無事にスズと合流すると、皇后崎は彼女を連れて元の場所へと戻って来る。

スズが名前を呼びながら駆け寄れば、遊摺部は嬉しそうに返事をし、一ノ瀬は安心したように表情を緩めた。

だが再会を喜ぶのも束の間、すぐに彼女にも情報を共有する。


「…ってわけで、研究所内の地図が頭に入ってるスズの力を借りたい」

「なるほど。まず第一に放送室はあるよ。ここからそんなに遠くない」

「あの〜データがありそうな場所とかって…」

「確実ではないけど、怪しそうなところは何ヵ所かあるから伝えるね!あと四季は…」

「俺は所長ボコりに最上階に行きたい!」

「了解!じゃあ今から簡単な地図を「いや、スズは四季と一緒に行ってくれ」


皇后崎からの突然の提案に、当の本人たちはキョトンとする。

所長をボコるということは、つまり戦うということ…当然ついて行けば危険が伴う。

場所だけ教えたら、スズは安全な場所に避難させるのだと一ノ瀬は思っていた。

スズ自身も、邪魔になることを恐れ同行は控えるつもりだったのだ。


「お前がスズの地図通りに行ける確証はない。途中でいろんなことに意識が向いて迷うのがオチだ」

「んだと!?俺をバカみたいに言ってんじゃねぇぞ、コラ!!」

「…他に何か意図がある?」

「…四季がちょっとおかしい」


ギャーギャーと騒いでいる一ノ瀬を遊摺部に任せ、スズと皇后崎は小声で会話を続けた。

"スズに早く会いたい"と呟いていたこと、目を離すと度々ボーっとしていることなどを、皇后崎は簡単に伝える。

本来であれば、スズと再会した時の彼は抱きつかんばかりに喜びを表すはず。

"それがなかっただろ?"と問いかけて、皇后崎は話を締めくくった。


「確かに…どのぐらい力になれるか分かんないけど、離れないようにする」

「頼む。危ないとこに行かせて悪ぃ。何かあったらすぐ連絡しろよ?」

「うん、ありがと!あちこちケガしてるけど、迅は平気?治すよ?」

「いや、かすり傷ばっかだから問題ない。体は疲れてっけど…お前の顔見たら軽くなった。ありがとな」

「それなら、良かった…!」


照れ臭そうに言葉を発するスズを、皇后崎は穏やかに見つめる。

その後、遊摺部が持っていた乙原の血を男2人に飲ませ、4人は一旦解散するのだった。


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放送室へ向かう皇后崎と情報収集担当の遊摺部を見送ると、場はスズと一ノ瀬だけになった。

何事においても時間がないため、早速動き出そうとするスズを、一ノ瀬は"待って"と引き留める。


「ちょっとだけ時間欲しい」

「あ、うん。どうした?」

「……スズのこと、ギュッてしていい?」

「! う、うん…私で、良ければ…!」


皇后崎から頼まれていたのもあり、不安定な状態にある一ノ瀬の言動は全面的に受け止めるつもりだった。

その最初の1つが思わぬ角度から来たため、スズの心拍数は一気に上がる。

そんな彼女の心中を知らず、一ノ瀬は小さくお礼を言いながら優しく天使を腕の中におさめた。

そして何かを吐き出すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「…皇后崎たちと合流する前、ここの所長とかいう奴と画面越しに会ったんだ」

「そう、だったの…」

「うん…そいつマジで狂ってて、鬼の子供に酷いことしてさ…最後はおもちゃ壊すみたいに簡単に殺したんだよ。

 俺、それ見た瞬間に頭真っ白になって…体中が何か黒いもんで覆われてく感じがしたんだ」

「四季…」

「それが怖くて、早くスズに会って確かめて欲しかった」

「確かめる?」

「…今の俺が、ちゃんといつもの俺かどうか」


言いながら体を離した一ノ瀬は、不安そうな表情で目の前の少女を見つめる。

血の暴走を経験したことがあるからこそ、彼は人一倍心の在り方に敏感だ。

闇に取り込まれて、また仲間を傷つけてしまったら…

彼の抱えてる不安を感じ取ったスズは、優しい笑顔で一ノ瀬の頬を両手で包み込む。


「大丈夫。今私の前にいる四季は、いつも私に元気をくれる、優しくて明るい四季だよ」

「本当…?」

「天使が言うんだから本当に決まってるでしょ!」


スズの自信に満ち溢れたな明るい笑顔を向けられ、一ノ瀬の表情は見る間に穏やかになっていく。

緩む涙腺を隠すように、彼はもう一度スズを抱き締めた。


「スズも…」

「ん?」

「…俺のこと、ギュッてして?」

「あ、う、うん…!」


甘えモード全開の一ノ瀬に、さっきまでの自信満々な雰囲気はどこへやら…スズはまたワタワタしてしまう。

顔の赤さと熱さを自覚しながら、一ノ瀬の背中に手を回し力を込めれば、彼の口からポロっと言葉が漏れた。


「好き…」

「!」

「ありがと!やっぱスズは天使だな!」

「え、あ、うん!ま、まぁね!」


お礼を伝える一ノ瀬の顔は、邪気が取れたような晴れ晴れとした良き笑顔。

だが返事をするスズはそうはいかない。

ただならぬ色気とともに発せられた最初の言葉に、すっかり心臓を持って行かれていた。

本人は言った自覚がないのかあっけらかんとしていて、自分だけがドキドキしているという事実が余計に彼女の心拍数を上げていた。


「なぁ、スズ〜」

「えっ!?な、なに?」

「それ…まだ脱がねぇの?」

「それって…鬼國隊の服のこと?」

「そう。…何か寂しいから、早く脱いで欲しいな〜って」

「今脱いだら、下着姿になっちゃうんだけど…」

「いや、違う!そういう意味で言ったんじゃねぇから!!」

「あははっ!分かってるよ。全部終わったら、ちゃんと脱いでそっちに戻るから安心して?」

「おう!」


お互いほんのり赤い顔で笑顔を向け合うと、いよいよ動き出す2人。

と、走り出してすぐ聞き馴染みのある声がスピーカーから聞こえてくる。


『死にたくなけりゃ全員避難しろ!この研究所はまもなく爆発する!繰り返す!この研究所は爆発…』


だが皇后崎が言い終わる前に、研究所のどこかから爆発音が聞こえてきた。



to be continued...



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