鳥飼が去った後、皇后崎はスズの前に膝をつく。

数秒無言で見つめてから、彼は唐突に目の前の少女に向かってデコピンをお見舞いした。

"痛っ!"と驚きながらおでこを押さえるスズに、皇后崎は不機嫌そうに言葉を漏らす。


「…あんま隙見せんなよ」

「え、な、何のこと?」

「誰彼構わず笑いかけんなってこと」

「それじゃ無愛想じゃない?」

「お前はそんぐらいでちょうどいいんだよ」

「え〜そうかなぁ…」

「(あー…嫉妬とかダサ過ぎだろ)そうだよ。…ほら、帰るぞ。背中乗れ」


そう言って背を向ける皇后崎に最初は遠慮していたスズだったが、実際問題歩くことは難しくて。

小さくお礼と謝罪を伝えながら、彼の背中に体を預けた。

首元に想い人の腕が回されると、さっきまでの不機嫌が嘘のように皇后崎の顔は穏やかになる。

それを隠すため、彼はしばらくスズへ小言を言いながら足を動かすのだった。


------
----
--


3人の生徒を背負った羅刹組と、鬼國隊の面々が改めて向かい合う。

すっかり元気を取り戻した等々力は、この数日間のお礼を真っ直ぐに伝えた。


「本当にありがとう!貴方たちがいなかったら全滅してた!困ったことがあれば言ってくれ!いつでも駆けつける!」

「(颯さん、いい顔してる!)」

「それと…スズ!」

「は、はい!」

「お前は俺たちの命の恩人だ!スズに何かあれば、必ず助けに行く!だから…もう"簡単に死ぬ"なんて言うなよ!」

「! はい、もう二度と言いません!ありがとうございます、颯さん!」

「うん!やっぱりスズは素直で可愛いな!大好きだぞ!」

「えっ!?」

「それじゃあ…また会おう!」


等々力の衝撃的な発言に本人はもちろん、一部の人間は大いにざわめく。

だが火種を作った張本人は、何とも清々しい顔で新たな道へと歩いて行くのだった。



こうして華厳の滝での戦いは幕を閉じた。

残念ながら、全てが一件落着とは…言い難い。

1つの綻びは直ったが…

新たな綻びが生まれる結果となった。

スズですら治せない一ノ瀬に生まれた綻び。

これがこの後、彼を酷く苦しませることになる。


それでも…

奪われた夜は終わり、解放の朝を迎えた。

そうして戦ったからこそ、見れる景色がある。

朝焼けに照らされながら、スズは皇后崎の背中で再び眠りに落ちた。


------
----
--


スズや四季が華厳の滝へ行っている最中…

杉並区の鬼機関は桃太郎機関に攻め込まれ、静かに暮らす鬼を含め死者32人、重軽傷者48人を出し…

杉並区の鬼は桃太郎に壊滅させられた。

次の戦いの火蓋は既に切られていた…



第4章 fin.



- 151 -

*前次#


ページ:

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

短編 目次へ

章選択画面へ

home