スズが傍で待機する中、等々力は自身の力を発動する。
飛行船に向けて発生させた竜巻を操ると、その巨体を無事に森の中へと着陸させた。
普段であれば何てことのない作業だが、今の彼にとってはそうはいかない。
ほんの数分の発動だったにも関わらず、等々力は胸に手をあてながら苦しそうに呼吸をしていた。
「おい!大丈夫か!?」
「絶好調だ!」
「あと一機降ろせば終わりだ!」
「颯さん、行けますか…?」
「あぁ!」
心配そうに顔を覗き込んでくるスズに、そう元気よく言葉を返す等々力だったが、体はその実、言うことを聞いてくれなくて…
"すまん、少しだけ…"と言いながら、体を預けるようにスズの肩に頭を乗せた。
そんな彼の背中をさすりながら、僅かな時間ではあるが自身の血を使って輸血を施すスズ。
と、その時…!
もう1つの飛行船に特大の雷が直撃した。
当然の如くコントロールを失った船は、地上に向けて急降下していく。
「マズイ!堕ちる!おい!何とか落下を防いで下に…」
「やっている…!しかし…今の俺では浮力を失った飛行船を浮かせることは難しい…ゲホッ…」
「それってつまり…堕ちるしかないってことか…?」
「どうすればいい!?指示をくれ!」
「飛行船がもう少し小さかったらいいのに…」
ふらつく等々力を支えるスズの呟きに刺激され、皇后崎の脳内が1つの案をはじき出す。
大きな飛行船を浮かせることは難しい。であれば、小さいものなら可能なのではないか。
「人質の入った檻は浮かせられるか!?」
「!? それならなんとかなるが…それがなんだ!?」
「人質の檻だけ外に落として救出する!」
皇后崎の作戦はこうだ。
対象の飛行船には自分たちと一緒に来た、娘を助けたい父親が乗っている。
その彼に乙原の能力で指示を出し、檻を外に落とさせた後、等々力の力で救助という流れだ。
鳥飼も加わって、皇后崎たちが作戦の準備を整えている間に、スズは再び大将への輸血を行う。
本音を言えば体内の治療を進めたいが、残念なことにそんな時間はない。
新鮮な血を増やし、脳と体を少しでも正常に保てるようにするのが精一杯であった。
「スズ!上に指示が飛んだ!もうすぐ檻が落ちてくる!」
「分かった!」
「スズ…俺はいつでも、行けるぞ…!」
「颯さん…ちゃんと治療ができなくてごめんなさい…」
「何で謝るんだ?スズがいるから、俺は今皆の役に立ててる。ありがとう。もう少しだけ、俺に力をくれ」
「はい…!」
スズの手を借りて立ち上がった等々力は、落ちてくる檻を風で受け止め、安全な場所へと落とす。
2つ、3つ…と檻は順調に回収されていった。
そしていよいよ最後の1人、檻を落とし続けた父親を残すだけとなった。
だがそこへまた巨大な雷が直撃する。
空中に放り出された彼を助ける力は、最早等々力には残っていなかった。
「おい!何とかあいつを…!」
「颯さん!」「大将!」
「(限界だったか…)スズ」
「…うん、これ以上はダメ。援護部隊として許可できない」
意識を失い倒れた等々力を診るなり、スズはそう断言した。
自由落下する男性を成す術なく見つめていた一同の目に、1台のバイクが映る。
その血蝕解放の持ち主を知っているスズは、パッと笑顔の花が咲く。
「あいつ…ずいぶん洒落た登場じゃねぇか…!」
「すごい!ナイスタイミング…!」
崖の上には、バイクに跨り、小脇に男性を抱えた矢颪の姿があった。
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