「それより今動けるか?お前の力が必要なんだ」
『うん、行けるよ!何階にいる?』
「3階。途中まで迎え行くから、階段まで来たら連絡しろ」
『ありがとう!でも迅の方こそ平気なの?私1人でも行けるよ?』
「俺の方は大丈夫。迎え行くのは…こっちの都合だから」
『え?』
「…早く顔見たい」
『! う、うん…!すぐ行く!』
「待ってる」
優しげな表情でそう言って、会話を終えた皇后崎。
自分の方をジト目で見てくる遊摺部に、"何だよ"と威嚇しながら応戦する。
彼はいつも通りの感じだが、一ノ瀬は少し様子が違っていた。
「俺だって…」
「ん?」
「俺だって…早くスズに会いてぇよ…」
俯き、呟くようにそう言った一ノ瀬。
普段の明るく元気な彼からは程遠い、沈んだ表情を見せるのには理由があった。
2人と合流する前、ここの所長である桃裏楔と画面越しに対面を果たした彼。
幼き少女を玩具のように扱い、最後はいとも簡単にその命を奪う姿に、一ノ瀬の怒りは頂点に達した。
心がどす黒いモノに蝕まれるような感覚が続く中、彼が欲したのは天使の存在だった。
「(スズのこと…ギュってしてぇ…)」
『迅、着いたよ!』
「(四季の様子が変だな…)分かった、すぐ行く!」
ふとした時にボーっとする一ノ瀬を気にしつつ、皇后崎はスズと合流すべく階段へと向かった。
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