派手に暴れている大人組と、鬼の治療をしながら桃に説教をしているスズ。

6人がバタバタと動き回っていると、突然無陀野のもとへ連絡がくる。

耳に仕込んだ通信機器を操作すれば、地下にいるはずの教え子からであった。


「どうした皇后崎」

『すまん、今大丈夫か?』

「問題ない、どうした」


背後から迫る桃を一刀両断してから、無陀野は落ち着いた声音で言葉を返す。

直後皇后崎から報告された内容は、捜していた内通者に関してだった。





第71話 高円寺奪還作戦@





『内通者は遊摺部だ。しかも四季を狙ってる』

「(えっ!?遊摺部君が…)」

「100%か?」

『…正直わからねぇ。怪しいのに命懸けで四季を助けたり…でも何か隠してることは間違いない…

 遊摺部が内通者の確率は100%じゃなく95%位だ…100%の確証がなくてわりぃが…』

「…いや、その5%はお前の優しさだ。対策を考える。警戒はしておけ」


会話は各自の耳に装着した通信機器にも流れ、治療中だったスズは聞こえてきた内容に思わず手が止まる。

内通者がまさかの同期であること、そして同じく同期である一ノ瀬を狙っていること…

ショッキングな情報の連続で、スズの脳内はパンク寸前だ。

と、そんな彼女の頭に不意に乗せられる優しい手。

知っている感触に顔を上げれば、そこには思った通りの人物が立っていた。


「無陀野さん〜地下には俺行きますわ〜話は聞いてました」

「行けるか?紫苑」

「ここより楽そうだし〜とか言って〜ははは」


無陀野にそう告げると、早速朽森は建物を出て行く。

もちろんその前にスズへ声をかけるのは忘れずに。

視線を合わせるようにしゃがんだ朽森は、沈んだ表情の彼女の左頬を優しくつまむ。


「ほっぺ柔らかいね」

「紫苑しぇんぱい…」

「もう〜そんな可愛く名前呼ばれたらお持ち帰りしたくなっちゃう」

「…まだ、上手く頭が整理できなくて…どうしたら…」

「そういう時は無理に考える必要ねぇよ」

「えっ」

「俺もいつもそうだもん。考えなきゃいけない時が来たら、そん時考える。

 今スズはさ、鬼の治療に桃への説教に忙しいだろ?だから今はそっちに集中。あれもこれも考えなくていい。

 状況が落ち着けば、スズならちゃんと整理できっから大丈夫。1人じゃ大変だったらいつでも俺のこと呼びな?すぐ駆けつけてギュッてしてあげる」

「ありがとうございます…!やっぱり先輩は優しいです」

「そりゃあね〜…落としたい女の子相手だから」

「!」

「ふっ。じゃ、ちょっと行ってくんね〜」


ほんのり頬を染めて見上げてくるスズに笑いかけてから、朽森は出発した。


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それから30分ほど経ち、スズたちが相変わらず忙しく動き回っていると、また不意に耳の通信機器が音を立てる。

今度の相手は、先程外へと出て行った朽森だった。


『あ、京夜先輩。いまどんな感じっすか?』

『丁度皆に連絡する所だったよ。皆に緊急で報告がある。遊摺部君が鬼の住民情報を盗んだうえに…四季君を連れ去った』

「そんな…!」


スズが絶句するのも無理はない。

これで"遊摺部内通者説"が裏付けられただけでなく、一ノ瀬が危険な状況になってしまった。

同期2人を一度に失いかねない事態に、朽森のお陰で戻った彼女の表情がまた暗くなる。

しかし今度はしっかりと自分で立て直せるのがスズの良いところだ。


「(さっき紫苑先輩が言ってた…あれもこれも考えなくていい。その時が来たら皆で考えればいいんだから。今はまず目の前の人たちを治すことに集中…!)」


一旦入って来た情報を頭の片隅に置き、スズは自分を待っている隊員たちの元へ駆け寄った。

彼らからの感謝の言葉と笑顔に励まされ、徐々に気持ちが落ち着いてくるのが分かる。

そしてやることをすべて終え辺りを見渡せば、夜空が見えるほどに建物は破壊され、桃太郎は1人残らず倒されていた。

フロアの中心にはそれをやってのけた4人の姿。

その中の1人である猫咲がスズの視線に気づき、微笑みながら彼女に手招きする。


「スズ、全部終わったからこっちおいで?」

「あ、はい!」

「ケガしてねぇか!?」

「大丈夫です!」

「よく頑張ったな。スズのお陰でこちらの被害はほぼない」

「戦力も減らずに済んだ!ありがとな!」

「いえ…!良かったです!」

「スズの体術、見事だった!鍛えられてきた成果が出て素晴らしい!ガハッ」

「ありがとうございます…!」

「説教してんのは初めて見たけどね」

「あ、あれは相手が悪いです!」

「ふっ。…まっカッコ良かったんじゃない?」


そう言って笑みを見せた猫咲は、頑張り屋な後輩の頭を優しく撫でるのだった。



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