朝方、羅刹学園へと戻って来た一行。

全員が心身ともに疲労困憊だった故、生徒たちには2日間の休息が与えられた。

だが華厳の滝から戻った翌日…

同期が皆休んでいる中、スズは花魁坂と共に高円寺の地に立っていた。





第63話 抱える ー前ー





高円寺へ向かう道中で、事の次第を聞いたスズ。

本来は花魁坂のみ向かう予定であったが、負傷者が多数いるため急遽彼女にも声がかかったのだ。


「ごめんね、本当は休みだったのに」

「とんでもないです!私は貧血になってただけなので…!」

「貧血も十分怖い病気なんだから無理しないこと。具合悪くなったらすぐ俺に言って?」

「はい!ありがとうございます!京夜先生がいれば安心です」

「(あー…可愛い)ふふっ。こちらこそ来てくれてありがとう。スズがいてくれて心強いよ」

「頑張ります!」


そう言って笑顔を見せるスズに、花魁坂もまた微笑みかける。

そうして車に揺られること約1時間、2人はようやく目的の場所へと到着した。

車を降りた2人を出迎えたのは、久しぶりに会う偵察部隊の隊長殿であった。


「まっすー!お迎えありがと」

「迷われても面倒だからな」

「真澄さん!」

「おぅ。急な依頼で悪かったな」

「いえ!お役に立てるなら喜んで。…傷は増えてないですよね?」

「増えてねぇよ」

「本当ですか?」

「…実際に見て確かめるか?」


服の裾を捲りながら腹筋を見せようとする淀川に、スズは途端に慌て始める。

"何言ってるんですか!"と顔を赤くする女子を、大人2人は楽しそうに見つめていた。


「バーカ、冗談に決まってんだろ。お前はすぐエロい方にもってくのな」

「ち、違います!誤解です!」

「ほら〜あんまりスズのことからかわないでよね」

「へいへい」

「…まっすー素直じゃないね〜本当は会えて嬉しいくせに」

「うるせぇ」


後ろで1人騒いでいるスズを他所に、同期コンビは小声でそんなやり取りを交わす。

言葉や態度でどれだけ興味なさそうにしていても、淀川の表情は嬉しさを隠し切れていなかった。

元々そういう変化に気づきやすいことに加え、昔からの付き合いもあり、花魁坂は同期の心中が手に取るように分かる。

自身の複雑な胸中を隠すように、彼はいつもの明るい調子で足を進めるのだった。



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