救護所には一般人・隊員を問わず、多くの鬼たちが倒れていた。

少し心得のある隊員たちが応急処置をしていたが、増え続けるケガ人にそれも限界が近い。

故にスズの到着は、彼らに大きな安心感を与えた。


「(すごい数…こりゃ気合い入れないと!)」

「あ、援護部隊の方ですか!?」

「はい!木下と言います。状況教えてください!」


隊員たちから重症度別の人数やそれぞれのケガの具合などを聞き出すスズ。

設置してあったホワイトボードに書いて頭を整理しながら、動ける隊員たちにテキパキと指示を出していった。

学生ではあるが経験豊富なスズが陣頭指揮を取ることで、場は少しずつ冷静さを取り戻していく。


「よし…一旦この流れで進めましょう」

「「「はい!」」」

「何かあれば随時言ってくださいね!」

「あぁ!助かるよ、本当にありがとう」

「任せてください!絶対に誰も死なせません」


その力強い言葉とは裏腹に、スズの笑顔はとても穏やかで優しいものだった。

隊員たちも、ケガをした鬼たちも、誰もがその存在に救われた。


1時間が経つ頃には重症患者の治療も終わり、スズは最終チェックとして救護所全体を見て回る。

無陀野や百鬼との約束通り休憩もしっかり取っていたため、彼女自身もすこぶる元気だ。

こうしてスズは、1人の死者も出すことなく救護所での任務を全うした。

と、出て行こうとする彼女の耳に隊員たちの会話が飛び込んでくる。


「そういや、さっき怪しい雰囲気の桃がいてよ」

「怪しい雰囲気?」

「んー何か目がいっちゃってるっていうか…薬物中毒みたいな?」

「そんな奴らがこっち来たらヤバいじゃん」

「いや、こっちには来ないと思う。大通りの方に向かってるっぽかったから」

「! あ、あの!その大通りって、桃太郎の本部の近くですか?」

「そうそう!そっちの方」


隊員の言葉を聞いたスズは、猛スピードで救護所を出て行った。

だってそっちには…猫咲と印南がいる。


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10分ほど走っただろうか…

スズはさっき5人で歩いていたあの大通りまで戻って来た。

戦いの邪魔にならないよう影から静かに通りへ目を向ければ、印南と月詠の姿が見えた。

先輩が血だらけでボロボロになっているのは心配だが、例の怪しい桃太郎の姿は見えないことにホッと息を吐く。

しかし安心したのも束の間、不意に印南の背後に1人の桃太郎が現れる。

何事か呟いたその桃は次の瞬間、印南を巻き込んで爆発した。

同時に近くのビルでも同じような爆発が起こり、人影らしきものが落下しているのが見える。

目の前で起こった出来事が信じられず、スズはしばし呆然とその光景を眺めていた。

ドザッという嫌な音で意識を戻すと、あらゆるリスクをものともせず印南の元へと駆け寄った。


「幽先輩!!」

「うっ…」

「スズ……にげ、ろ…」

「波久礼先輩!?」


不意に名前を呼ばれ振り返れば、すぐ傍に猫咲が倒れていた。

位置関係から察するに、ビルから落ちてきたのは間違いなく彼だ。

戦闘のダメージに加え、爆発による衝撃で2人とも瀕死状態…スズはすぐさま治療を開始した。

その姿を報告されているとも知らずに…


「木下スズ…捕捉」



to be continued...



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