スズと朽森が秘密の時間を終え部屋を出てくると、先輩トリオを中心にこの後の動きを話し合っているところだった。
すぐさま淀川の鋭い視線を感じた朽森は、いつものヘラッとした笑みを返す。
それからそちらにバレないようスズの方へ顔を向けると、人差し指を唇にあてニヤリと笑いかけた。
今さっき言われた"秘密"という言葉が瞬間的に浮かび、彼女は顔に熱が集まるのを感じた。
「侵入者はあらかたやったな」
「なんでここまでこれたのぉ?やっぱ内通者いるクサくない?」
「わからねぇが、まずは拠点を奥に移すぞ」
「スズが途中で治療してたとはいえ、隊員も多数負傷してる。ここが手薄になるな」
「確かにもう少しここには人員が欲しいな…」
「あの!僕、残りますよ!僕の能力なら常に警戒できますし」
「確かに索敵できる人がいるといいね」
「俺も残る」
「じゃあ四季君、皇后崎君、遊摺部君は俺と一緒に動くか」
「あ、私も残ります!治療の手は多い方がいいですよね?」
「気持ちは嬉しいけど…ダメ、だよね?ダノッチ」
「あぁ。お前と京夜は援護部隊の要だ。その2人を同じ場所に配置するのは、よほど安全が確保されている時以外は避ける必要がある」
「今みたいないつ桃が襲ってくるかわかんねぇ場所に2人を残してどっちもやられたら、治療班を失った俺らは全滅する」
「なるほど…リスクを分散するってことですね」
物分かりの良いスズの発言に、先輩トリオは頷きを返す。
続けて今の会話内容をササッとノートに書き留める彼女を、3人は誇らしそうに見つめるのだった。
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一ノ瀬と皇后崎が何やら内密な話をしている一方で、スズは花魁坂の元へと歩み寄る。
討伐チームの一員として出発する前に、1つ相談事があったのだ。
「京夜先生、今少しいいですか?」
「もちろん!どうしたの?」
「私今回、少し治療道具を持って行こうかと思って…」
「包帯とか消毒液とかってこと?」
「はい!華厳の滝の時、途中で貧血になっちゃったから…軽いケガの治療は血を使わないようにしようかと」
「そっか。その方がいざって時に思いっきり血を使えるもんね」
「そうなんです!それで持って行く道具のアドバイスをいただけたらなと思って」
「俺で良ければいくらでも協力するよ!」
「ありがとうございます!」
事前に用意していた小さめのリュックに、2人は意見を交わしながら治療道具を詰めていく。
20分も経つ頃には、必要最低限の道具がキレイに収められたリュックが完成した。
それをスズが背負うのに手を貸しながら、花魁坂は先程の一件について言葉を投げかける。
「…さっきはありがとね。残るって言ってくれて嬉しかった」
「いえ、そんな…!考えが甘かったです」
「そんなことない。俺を心配してくれたからでしょ?スズのそういう優しいところ好きだよ」
「! あ、ありがとうございます!」
「ふふっ。でもダノッチとまっすーが言ってることは正しい。俺らが揃っていなくなったら…」
「救えるはずだった鬼の人たちを救えなくなります」
「うん。だからお互い、自分のこと大切にしようね」
「はい!」
「…絶対無事で帰ってきて」
「もちろんです!京夜先生も、しんどくなったらすぐ連絡ください。どこにいても飛んできますから!」
「ありがとう。その言葉だけでめちゃくちゃ頑張れる」
そう言って頭を撫でれば、スズは嬉しそうに目を細める。
そのまま朽森のように抱き締められないのは、花魁坂の真面目な性格故…
それが彼の良いところであり、頑固すぎる一面でもある。
さぁ、いよいよ3チームに分かれての行動開始だ。
to be continued...
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