木にもたれて穏やかな寝息をたてているスズ。
そこから少し離れた場所に、彼女によって治療を終えた屏風ヶ浦と等々力、そして鳥飼の血蝕解放で運ばれてきた一ノ瀬が寝かされていた。
全員の避難が完了し、無陀野と皇后崎が研究所のデータについて会話をしていると、落下していたロケットがついに地面に激突する。
だが事はそれでは終わらなかった。
ロケットが激突した箇所から地面に亀裂が入り、地鳴りのような轟音と共に水が溢れ出す。
その水は崖を流れ、かつてのような美しい滝が見事に復活したのだった。
第62話 変化と進化
滝復活という大イベントにより、浅いところを漂っていたスズの意識が覚醒する。
しかし目が覚めたのはいいが、極度の貧血のため立ち上がることができない。
それでも何とか体を起こすと、ハイハイ状態で進みながら一ノ瀬の元へと向かった。
血液量の少なさや外傷はもちろんだが、スズが何より気になったのは思い詰めたようなその表情だった。
痛みや苦しさから来ているものではない。心の奥深くから血が流れていることを、スズは本能的に感じ取った。
「(これは治るのに時間がかかるかもな…)」
治療をしながら、スズもまたツラそうな表情を見せる。
いくら援護部隊と言えど、治せない傷もある。これはその類だ。
「(抱え込み過ぎないでね、四季…)」
そっと髪を撫で、スズは同期の手をギュっと握り締めた。
と、そこへようやく現地の医療部隊が到着する。
到着が遅れたことを謝りながら倒れている3人に駆け寄ったものの、その半分以上が治療済であることに驚く。
「えっ、治療…終わってる?」
「あ、この2人は私が…!でももう血が足りなくて…四季のこと、お願いしてもいいですか…?」
「もちろんだよ!ていうか、君も顔色悪すぎ!輸血するからそこに座ってて!」
「はい…すみません」
栃木医療部隊の1人からそう言われ、スズはさっきまで座っていた木のところへと戻る。
背を預けると同時にもう1人の医療部隊員に輸血の処置を施された。
お礼を伝えてから、軽く目を閉じる。
意識はあるものの、まだ頭がボーッとしていて何かを考えることは難しかった。
そうしてまた少し眠っていたスズ。
不意に近くに人の気配を感じ、静かに目を開ければ、そこには見知った顔があった。
「…羽李さん」
「平気?」
「はい!輸血のお陰でだいぶ回復しました」
「良かった。…少し話したいんだけど大丈夫?」
「もちろんです!」
「あー…っと、その前に…ごめんな。そんな状態になってんの、俺らを治療しまくったからだろ?」
「そんな…!これが私の役目ですから!…むしろ謝らなきゃいけないのは私の方です…蛭沼さんのこと。
私がもっと早く到着してたら、救えたかもしれない…鬼國隊は仲間を失わずに「それは違う」
「…」
「蛭沼さんはスズのせいで死んだんじゃない。そんな風に思ってる奴、鬼國隊の中に1人もいない」
「でも、やっぱり…」
「んーじゃあ、スズに1つお願いしていい?」
「お願い?」
「うん。蛭沼さんの死を背負うんじゃなくて…普通に覚えててやってよ!鬼國隊の良心と言われた優しい男がいたって」
「!」
「その方が蛭沼さんも絶対喜ぶ」
「はい…!」
いつもの表情に戻ったスズを見て、鳥飼もまた嬉しそうな顔で優しく彼女の頭を撫でた。
片膝を立ててしゃがんでいた鳥飼は、本題に入るためそのままスズの近くに腰を下ろす。
"大将が目を覚ました"と切り出せば、スズはパッと笑顔を見せた。
「本当ですか!?良かったです!」
「スズのお陰だよ。俺らの大将を守ってくれてありがとな」
「とんでもないです…!」
「で、その大将が鬼國隊を解散したんだよ」
「えっ!?」
「誰かを助けるために力を使う、新しい鬼國隊にするんだと」
「最高じゃないですか!…もちろん、颯さんについて行くんですよね」
「あいつは俺らがいないと危なっかしいからな」
「ふふっ。颯さん、愛されてますね!」
「…だから、もうすぐスズとはお別れだ」
そう言って顔を覗き込んで来る鳥飼は、さっきまでとは違う色気のある表情をしていた。
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