鬼の血液量は、常人に比べて段違いであることが知られている。

だがそれを踏まえても、屏風ヶ浦の小柄な体にこれだけの血液が流れているのは異常だった。

突然の出来事に対応できず、スズ達はただただ目の前の巨人に圧倒されていた。

そんな3人に向かって来ていた巨人は、両手を組んで大きく振りかぶると、その勢いのまま腕を振り下ろすのだった。





第7話 ほっとけねぇだろ





時は少し遡り、スズが一ノ瀬と皇后崎の戦いを見守っていた頃…

無陀野は準備を整え、森の入口前でスクワットをしていた。

その彼の頭に不意にキレイな模様の蝶々が止まる。


「今日は学校説明だけじゃなかったー?」

「校長」

「初日で課題なんてさすがだねー」

「説明で1日消費するより、訓練する方が有意義ですよ」

「優しいね。全部あの子たちのための言葉だ。

 年間多くの鬼が殺されてるけど、ほとんどが子供…血縁に鬼がいるだけで殺される子も多い。生きたまま連れ去り、研究の道具に…て、例も…

 何も知らず、何も分からず、ある日突然殺される子供たちは、最期に何を想って逝けばいいんだろうね。せめて全てにおいて平等な天国があることを願うよ」

「天国なんていりませんよ。強ければ死なない…シンプルな話です」

「やっぱ君は優しいよ。強くしてあげてね。…そういえば秘書の子は?挨拶したいな〜と思ったんだけど」

「スズは先に森の中に入ってます」

「え、1人で平気なの?危なくない?」

「大丈夫です。体術だけなら、あいつらの中で1・2を争うぐらいには鍛えてますから」

「大事にしてるね」

「…俺と一緒にいると危険な場所に連れてくことも多いから、そうしてるだけですよ」

「ふ〜ん…前から言おうと思ってたんだけどさ…無人君って、彼女のこと…」


その時、陰陽師のような衣装を纏った校長の言葉を遮るように、森の中からドオッと大きな音が聞こえてくる。

スッと姿を消す校長の気配を感じながら、無陀野は森の方へ目をやった。

それとほぼ同時に、彼の携帯が音を立てる。


「スズ。今、でかい音が聞こえたが…四季か?」

『いえ、四季じゃなくて帆稀です…!』

「屏風ヶ浦?」

『はい。血触解放したんですけど、帆稀の意志で出した感じじゃないんです』

「暴走してるのか?」

『そう言っていいと思います。本人が制御できてないので…!』

「すぐ行く。お前はとりあえず避難しろ」

『分かりました…!』


電話を切った無陀野は、目にも止まらぬ速さで森の中へと入って行った。



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