人質救出がひと段落し、全員がホッと胸を撫で下ろす。
男性と共に矢颪がバイクで到着し、その後すぐにデータ回収のために動いていた遊摺部も合流した。
残すはロケットのような研究施設に乗っている一ノ瀬だけ。
と、そのロケットから突如火の手が上がる。
中にいた桃の隊員たちが次々と脱出する中、その機体は真っ直ぐに研究所へと落下していった。
避難のため無陀野が崖の上に登るための坂を血で造り出すと、動ける者は自分で、動けぬ者は抱えられた状態で上を目指す。
そんな様子を後方で見守っていた無陀野は、1人動こうとしない人物を発見する。
「スズ」
「…」
「スズ!」
「! あ、先生…!」
「(相変わらずすごい集中力だな)一旦ストップだ。避難するぞ」
「…はい」
等々力が倒れてからずっと、彼の治療に専念していたスズ。
この騒がしい環境でも、無陀野に声をかけられるまで周囲の状況に気づかないぐらい、本業中の彼女は凄まじい集中力を見せるのだ。
時間を理由にちゃんとした治療ができず、無理をさせてしまった等々力に対し、申し訳ない気持ちがあったのだろう。
無陀野に声をかけられても尚、手を止めるのを躊躇するほどだった。
百目鬼に背負われ運ばれて行く等々力を、スズは静かに見つめていた。
「私の治療スピードがもっと早ければ良かったんですけど…」
「今自分にできることを全力でやったんだろ?」
「それは、もちろん…!」
「ならいい。それより…顔色が悪いな」
「いろんな人を治療してたから、少し貧血っぽいかもしれないです」
「…俺が運ぼう」
「いえ!大丈夫です…!」
「大丈夫に見えないから言ってる。言うことを聞け」
顔をグッと近づけてそう言う無陀野に、スズは顔が赤くなるのを実感しながら"はい…!"と言葉を返した。
そうと決まればロケットの直撃まで時間がない。
軽々とスズを横抱きにすると、アワアワする彼女に構わず無陀野は猛スピードで坂を駆け上がった。
上に着くと、彼は教え子を木の根元に座らせる。
無陀野の体温に安心したのか、スズは坂の途中で眠りに落ちていたのだ。
「(寝顔を見るのは2回目か。あの時と変わらない、年相応の顔だな)」
今までの緊張感あるものとは違い、どこか幼さの残るその表情。
無陀野は誰にも気づかれないよう優しく頬に触れると、"お疲れ"と小さく声をかけるのだった。
to be continued...
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